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2008年7月24日

川崎市無防備都市条例案の臨時議会開かれる


2008,07,24, Thursday

2008,07,24, ThursdayA

2008年第3回市議会臨時議会が7月22日から24日に開かれ、住民直接請求による「川崎市平和無防備都市条例案」が審議されました。
日本共産党からは佐野仁昭議員が代表質問(23日)、竹間幸一議員が代表討論(24日)をおこないました。
竹間議員は、同条例案は戦時ルールであるジュネーブ条約を根拠とし、戦争・紛争を前提にした内容であって、「戦時、紛争時のルールをつくることは、武力の保持や行使・威嚇を禁じている憲法9条の理念とは、相容れません」とのべ、いまたいせつなことは平和を求める国民と世界の人々のたたかいと世論の高揚に確信を深め、「日本を戦争をする国にしないために9条を守る一点で一人でも多くの人が手を携えることではないでしょうか」と表明して、本条例案には賛成できないことを明らかにしました。
石川建二議員が委員長をつとめる市民委員会で審議され、本会議で同条例案は賛成少数で否決されました。
竹間幸一議員の代表討論は次のとおりです。
市民の平和への願いを重く受け止め、憲法9条と平和を守る人々と手を携えて全力で奮闘する
私は、日本共産党を代表して議案第100号、川崎市平和無防備都市条例の制定について、討論を行います。
まず、有権者の50分の1を上回る署名、法定数の1.4倍の署名を集め、直接請求によって条例案を提出されたみなさんに心から敬意を表します。
今回の直接請求は、川崎が平和なまちであり続けてほしい、二度と戦争は起こってほしくないと願い、平和を希求する多くの市民によって署名活動が行われ、数多くの市民の共感を得て3万筆を超える署名が集められたものであります。この、一筆一筆に込められた市民の平和への願いは、重く受けとめなければならないと考えているところです。
そして、戦争放棄を宣言している日本国憲法9条の徹底した平和主義を市民が自分自身の問題としてとらえ、一人ひとりが平和なまちづくりに参加し、活動することは、これからの川崎市のまちづくりにとって極めて重要なことだと考えます。
そのためにも本市の平和施策の充実は重要な課題でありますが、平和啓発事業費、平和館関係費がいずれも大きく減額されています。
審議のなかで、「平和館活性化に向けてのプロジェクトを設置し運営協議会と協議して」すすめていくことも明らかになりました。こうした平和施策の充実をどのようにすすめていくか、市民参加を思いきって拡大するシンポジウムなど、さまざまな仕組みを検討していくことを、あらためて要求しておきます。
イラク戦争を通じて、米国の一方的なやり方は許さないという国際世論も広がっています。そうした状況下で、自衛隊がどういう役割を果たそうとしているかも厳しく問われています。まさにその時、自衛隊の「音楽まつり」に川崎市立橘高等学校吹奏楽部が出演しました。同「音楽まつり」のパンフレットと一緒に配布されたアンケートには「ご希望をお知らせください」として 1.自衛隊の募集案内・資料が欲しい。2.自衛隊のイベントに参加したい。3.部隊又は基地を見学したい。4.自衛隊の試験を受験したい。(させたい。)とあり、「音楽まつり」の目的がどこにあるかは明確です。しかし、そうした「音楽まつり」に橘高校吹奏楽部が参加したことも、その理由についても、教育委員会は全く知らなかったと言いました。しかし、川崎市と川崎市教育委員会が後援をしているのですから、文字どおり知らなかったではすまされません。今後、この「まつり」に生徒を二度と参加させないことを求めるとともに、自衛隊の「音楽まつり」を市が後援することはやめるべきであることを要求しておきます。
市民の平和への願いは重く受け止めるべきですが、しかし、こうした市民の平和への思いを尊重することが、どうしてジュネーブ条約追加第一議定書の「無防備地区」宣言でなければならないのかという、根本的な疑問を払拭できません。
憲法9条は、国家の自衛権を否定してはいませんが、「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」を放棄するだけでなく、「陸海空軍その他の戦力を保持しない」として一切の常備軍をもつことを禁止しています。ここまで恒久平和主義を徹底した憲法は世界にほとんど例がありません。憲法9条は、戦争の違法化という20世紀の世界史の大きな流れの中で、もっとも先駆的な到達点をしめした条項として、世界に誇るべきものであります。
その値打ちは、1999年、オランダのハーグでおこなわれた世界市民平和会議での「行動指針」が、各国議会に「憲法9条のように戦争放棄宣言を採択すること」をよびかけるなど、世界でも注目されています。その3年前、96年、アフリカ沖のカナリア諸島のテルデ市に平和を考える広場をつくろうということになって、広場の名前は「ヒロシマ・ナガサキ広場」と名付けられ、そこに憲法9条がタイルに焼き付けられ掲げられたといいます。朝日新聞の記者だった伊藤千尋さんは、このアフリカ沖の大西洋の島に憲法9条の碑があることを紹介しながら、「決して9条は、私たち日本人だけのものではない。今、世界中、この地球上で憲法9条が必要だと思っている人がたくさんいるということです」と語っています。
2005年、パリで行われた国際民主法律家協会の第16回大会決議では、日本国憲法第9条についての決議で、21世紀に戦争のない世界をつくり上げることは人類の悲願である。それゆえ、第9条は人類の希望の原理を指し示している。人類の宝といっても過言ではない。人類の宝を破壊することは許されない。このようにうたっています。
南米ボリビアのモラレス大統領も「ボリビアでは新しい憲法を作ろうとしている。その憲法に日本国憲法9条を模範とした条項を入れたい」と語っています。
他方で、アメリカのアフガニスタンとイラクでの先制攻撃戦略の破たんは明白です。
アフガニスタンでは、軍事力によってタリバン政権を打倒したものの、テロと暴力の悪循環は深刻化し、タリバン勢力が復活し、アフガニスタン政府自身がタリバンとの対話路線をすすめるなど、アメリカの軍事支配は深刻な破たんをきたしています。
イラクでも侵略戦争と軍事占領は5年をこえ、アメリカの歴史上、ベトナム戦争につぐ2番目に長い戦争となり、戦費支出は第2次世界大戦につぐものとなっていますが、テロと暴力の連鎖はとどまらず、イラク連邦議会の過半数の議員が、米軍撤退を断固として求めるなど、イラク国民との矛盾は深まるばかりです。
アメリカは、アフガニスタンとイラクを軍事力で支配することに失敗したばかりか、自らが後ろ盾になってつくった政権・議会との関係でも、大失敗をとげつつあります。
このように、21世紀は、軍事力による紛争の「解決」の時代ではなく“国際的な道理に立った外交”と“平和的な話し合い”が世界政治を動かす時代となり、憲法9条の値打ちが、地球的規模で生きることになります。
戦後、日本国憲法は、たび重なる解釈改憲がなされてきました。しかし、国の名によって外国人を一人も殺さず、自衛隊員が一人も殺されていないのは、憲法の存在と、平和のための国民の運動によるものであります。
そもそも日本国憲法は、「無防備」を特定の地域に適用したり、この宣言を「通告」する「敵国」の存在なども「想定外」なのであります。
この無防備地域宣言は、敵対国があり、武力紛争となっている事態の下での「宣言」であることが前提となっています。つまり、平時・平和時、紛争がない時に、一般的に宣言をするようなものとは考えられていません。
ジュネーブ条約の追加議定書は、主権国家の武力紛争の際の決まり事であり、憲法9条の理念とは異なると考えます。憲法は、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言しており、戦時、紛争時のルールをつくることは、武力の保持や行使・威嚇を禁じている憲法9条の理念と、相容れません。
いま私たちは、どこに軸足を置いて奮闘すべきでしょうか。
沖縄県民のたたかいは、あの名護の海に予定されている新基地建設のための杭を一本も打たせて来ませんでした。沖縄県議会も、あらためて新基地建設反対を決議しました。神奈川でも米軍再編強化に反対する横須賀、相模原、座間、厚木での地域ぐるみ運動が大きく発展しています。
こうした国民のたたかいのなかで、自衛隊のイラク派兵が憲法9条に違反する、との名古屋高裁判決がだされました。つまり、「航空自衛隊の空輸活動は、主としてイラク特措法上の安全確保支援活動の名目で行われ、それ自体は武力の行使に該当しないものであるとしても、現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものということができる。したがって、このような航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を、戦闘地域であるバクダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であるということができる。」よって、「イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」と明確に断じました。その上で、「平和的生存権」について、「憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には、平和的生存権の主として(中略)裁判所に対し当該違憲行為の差し止め請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる」と平和的生存権の具体的権利性を明確に認めています。
平和を希求する国民が平和憲法の力を生かした結果生み出したものです。
世論も憲法擁護の声が、国民多数派になりつつあります。4月に発表された読売新聞の憲法に関する連続世論調査の結果は、改憲反対が43.1%、改憲賛成は42.5%と、反対が賛成を実に15年ぶりに上回りました。9条については、改憲反対が60%と、賛成31%の2倍に達しているのです。
いま大切なことは、こうしたたたかいと世論の高揚に確信を深め、日本を戦争をする国にしないために9条を守る一点で一人でも多くの人が手を携えることではないでしょうか。そのために日本共産党は引き続き全力で奮闘することを表明し、よって議案第100号 川崎市平和無防備都市条例の制定については賛成できないことを申し上げ討論といたします。
佐野仁昭議員の代表質問はつぎのとおりです。
日米軍事同盟をやめさせる国民のたたかいと世界の平和秩序めざす巨大な流れにたち川崎市の平和施策を問う
2008,07,24, ThursdayB

私は日本共産党を代表して、議案第100号川崎市平和無防備都市条例の制定について質問します。
今回の直接請求運動を通じて、アフガニスタンへの報復戦争やイラク戦争などアメリカの引き起こす戦争で、何の罪もないたくさんの人たちが犠牲になることに心を痛め、世界の平和を願い署名されたものや、第2次世界大戦を体験し、戦争の悲惨さを2度と繰り返してはならないという思いから署名されたものなど、3万筆を超える署名一つひとつに、平和を願う川崎市民の思いが込められたものと私たちは受け止めています。
わが党は、戦前戦後一貫して、戦争反対を貫き、戦後制定された平和憲法を遵守し、日米安保条約の廃棄を目指し、当面のアメリカの戦争に加担する日米軍事同盟の強化に断固反対の立場で、取り組んできました。私たちは、憲法9条が果たしている大切な役割に確信を持ち、共に力を合わせることが何よりも欠かせないことと思います。
この間、アメリカの要求に基づき、在日米軍基地の再編強化と有事関連法の整備が強行され、日本をアメリカの行う戦争に参戦できる国づくりへと向かう危険な流れがつくられようとしていますが、一方で、憲法9条を活かして、日米軍事同盟の策動を食い止めようという広範な国民の運動が、戦争への準備を押しかえす力となって全国に広がっています。
また、横須賀では、5万人を超える原子力空母の母港化の是非を問う住民投票の実施を求める直接請求署名が集められ、住民投票の実施は、否決されたものの、横須賀市議会として署名に託された市民の思いを重く受け止め、国に対して全会一致で意見書が採択されました。
さらに、沖縄でも、沖縄県内の基地たらい回しを決めたSACO合意から12年たちますが、平和を願い、基地たらい回しを許さない全県を挙げての沖縄県民の運動によって、あの名護の海に予定されている新基地建設のための杭を一本も打たせてきませんでした。
このように、日米軍事同盟の強化に対して、基地被害をなくし、憲法9条に基づき、平和を守ろうと願い、基地周辺の自治体を中心に、基地強化を許さない闘いが大きく広がっています。
名古屋高裁では、イラク戦争への航空自衛隊による米軍支援活動に対し、憲法違反として断罪する判決が下されました。と同時に、憲法に定められた平和的生存権が、差し止めや損害賠償請求のできる具体的な権利として認める画期的判決が下されました。
平和を願う国民の力が、日本の平和憲法の力を生かした結果を産み出したものです。
また、憲法九条を世界的規模で活かそうという取り組みや、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす流れが、世界の広大な地域を覆う巨大な流れとなっています。
1999年にオランダのハーグで行われた世界平和市民会議での「行動指針」が、各国議会に「憲法九条のように戦争放棄宣言を採択すること」をよびかけるなど、今世界でも見直されつつあります。さらに、今年5月には、9条世界会議が開かれ、「日本国憲法9条は、戦争を放棄し、国際紛争解決の手段として武力による威嚇や武力の行使をしないことを定めるとともに、軍隊や戦力の保持を禁止している。このような9条は、単なる日本だけの法規ではない。それは、国際平和メカニズムとして機能」するものであると宣言しました。
またアジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)が平和の地域共同体の基礎に位置づける「東南アジア友好協力条約」(TAC)への参加国が、イラク戦争開始の2003年以後、ASEANの域外の諸国に急速に拡大し、地球人口の57%を占める二十四カ国が参加し、ユーラシア大陸のほとんどを覆う巨大な平和の流れをつくりだしています。
こうした情勢を踏まえて、今こそ、憲法9条を力に、平和を願うすべての人々と共同し、世界の流れから孤立する日米軍事同盟の強化再編を止めさせ、憲法9条を守り、活かす運動を太く大きく広げるために、私たちは、これからも全力を尽くすことを表明して質問に入ります。
まず、この直接請求署名を通じて、3万人を超える平和への願いをどう受け止めるのか市長の見解を伺います。
次に、本市として、平和への願いをどう行政の中に活かしていくのか、平和施策についてです。
市長は意見書の中で、川崎市が昭和57年(1982年)に都道府県や他の政令市に先駆けて核兵器廃絶平和都市宣言を行うとともに、川崎市基本構想においても民主主義の下での人権の尊重と平和への貢献をその根本的な理念とし、これを基に、さまざまな平和施策の推進に取り組んでいると述べています。
しかし、この間の平和関係予算は、阿部市長就任後、急激に削減され、2001年に比較して約3000万円30%も削減されています。
他都市では、戦後63年を迎え、戦後生まれが70%以上を占める中で、憲法が掲げる平和主義を実践していくためには、それぞれの地域で、戦争と平和を考える機会を創出し、関心を広げていくことが不可欠として、戦争遺跡を積極的に保存し、独自に戦争を語り継ぐ取り組みを強化しているところがあります。
平和を願う市民の声に応えるというならば、平和予算を増額し、積極的に平和事業に取り組むことこそ重要ではないでしょうか、伺います。
また、旧陸軍登戸研究所など市内に残る貴重な戦争遺跡を保存し、平和施策、学校教育へ活かしていくべきと考えますが、見解を伺います。
また、平和予算を毎年のように削減し続け、市民の平和事業への後援は拒否する一方で、国論を二分している自衛隊の音楽祭を市が後援し、その上、市立高校の生徒まで出演させています。核兵器廃絶平和都市宣言の趣旨に反し、川崎市民の平和の願いに逆行するこれらの取り組みをやめるべきです。市長に伺います。
次に、「国際人道法の積極的活用」に関する点についてですが、ジュネーブ諸条約の諸協定や追加議定書は、戦争が続く中で、人道的に犠牲者をいかに少なくするのかということから出されてきたものとして、戦争状態を前提にしたものか、見解を伺います。
<再質問>
再度、川崎市平和無防備都市条例案について、伺います。
署名をされた3万人を超える市民の思いをどう受け止めるのかという質問に対し、市長の答弁からは、一筆一筆に込められた平和の思いを重く受け止めるような真摯な姿勢が感じられませんでした。
市長は、さまざまな平和施策に取り組んできたと述べましたが、平和を願う市民の声をしっかり受け止め、まともに応えようとしない姿勢が、具体的な平和施策や川崎市の後援問題にも色濃く反映していることを指摘せざるを得ません。
平和施策の推進については、現在の制度のもとでも充実させることは可能だし、すべきです。
たとえば、市民参加の平和施策推進委員会のような組織を立ち上げ、予算もしっかり確保し、平和事業をさらに充実・発展させるべきと考えますが、見解を伺います。