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2007年11月20日

「保育緊急5カ年計画」を検証する(その3)


2007,11,20, Tuesday

2007,11,20, Tuesday

「保育水準」後退させる公立の大規模民営化

「保育緊急5カ年計画」では、公立保育園を今後4年間で20カ園民営化するとしています。新たに1千人の市職員削減を目標にした「新・行革プラン」で標的にされた公立保育園民営化を、待機児解消をめざす「5カ年計画」に抱き合わせで盛り込んだものです。

児童福祉法の定めは

そもそも保育事業は、1947年に制定された児童福祉法に基づく事業です。同法第1条は「全ての児童は等しくその生活を保障され、愛護されなければならない」と定め、保育に欠ける子どもについて、市町村の保育実施義務を明記しています。
また同24条では、保護者の保育所選択権の尊重が明記され、行政は希望する保育所に入所させ、勝手に他の保育園に変えさせてはならないとし、定められた期間が満了するまで保育を保障する義務を負っています。

公立が先導して民間を引き上げてきた歴史

児童福祉法の制定と同時期に、人的配置や保育室の広さ、園庭、厨房等の守るべき環境設置についての「最低基準」が設けられました。これはまさに戦後まもなくの最低の基準であり、将来、戦後の復興を果たした時には大幅に改善しようと、基準を向上させる義務も謳われたのです。
しかし、これまで地方自治体や保育関係団体から国に対して改善要望がくり返し行なわれても、「最低基準」は改正されないまま、全国ほとんどの自治体で「最低基準」を超える人的配置が必要だとして、保育士の加配が行なわれてきました。
川崎市の保育の歴史も、「保育の質」の向上をめざし、市独自で加配等を行なうとともに、民間保育園に対して公私間格差をなくす財政措置をとり、公立と民間が“車の両輪”として、「子育てするなら川崎」といわれる公的保育を担ってきました。こうして、公立保育園が全市の「保育水準」となり、民間の水準が引き上げられてきたのです。
ところが近年、公立が先導して「最低基準」を超える水準に引き上げてきたことを逆手にとり、阿部市政のもと、公・民の運営費比較が意識的に持ち込まれ、公立保育園が民営化され始めました。

保育の専門性、ベテランの役割否定する民営化

民営化の目的は、より効率的な保育所運営ですが、「効率的」とは、保育にかかるコストの削減=人件費の削減です。民間保育園を担う法人と公立の職員給料表、職員配置はほぼ同じですから、人件費の差は主に年齢差です。
人件費削減のための新たな民営化がもたらすのは、保育士の若年化、非正規化です。しかし、専門性が求められる保育の仕事は、経験を積んだベテラン保育士と、中堅、若手のバランスのとれた安定した保育者集団が必要です。とりわけ、子育ての苦労や悩みが多様化する現代社会では、父母の悩みを聞き、子どもだけでなく“親育て”も求められる場面も増えるなかで、ベテラン保育士の役割はますます高まっています。そうした存在が、園に子どもを預ける親の安心と期待にもなっています。
こうしたベテラン保育士の役割を否定し、現場から減らしていく大規模な民営化が、川崎市全体の「保育水準」を後退させていくこととなるのは明らかです。
(つづく)(日本共産党市会議員石田和子)