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2021年7月16日

高齢者施設での新型コロナウイルス感染防止に関する要望書を提出しました。


image   日本共産党川崎市議団は7月8日、「高齢者施設での新型コロナウイルス感染防止に関する要望書」を市長に提出しました。5月末に幸区の高齢者施設で起きた集団感染への対応の問題点などを指摘し、高齢者施設でコロナ陽性者が発生した場合には原則入院との対応を行うことなどを求めたものです。

   板橋危機管理室長が応対して要望書を受け取りました。宗田裕之団長は要望書の内容を説明し「県の担当者にも確認をとり、当該の施設長さんとも話をすることができた。施設に責任はなく、市の責任だ。昨日の新規陽性者の状況からも第5波の感染拡大は明らかであり、同じことが起こりかねないので対応を急いでほしい」と強く求めました。大庭、渡辺、片柳副団長も同席し、それぞれ発言しました。また、医療機関などから新型コロナワクチンの供給が滞るのではないのか、と心配の声が出されていることも伝え、適切な対応と市民と医療機関への情報提供を求めました。

板橋室長は「代表質問で答弁した内容なのでこの場でのやりとりは控えさせて頂きます。要望の内容については関係局に伝えます。また事実関係についても確認したい」と述べました。

また要望書提出後に記者会見を行いました。clip_image001[1]

要望書は以下の通りです。


川崎市長 福田紀彦様

高齢者施設での新型コロナウイルス感染防止に関する要望書

●経過

市は福祉施設に対して、1月に陽性者が出ても入院措置せず、入院調整、119番通報を制限する通知を出しました。わが党は3月議会で、この通知は施設内にクラスターを広げ、高齢者の命を危険にさらす「命の選別」だと追及してきました。第4波では、川崎市と同様の措置を取った大阪や神戸で高齢者施設でのクラスターが発生し多数の方が亡くなった事例が多発。それでも市は、この通知を撤回しませんでした。そして、5月末に幸区の高齢者施設で、49人の方が感染し、14人の方が亡くなるという重大事態が起こりました。23人の方が入院措置されず、8人の方が施設内でなくなりました。この事例について看過できない4つの重大な問題点があります。

●重大な問題点

第1は、病床がひっ迫していないのに入院措置せず、陽性者は入院という原則が破られたということです。

県の「高齢者福祉施設における対応の手引き」では、「陽性が確認された場合、原則は入院」と書かれており「県内病床が逼迫状況」の時に「当該施設での療養をお願いする場合がある」と述べています。陽性が確認された時点で入院が原則です。この当時、県内病床はひっ迫していないのに、市は23人の方を施設内療養として入院措置されず、重症化しても入院措置されずに亡くなった方が8人も出たのです。これは大阪や神戸の事例とも違い、県の指針にも違反しており、さらに陽性者を施設内療養させたために、施設内での感染を広げ、その他多くの高齢者の命を危険にさらしたのです。これは重大な過失です。

第2に、家族の「延命措置希望の不明な方は入院困難」とする通知を出したことです。

市は家族に対して「症状が悪化した際の入院希望」をとり「入院が必要かつ希望される方を全員入院させた」として家族の判断で入院判断したことを認めました。結果、入院希望した方しか入院措置しなかったのです。しかし、県の担当者に入院判断について聞いたところ「病床の状況を見て、あくまでも保健所の判断で振り分ける。ご家族の判断にゆだねることはない」とのことでした。また、県は「急変時の医療やケアを希望しなかった方に対して、入院措置しないということはあるのか」との質問に対し、県の担当者は「ない。急変時と陽性者になった時の入院可否判断とは別物」という回答でした。

なぜ、市は県の手引きと違う対応を取ったのか、その原因は、4月28日、市の健康医療政策室が出した通知にあります。通知には「陽性判明時点で集中治療・人工呼吸器装置希望(DNAR 延命措置)の有無を確認すること。不明の場合、適切な医療機関の選定や入院調整が困難」と書いてあります。これを見て施設は「延命措置を希望しない方は入院措置されないと判断し、市と相談して延命希望されない方は施設内で療養することにした」と述べています。このように「陽性者は入院」という原則と「延命措置の有無は入院可否判断とは別」という県の指針にも従わず、さらに家族の「延命措置希望の不明な方は入院困難」とする通知を出した市の責任は重大です。

第3に、入院すれば助かったかもしれない方を検査・治療設備のほとんどない施設で留め置かれたということです。

この高齢者施設には、感染者の症状を診るレントゲンやCTなど検査設備はありませんし、医療が必要な時に治療を行う装置も、酸素吸入器くらいしかありません。市が入院措置を取らなかったために、検査も治療の設備もほとんどない施設で、重症化リスクが高い高齢者が留め置かれた形となりました。悪化する前に入院措置を取っていれば助かる命はあったはずです。

第4に、14人の方が亡くなったこの対応について、市は一切責任を認めず、家族の判断だとして責任を転嫁したことです。

市は、14人の方が亡くなったこの対応について「必要かつ適切な対応」だと強弁し、反省の言葉は一言もありませんでした。また、この判断は「ご家族の判断」だとして、入院措置をしなかった責任を家族に転嫁したのです。

以上のように、原則から外れ、県の手引きとも違う対応を取ったことにより、感染しなくてもよい人まで感染し、助かる命を助けられなかったのです。入院希望者以外は入院できず、検査・治療設備もない施設で留め置かれ、重症化しても入院措置がされない、これは「命の選別」そのものです。市の間違った対応により、14人の方が亡くなったという重大事態に対して、なんら反省もなく、責任も認めない。さらに苦しんでいる家族に責任を転嫁したのです。こうした対応は、市民の命を守る行政・市長として許されないものです。

●要望

2度とこのような事態を引き起こさないために、今までの対応を改め、早急に以下の対応を要望します。

1.4月に出した通知を撤回し、今回、高齢者施設でとった対応を改め高齢者福祉施設で陽性が確認された場合は 入院という原則に立ち戻り、陽性者を速やかに入院させること。

2.今回の対応の誤りを認め、その原因究明と市民に対して説明責任を果たすこと。

以上