議会報告

2007年12月13日

斉藤たかし議員が意見書提案説明 防衛利権の徹底解明を求める意見書案など9件を共同提案


2007,12,13, Thursday
12月議会で共産党は他会派と共同で「防衛利権の徹底解明を求める意見書案」「生活扶助額引き下げに関する意見書案」「原油価格高騰に対する緊急対策を望む意見書案」「『沖縄戦』の記述をめぐって、教科書検定意見の撤回を求める意見書案」「私学助成の増額をもとめる意見書案」など、9件の意見書案を提出、「『沖縄戦』の記述をめぐって、教科書検定意見の撤回を求める意見書案」の提案説明を斉藤たかし議員がおこないました。

2007,12,13, Thursday

斉藤議員は提案説明で、「日本軍の強制」を不明瞭にした検定修正は、沖縄戦の教訓を教科書から消し去り、沖縄戦体験者が受けた日本軍による行為を消し去ることにつながり、沖縄戦体験者が受けた日本軍による行為を否定することにつながるとして、「沖縄戦では20万人余の尊い人命が奪われ、戦争体験者は忘れることのできない戦場の光景を抱えるだけでなく、亡くなられた家族や親戚、友人などの死も背負ってこれまで生きてこられました。戦争体験者の体験をなかったものにすることは、今、生き残っている体験者の存在までも否定し、犠牲者をも否定することになります。悲惨な地上戦を体験し筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた沖縄県民にとって、今回の検定結果は到底容認できるもではありません」「これまで、決して語ろうとしなかった戦争体験者の口を開かせるほどの怒りは大きな県民運動に発展し『沖縄戦の真実を教科書に』という一致点のもとに、9月29日に沖縄県で、『教科書検定意見撤回』を求める県民大会が行われました。沖縄県議会をはじめ、沖縄県内の全市町村議会が、教科書検定の意見の撤回と『集団自決』に関する記述の回復を求める意見書を可決、提出しました」と述べ「問題の本質は、文部科学省が恣意的な検定修正意見をつけたことにあり、『訂正申請』による決着ですまされるものではありません」と指摘して、沖縄県那覇市と友好都市の関係にある川崎市の市議会として、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再びおこることがないようにするためにも、今回の検定意見を速やかに撤回されるよう国に対して強く要望することが必要であると考えるものであります。とのべました。

「防衛利権の徹底解明を求める意見書案」などの意見書案に自民・公明などが反対
「防衛利権の徹底解明を求める意見書案」と「生活扶助額引き下げに関する意見書案」の採決では、川崎市議会で34年ぶりとなる可否同数(賛成=共産、民主、ネット、無所属、反対=自民、公明)となり、議長裁決(鏑木議長)で否決。「『沖縄戦』の記述をめぐって、教科書検定兼の撤回をもとめる意見書案」(自民・民主・公明が反対)、「原油価格高騰に対する緊急対策を望む意見書案」(自民・公明・ネットの反対)は否決されました。
私学助成の増額を求める意見書案、他4件は全会一致で採択されました。(写真:賛否同数となった防衛利権の徹底解明を求める意見書案採決)

2007,12,13, Thursday1b「防衛権利の徹底」の後

主な意見書は以下の通りです。

「沖縄戦」の記述をめぐって、教科書検定意見の撤回を求める意見書(案)
平成19年3月30日に公表された教科書検定の結果によると、日本史の教科書に対して、沖縄戦による「集団自決」が「日本軍による強制された死」であること、日本の軍隊は、国家体制の維持のために、「国民の生命、安全を守る」ものではなかったとする記述に対して、「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」であるとして、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除、修正させている。その根拠として、文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人らが起こした裁判などを掲げている。
しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、沖縄戦研究では当たり前のこととなっている「沖縄の事実」「歴史的事実」をゆがめ、沖縄体験者が受けた日本軍による行為を消し去ることにつながるものである。
これまで決して語ろうとしなかった体験者の口を開かせるほどのこの怒りは大きな県民運動に広がり、9月29日に沖縄県で、「教科書検定意見撤回」を求める県民大会が行われ、沖縄県議会をはじめ、沖縄県内41全市町村の議会が、教科書検定の意見の撤回と「集団自決」に関する記述の回復を求める意見書を可決、提出した。
二十万人余の尊い人命が奪われるなど、悲惨な地上戦を体験し筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた沖縄県民にとって今回の検定結果は到底容認できるものではなく、私たちも共通の思いである。
よって国におかれては、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにするためにも、今回の検定意見を速やかに撤回されるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

防衛利権の徹底解明を求める意見書(案)
防衛装備品の調達をめぐる軍事利権疑惑で、守屋前防衛事務次官が収賄容疑で逮捕された。今回の事件は、装備品の仲介者である株式会社山田洋行が贈賄目的で接待を続け、長年にわたり利権構造をつくりあげてきた構造が浮かび上がったものである。
さらに、防衛装備品の調達に権限を持つ前事務次官が商社に対して便宜を図った疑惑がもたれているのは、次期輸送機(CX)エンジンの選定などである。平成14年以降、防衛省が山田洋行と契約した実績は、156件、231億円に及び、落札率は99・9%と、実に商社のいい値ともいうべき実態が明らかになっており、地位を利用して行政をゆがめた事実が明らかになれば、防衛省の官僚トップにも及ぶ収賄事件に発展することになる。すべての事業について、水増しや便宜供与の有無について解明が必要である。
また、一連の軍事利権疑惑で、「日米平和・文化交流協会」が深くかかわっており、同協会の会合ではミサイル防衛システムの導入や「米軍再編」の推進を求めている。
守屋前事務次官が年間2兆円に及ぶ兵器購入費や総額3兆円にもなる在日米軍再編費にかかわって「口利き」をしていた疑惑も、一連の軍事利権の構図が根本にある。
東京地検が「日米平和・文化交流協会」の事務所を捜索し、利権の本質に迫ろうとしている。司法における厳正な捜査と国会における徹底解明は車の両輪である。
さらに、立法機関の国会の場にある政党・政党支部が、いまだに企業からの献金を受け取れるために、政・官・業の癒着を拭いきれず、真相の解明に支障をきたしているのが現実としてある。
よって国におかれては、問題の中心にある軍事利権をめぐる疑惑を早急に徹底解明し、根本解決をされるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

生活扶助額引下げに関する意見書(案) 生活保護制度は、国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した日本国憲法第25条の理念を実現するための制度であり、わが国における生活の豊かさ及び人権意識を計るバロメーターである。
しかしながら、厚生労働省の「生活扶助基準に関する検討委員会」は、生活保護世帯が受け取る食費や光熱水費等の生活費にあたる生活扶助額が、低所得者世帯の消費支出に比べて高く不会平感があるとして、生活扶助額の引下げの容認につながる報告書をまとめた。
現状では、ワーキングプアの増加や生活保護費より低い国民年金の支給額などの問題があるが、生活保護費の引下げは、最低賃金の底上げに逆行するものであり、低所得者世帯の所得を最低基準である生活保護費に近づけることこそ必要である。
また、わが国では、年問3万人以上の人々が自ら命を絶つ現状が9年間も続いており、社会のセーフティーネットとして、国が責任を持って生活保護制度の水準を維持していくことが強く求められている。
よって国におかれては、生活扶助額の引下げではなく、生活保護世帯り一層の自立を図るため、特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

原油価格高騰に対する緊急対策を望む意見書(案)
原油価格の高騰による灯油やガソリン価格の高騰が、製造業・農業・流通業など市内経済や市民生活に深刻な影響を及ぼしている。石油情報センターが平成19年11月末に発表した価格動向調査では、灯油の価格は統計開始以来の最高値を4週連続で更新し、ガソリン価格も、依然として最高値圏で推移している。こうした中、中小企業は製造コストや運送用燃料費等の上昇を取引価格に転嫁しにくい状況にあり、厳しい経営環境にさらされている。国民生活においても、灯油など生活必需品の高騰、原材料費や穀物価格の高騰による価格の上昇が消費者物価全般へ波及している。
原油価格高騰の要因として国際的投機資金の流入があることは、IEA(国際エネルギー機関)や産油国の会議など国際的にもこの認識は広まっており、投機資金の規制に向けた真剣な取組が求められている。また、高騰に対する対策として、石油業界への指導と同時に、中小企業や消費者保護対策の具体化が求められている。
よって国におかれては、原油価格の高騰に対し、次の事項について特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
1 経済産業省は、平成19年11月27日付けの「下請取引の適正化について」及び「下請事業者への配慮等について」に基づき、買い叩きの禁止や代金支払などで親企業への指導・監督を強化し、取引価格が、材料費・労務費・運送費を考慮したものとなるように、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を順守させること。
2 業界による出荷制限など便乗値上げが行われないように監視・指導すること。
3 中小企業への緊急対策として、原油高騰による直撃を受けている業者への減税措置を講じるとともに、債務返済の繰り延べ、ゼロ金利融資の実施を行うなど、融資支援策を講じること。
4 各都道府県の在庫量を把握し、必要なら国の原油備蓄を取り崩してでも、安心できる量の確保と安定供給ができるように万全の態勢で臨むこと。
5 低所得者に対し、暖房費の負担増を軽減する対策を取ること。
6 卸売価格の公表など、国民に対して機敏に情報を提供すること。
7 バス事業など、公共的交通機関への財政上の支援措置を講じること。
8 低所得者、中小・零細業者などの生活実態をよくつかみ、国民から相談窓口及び不公正取引り告発ホットラインを設けること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

私学助成の増額をもとめる意見書(案)
県の調査によれば、中学卒業者のほとんどが高校進学を希望し、その8割が公立高校への進学を希望している。しかし、県は、全日制の公立高校の定員を中学卒業者の6割程度とし、4割は私学に行くことを前提としている。
サラリーマンの給与所得はいまだ減少を続けるなど、子育て世代の経済状況は、依然として厳しく、誰でもが私学に行くことができる状況ではない。公立高校を希望する生徒が多いことにしっかりと目を向け、受け入れる体制を作ることが必要であるとともに、多くの中学卒業者を受け入れている私学への支援強化が求められる。
私学も公教育の一環であり、公立と同じように教育を行う条件を整えることも必要である。私学助成は、昭和50年に制定された「私立学校振興助成法」に基づき、教育条件の維持向上、修学上の経済的負担軽減、経営の健全性の確保のために行なわれている。この趣旨にのっとり、私立高等学校等に助成を行う主体である神奈川県が、4割の生徒が進学することのできる私学にするための支援を行うことは、多くの父母の願いである。
よって県におかれては、私学助成のより一層の増額を図るため、特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(2007.12.13)