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2020年11月19日

「2019年台風19号による川崎市の浸水被害の原因及び風水害時の住民避難のあり方に関する調査報告」学習講演会


11月15日(日)、日本共産党川崎市議会議員団は、「2019年台風19号による川崎市の浸水被害の原因及び風水害時の住民避難のあり方に関する調査報告」と題して、報告講演会を開催しました。

昨年の台風19号では、市内各所で浸水被害が発生しました。この被害の原因、今後に生かすべき教訓、住民の避難についてのあるべき方策など、市議団で防災まちづくり研究家・中村八郎氏に調査研究依頼していた報告書が完成し、その報告学習会として開催されたものです。

報告内容の概要は以下です(中村八郎氏のレジュメより)。DSC_0904

1.雨水排水樋管に関する調査

(1)雨水排水樋管については5地区(山王排水樋管、宮内排水樋管、諏訪排水樋管、二子排水樋管、宇奈根排水樋管)で浸水害が発生した。

(2)山王排水樋管について

山王排水樋管地区では、浸水被害の発生と共に、唯一、ゲートの閉鎖操作が実施されたが、有効な操作ができなかった(これは大問題)ので、ゲート操作と浸水害の発生要因について検討した。

(3)山王地区の浸水害は、ゲートの適切な閉鎖が行われなかったことによって(河川水の)逆流が生じ、被害が甚大となった。また、ゲート閉鎖が出来なかった要因は、上昇した河川水による門扉への水圧が原因と考えられる。

(4)その他4つの排水樋管について

山王排水樋管以外の4排水樋管地区の浸水害は、何れも多摩川水が樋管を逆流することによって発生し、被害を甚大にした。これらの樋管水門は何れも閉鎖操作さえも行われなかった。

2.河川等に関する調査

(1)河港水門について

港町周辺地区の浸水は、河港水門上部(ゲートの天端)からの越水、及び隣接する味の素工場の取水施設からの侵入水によるもので、いずれも外水(多摩川水)が原因となった被害である。なお、偶然にも洪水時間帯が干潮時であった。

(2)平瀬川の多摩川合流部地区について

平瀬川合流部(左岸・右岸)の浸水は、平瀬川の流水が、多摩川の水位上昇によって円滑に流出できずに滞水し(背水現象)、加えて多摩川水の逆流(東久地橋桁下からの浸水)もあって、発生させたものである。

(3)三沢川の多摩川合流部地区について

三沢川水門の操作概要が(検証委員会の資料からは)16:43~、および18:30以降の詳細が不明であり、多摩川水の逆流状況ははっきりしない。しかし、三沢川の水位上昇状況から、三沢川への内水(大丸用水系の堀)からの流入が継続的にあったと考えられる。浸水害の要因は、三沢川への大丸用水系堀からの溢水、及び滞水した三沢川水が排水口から逆流したものと考えられる。

3.住民の避難に関する避難行動・避難所について

(1)市の避難対策の考え方

市の避難対策は、指定避難所への住民避難を最優先、安心・安全な場所として提供する考え方(行政責任)が見られず、全体的に住民の「自助・共助」が強い。

(2)市の避難勧告等

避難勧告等の避難情報の発令は住民(避難者)の立場、心情を考慮していない。

(3)住民の避難

住民避難については「避難行動要支援者」対策が大きな課題、しかし、住民任せでは不可能な課題である。

(4)避難所環境

市の指定避難所は場所の適否、環境、支援体制など多くの問題を抱えている(全国的な傾向である)。

(5)避難所の生活環境整備

今後の避難所環境整備は、長期避難を前提に『スヒィア基準』を目標に置き、事前に生活環境、支援体制を整備する必要がある。ここでは「救助・救援は被災者の権利である」との人権思想と行政の人道主義が前提になる。

(6)避難所と感染症対策

新型コロナを含む感染症対策は、受入れ段階の対応が重要、その上で、保険環境、衛生環境、医療環境の3分野の専門的助言・支援体制が必要である。

最後に中村氏は、今後の国交省の河川計画を規定する重要なものとする答申について紹介し、国も河川計画の転換を求めている。気候変動(温暖化)による影響を考慮に入れた総合的な流域治水計画が不可欠な状況になっているとし、川崎市の大きな課題にもなっていると話されました。