調査・研究 • 資料室

2016年12月5日

川崎市の低炭素都市づくりに関わる調査研究


2016年9月

岩見良太郎(埼玉大学名誉教授、都市工学)

概要版

(全16ページ)

川崎市の低炭素都市づくり定稿_岩見 

 

定稿

(本文86ページ、表紙目次等4ページ)

川崎市の低炭素都市づくり定稿_岩見

 

本書の「はじめに」から

本報告書は 2015年 10 月に日本共産党川崎市会議員団より委託を受けた研究の成果をとりまとめたものである。

本調査研究は、川崎市「低炭素都市づくり・都市の成長への誘導ガイドライン」(以下、「誘導ガイドライン」と略記する)が、都市環境の形成にいかなる影響をもたらすかを、武蔵小杉駅周辺再開発の実態に即しながら、調査研究することを目的とする。

 本報告書は5つの章から構成されている。

「第1章 低炭素都市づくりの政策とその論理―――容積率緩和に焦点をあてて」では、「誘導ガイドライン」の検討に先立って、そのベースとなっている、国の低炭素都市づくりの政策と論理の簡単な跡づけをおこなった。その際、低炭素都市づくり促進の重要なテコとして活用されている、容積率緩和策に注目し、それが、なぜ低炭素化都市づくりにつながるのか、政府説明の論理を抽出、紹介した。

「第2章 川崎市における低炭素都市づくりと『誘導ガイドライン』」」では、川崎市における、これまでの低炭素都市づくりの取り組みを概観するとともに、「誘導ガイドライン」のしくみと制度上の問題点を明らかにした。

問題点の中心は、環境配慮の評価によって認められる容積率割増は、環境配慮への取り組みによってもたらされるCO2削減効果をはるかに凌駕するCO2の増大を引き起こすという点である。同時に、「誘導ガイドライン」が暗黙に前提している、容積率の緩和 ⇒ 都市のコンパクト化 ⇒ 低炭素化都市 という図式は、川崎市、中原区において成立しうるのかという問題提起をおこない、次章以降の分析につなげた。

「第3章 川崎市における都市のコンパクト化と低炭素化の実態」では、人口ならびに建設関係の統計データを分析することにより、川崎市における、都市のコンパクト化がどのように進行しているかを明らかにするとともに、中原区を例に、都市のコンパクト化によって、どれくらいの低炭素化効果がもたらされているかを、簡単な試算によって明らかにした。

その際、武蔵小杉周辺地区における再開発、そして容積率規制緩和がCO2排出量の増加にどれだけ「貢献」したかについても明らかにした。

「第4章 システム・ダイナミックスによる今後のCO2排出量分析」では、中原区を対象に、システム・ダイナミックスによって、シミュレーションをおこない、今後、人口減少、高齢化が一段とすすむ環境の下で、武蔵小杉周辺地区における再開発が、従来の趨勢を維持しながら進行した場合、住宅建設と人口はどのように推移し、また、その結果、CO2排出量はどのように変化するかを予測、分析した。

最後に、「第5章 『誘導ガイドライン』の総括的評価と提言」では、川崎市の「誘導ガイドライン」の総括的評価をおこなうとともに、「もう一つの低炭素都市づくり」に向けての提言をおこなった。