私たちの提案(2023)

第3章 実現めざし全力をつくします―日本共産党の重点政策

7、災害に強く、環境にやさしい、公害のない川崎を

東日本大震災後も熊本県地震、鳥取県地震、大阪西部地震、北海道胆振東部地震と大規模な地震が続き、台風被害、豪雨災害による多大な被害が起きています。防災対策をしっかり行なうことは急務です。熊本市における地震災害の避難者は当初の5万8千人という想定を大きく上回り、正規の避難所(171ヵ所)への避難者だけで11万人にのぼりました。多くの方が公民館などの市の施設や、車中泊や庭先、公園や広場などにテントを張るような避難生活を送る状況となりました。川崎市の地震被害想定では避難者数を36万人と想定していますが、避難所は、人口152万人に対して175ヵ所しかなく、圧倒的に足りません。

避難所生活の改善は人権問題

避難所となる小中学校の体育館の面積は約15万5千㎡、「3・3㎡に2人」という国の最低の水準を当てはめて収容可能人数を試算したとしても約9万人、想定する避難者の4分の1しか見込めません。市が想定する避難者数に見合う避難場所の確保を急ぐべきですが、学校体育館の増設には限界があります。各区のスポーツセンターなど市の公共施設を避難所に指定すること、企業の体育館など民間施設と協定を結んだり、私立学校の体育館や災害救助活動拠点の県立高校の施設の一部を地域の活動避難所とするなど、あらゆる知恵と方策を尽くし、被害想定人数に見合う避難場所を確保する具体的対策をすすめるべきです。避難所生活の改善は人権問題としてとらえるべきです。国際赤十字の「人道憲章と人道対応に関する最低基準」.「スフィア基準」を満たす、人権を守れる避難所になるよう国の基準を明確にし、それをもとに川崎市も避難所の箇所数を増やすことを始め、抜本的な改善を求めます。

水害時には垂直避難を行える「水害時避難ビル」の協定を民間ビルなどと結ぶべきです。避難所の確保とともに、避難者数を減らす対策を正面から講じることが欠かせません。そのための最大の取り組みが、大地震でも倒壊しないよう住宅の耐震化をすすめることです。阪神・淡路大震災でも犠牲者の約8割が建物と家屋の倒壊による圧死だといわれました。建物倒壊・被害を減らすための住宅の耐震化をあらゆる手段を駆して最優先で推進すべきです。

住宅耐震工事への補助増額を

2016年3月に策定された川崎市耐震改修促進計画では、2015年度末時点で「耐震不足」とされた木造住宅は、戸建てが3万5千戸、共同住宅等が1万6400戸の合計5万1400戸。これを2020年度末までに1万6500戸耐震化し、耐震化率95%にする目標です。戸建ての耐震化の目標は8900戸です。しかし、2017年度の耐震化実績はわずか60件。2016年度から助成限度額を一般世帯で200万円から100万円に、非課税世帯では300万円から150万円と半分に引き下げ、補助率もそれぞれ3分の2、4分の3と自己負担が大きいことが原因です。補助「率」でなく「額」の助成にし、助成額拡充が必要です。また、2016年度から、耐震シェルター・防災ベッド設置費助成が実現したのは一歩前進ですが、さらなる制度拡充が必要です。熊本地震では2000年以降の基準の建物も倒壊していることから、対象の拡充が必要です。

学校など公共施設の耐震化は100%行われていますが、上下水道施設の耐震化が100%ではありません。下水道は、川崎駅以北の下水管が全く耐震化されておらず、震災時のトイレの使用に大きな支障をきたします。市内の水道施設の耐震化は進んできていますが、そもそも水源から水が来ない可能性が高く、水源の確保が課題です。生田浄水場の復活は水道水の確保のために、最も重要な震災対策です。水害がおこらないよう河川の整備もすすめるべきです。

臨海部の埋め立て地の石油コンビナートは老朽化しており、巨大地震や高潮の際には市民のみならず国民の生命を大きく脅かす存在になる可能性があります。コンビナートの監督官庁は県になるため、市の裁量が小さいといわれていますが、管轄がどこであれ防災対策を直ちに行わなければなりません。

羽田空港新飛行ルート案は、最も事故が起こりやすい離陸直後に石油コンビナート上空を飛行するものであり、落下物などの事故が起これば大災害につながる恐れがあります。1970年、市民の強い願いを背景につくられた「コンビナート上空飛行を制限する」との国の通知に反するものであり、国に対し、撤回を求めます。

脱原発、再生可能エネルギーへの転換を

2011年3月11日の東日本大震災は、福島第一原発事故による放射能被害を伴う大災害となりました。わが国史上最悪の福島第一原発の事故は、いまだ収束しているとはいえません。

原発はひとたび重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されると、それを抑える技術は存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、将来にわたって危害を及ぼします。原発周辺の10万人以上の方が避難を余儀なくされ、農水産物にばく大な被害をもたらしたように、人間社会、地域社会を破壊します。日本共産党は、現在の原発の技術は未完成で危険なものだとして建設には一貫して反対してきましたが、いまこそ、原発から撤退し、再生可能な自然エネルギーへの転換をはかるべきです。

2018年9月6日の北海道胆振東部地震では全道が停電するブラックアウトが起きました。北海道大停電が示した重大な教訓は、電力の安定供給のためには、大規模集中発電から、分散型への転換が必要だということです、原発は、「電力の安定供給」という点でも失格だということも明らかになりました。

全国各地の自治体で計画的に再生エネルギーを飛躍的に導入する取り組みが始まっています。川崎市でも、担当部署を設置し、臨海部や市内に存在する未利用エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、地中熱、工場の排熱など)を種類別に可採量について調査を行ない、期限と目標値を決め、川崎市のエネルギー政策を再生エネルギー政策へと抜本的に転換すべきです。

大企業の事業所ごとのCO2削減目標を明確に

地球温暖化対策はいま世界が緊急に取り組むべき課題です。東京都では2010年度から事業者に未達成の場合の罰則も含めたCO2削減を義務づけています。産業部門からのCO2排出量が8割を占める川崎市においては、現行条例でも事業者にCO2排出量の公表を求めることは可能ですが、市は「企業活動は国際社会に大きく貢献し」、「市内に限定することなく地球全体での削減が重要」と、企業に削減を求めず、擁護する態度に終始しています。東京都のように事業者にCO2排出量の公表を求め、未達成の場合の罰則も規定した削減も義務付けるものにすべきです。

太陽光発電への補助増額を

原発依存をやめ、安全で再生可能な自然エネルギー中心の社会への転換を目指す取り組みの1つとして太陽光発電の普及を大幅に増やすことが求められます。

市は2011年度、太陽光発電の補助件数を900件から1500件へと拡充しました。ところが、件数拡大と引き換えに補助金額1kwあたり3万5千円を2万5千円に、また、県の補助金と合わせ、上限を24万円から13万9千円に引き下げてしまいました。

2013年度は補助件数も1500件から1300件へと引き下げ、上限13万9000円を8万7000円に引き下げました。さらに2014年度は補助件数を1300件から1000件に引き下げてしまいました。東京都では、多くの区が独自で1kwあたり10万円、新宿区では10万円、上限30万円補助をしています。

さらに、補助制度の見直しで、2016年度から太陽光パネル単体では補助制度が使えなくなり、HEMS(家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム)設置が必須補助条件となりました。HEMS設置には約10万円かかり、配線工事費用もかかりますが、補助はあり

ません。住宅用太陽光発電設置の初期費用は高額ではあっても、補助金と電力買取制度を併せれば、耐用年数10年間の間に何とか減価償却できることから設置件数が伸びていたものです。地球温暖化対策として再生可能エネルギーの活用は重要です。北海道胆振東部地方を襲った、大地震による全域停電では、家庭などに普及した、太陽光発電が非常用電源として大いに役立ったとのことです。設置補助率を大幅に引き上げ、設置件数を増やすべきです。

公害対策の抜本的な取り組みを

大気汚染の状況は、工場から自動車排ガスへと広がり深刻な状況がつづき、その結果、ぜん息に苦しむ市民が増えつづけています。公害患者や家族の方たちのねばり強い運動により、全市全年齢を対象とするぜん息患者の医療費助成事業が07年1月から実施されましたが、医療費の一部負担が導入されました。自己負担1割の撤廃、対象疾病の拡大など大気汚染公害裁判の到達点に立った改善をはかることが必要です。

《お約束》

  • 災害に強いまちづくりをすすめます。
  • 木造耐震補強工事に対する助成制度の対象を新耐震基準に広げ、上限額の拡充など使いやすい制度に改善します。
  • 被害想定人数に見合う避難場所を確保する具体的対策をすすめます。
  • 延焼の危険性が高い住宅密集地域の世帯へ感震ブレーカーを無償で配布します。
  • 防災無線の戸別受信機を安価で全戸に配布します。
  • 危険地帯といえる臨海部コンビナートの震災・防災対策の拡充・強化は市民・労働者の命を守る重要な課題です。市民・労働者と企業、川崎市、神奈川県が連携し、コンビナートの防災対策の総点検を行い、防災対策の拡充・強化を図ります。
  • 国に対し、羽田飛行ルート案の撤回を求めます。
  • 国基準を135名も下回っている(2018年4月1日)消防職員数を防災上の観点からも緊急に増員します。
  • 市民のライフラインを確保するため、水道事業におけるバックアップ機能を強化し、即応性の高い地下水を供給できる生田浄水場を存続するよう求めます。
  • 市内の地産地消のエネルギーの活用で原発即時ゼロの川崎を作ります。
  • 大企業の事業所ごとのCO?削減目標を明確にし、地域環境問題や公害問題、自然環境の保全・回復に積極的に取り組みます。
  • 地球温暖化対策として、東京都のように事業者にCO2排出量の公表を求め、未達成の場合の罰則も規定した、削減も義務付ける条例改正をおこないます。
  • 公共施設等への太陽光発電の設置計画を抜本的に引き上げ、自然エネルギーへの転換を目標値をもって取り組みます。
  • 「緑の基本計画」で決めた緑の総量30%の目標達成の重要な要素である、市内に残る斜面緑地を買い取り、借上げ、保全協定などあらゆる手法を駆使して、緑の大幅な保全に努めます。
  • 農地を保全するため、生産奨励金の増額、学校給食への地元農産物の利用など販路の拡大などの施策をおこないます。買い取り申し出のあった生産緑地は市が買い上げ、市民農園として活用します。相続税軽減の法整備を国に要求します。
  • 「川崎市成人ぜん息患者医療費助成条例」は患者1割負担をなくし、大気汚染被害者の救済制度と位置づけ、改善・充実をはかります。
  • 気管支ぜん息、慢性気管支炎、肺気腫に苦しみ、未だに救済を受けていない患者のために大気汚染医療費助成制度を創設するよう、国に働きかけます。
  • 普通ごみの収集回数を週3回にもどします。家庭ごみの無料収集を堅持します。