議会報告

2012年10月10日

黒字決算にでありながら暮らし切り詰めた決算を批判~勝又議員が討論


かつまた10月3日の採決に先立ち、日本共産党川崎市議団を代表して勝又光江議員が討論をおこないました。

勝又議員は、2011年度決算は実質収支で11億円の黒字となったのだから、子どもの医療費助成制度や私立幼稚園の保育料補助などを補正予算を組んで拡充できたにもかかわらず、それをしなかったことは、「市民生活に予算を重点配分した」という市長の2010年度の施政方針は言葉の上だけだったと批判。
党が提案した市内居住者新規雇用企業への奨励金や雇用促進奨励金の制度、不況対策資金の融資期間延長、住宅リフォーム助成制度などの中小企業振興策や暮しをあたためる政策ではなく、2社に2億9700億円という巨額の補助金を臨海部につぎこみながら暮しを切り詰める政策に終始した2010年度決算は認定できないと述べました。

任期付研究員の採用等に関する条例案(議案第127号)は、雇用計画の中で対象者が将来展望を持てる制度でない点を指摘して反対を表明。
市税条例の一部を改正する条例案(議案第131号)は、市民税・県民税・復興特別所得税と合わせると年収500万円夫妻二子世帯で2600円の増税になり、増税分は被災地支援のためのものではなく、本市の防災対策の財源は一般財源でまかなうべきであるとして、反対を表明。
新丸子東3丁目地区の地区計画を決定する条例案(議案第134号、135号)について、住民の反対意見に関係なく手続がおこなわれたこと、複合的な環境影響予測がなされていないこと、周辺地域の環境整備が追いついていないこと、欧米では非人間的だとして見直しがはじまっている都市の再整備計画の考え方であることを指摘して判定を表明。
30億円で国立医薬品食品衛生研究所用地を取得(議案第138号)し国に無償で貸与することについて、住民の福祉増進をはかるべき自治体の役割からして最優先に取得すべきものか疑問であると指摘しました。

勝又議員の討論は次のとおりです。

私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。
2011年度(平成23年度)の各会計決算認定についてです。
2011年度決算においては、予算に対し市税等が増収となったこと、職員給与費等が減となったことなどにより、当初予算で見込んでいた収支不足は改善し、減債基金からの新規借り入れや財政調整基金の取り崩しを行うことなく実質収支で11億円の黒字を確保しました。市長は2011年の施政方針で子育てや雇用対策など市民生活の安定を図るために重点的に予算配分したと強調しましたが、子どもの医療費助成制度や私立幼稚園の保育料補助など、補正予算で拡充することもできたにもかかわらずすえおきのままであり、「重点配分した」というのは言葉の上だけだったといわなければなりません。
基幹税である市民税収入については、法人市民税は2004年度の水準も回復できていないとはいえ、リーマンショックの時期よりは回復しています。市内の資本金10億円以上の大企業1833社のうち、法人税割を納税しているのは528社しかなく、1305社は、行き過ぎた大企業優遇税制で、利益に関係なくかかる税金である均等割りしか納入していません。大企業優遇税制の是正は急務です。
個人市民税は2年連続減収となっています。人口増にもかかわらず、減収となっているのは、市民のふところが本当に苦しくなっていることを表しています。福祉の増進を図るべき自治体はここにこそ暖かい施策を行い、結果として市税収入を増やしていくべきでした。
私たちは2011年度予算を審議した議会で、臨海部中心の呼び込み型の産業政策ではなく、子育て、雇用、中小企業への支援などに重点を置くことを提案しました。若い世代の切実な願いに応え、小児医療費助成制度を中学卒業まで所得制限なしに無料にすることや幼稚園の保育料補助を全階層で市独自の補助を加えること。茨城県取手市のような、市内居住者を新規雇用すれば奨励金を交付し、雇用した人数によって雇用促進奨励金もあわせて交付されるという支援制度を導入することや、不況対策資金の融資期間の延長、住宅リフォーム助成制度など、具体的に雇用対策や中小企業振興策を提案しました。しかし、それらに全く耳をかさず、イノベート川崎で、エリーパワー社、実験動物中央研究所の2社に対し、約2億9,700万円の補助金を出し、この2社の工場誘致に対する補助金は合計で8億6,000万円にもなるなど、2011年度も行財政改革を推し進め、臨海部には予算をつぎ込みながら、暮らしを切り縮める施策に終始しました。こうした予算執行を行った2011年度一般会計決算などを認定することはできません。
財政状況を意図的に深刻に描いて、市民にがまんを押し付ける「行革プラン」は撤回すべきです。さらにこのなかで、「市民と市民が公共サービスを直接やり取りして、中間コストのかからない公共サービス提供を目指す」としているのは、公共の役割を投げ捨てたものであり、撤回すべきであることを強く求めておきます。

議案第127号 川崎市任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する条例の制定についてです。
地方公共団体の一般職における任期付き研究員の採用等に関する法律の趣旨は公務部内では得られにくい専門的な知識経験等を有する外部人材を受け入れ、研究者の相互の交流を推進することにより、研究活動の活性化を図り、もって地域振興に資することを目的に、地方公務員については、条例の定めるところにより、公設試験研究機関の研究業務に任期を定めて採用できるようにするためとしています。
若手研究員は、その任期は3年、特例が認められたとしても5年の範囲で、これ以上の雇用の継続はありません。いくら研究の成果をあげても正職員にはなれません。
近年女性の研究員も増加していると聞きます。男女を問わず、若手研究員の世代は、結婚、出産、育児といった問題に直面する年代です。任期付研究員にも市職員と同様に産休、育休は保障されているとはいいますが、3年という任期のなかで、実際に成果を期待される研究と出産、育児が両立できるのは大変にむずかしいことです。
さらに、任期切れの時期が近づけば、次の研究職を探さなければならない、研究職の競争がきびしいなかで、年齢が上がるほど民間企業への就職も難しくなります。
日本学術会議は「雇用計画の中で、対象者が将来展望を持てる制度でならなくては、研究職全体の地盤沈下を引き起こす恐れがある」として、任期付き任用制度の問題点を指摘しています。このようなことから、この議案には反対です。

議案第131号川崎市市税条例の一部を改正する条例の制定についてです。
これは東日本大震災からの復興に関し、国の臨時特例に関する法律の制定で2014年から10年間、個人市民税の均等割り税率を一律500円引きあげるものです。
この増税は市町村の裁量で出来る規定であり、どうしても増税しなければならないものではありません。しかも増税分はそれぞれの市町村の防災対策に使うだけで被災地支援のためのものではありません。
市民税の均等割は川崎市民の73万人が課税対象となり年間3億6千万円です。市税と県税の増税分を合わせると年間1000円となり、復興特別所得税の2.1%増税を合わせると夫婦とこども2人で年収500万円の家庭では2600円、年収700万円の家庭では5300円の増税となります。
地方自治体の防災対策は急いで取り組み、市民に安全・安心な街づくりを進めることは当然であり、その財源は一般財源で賄うべきです。復興に名を借りて増税する議案には反対です。

議案第134号川崎市地区計画の区域内における建築物等の形態意匠の制限に関する条例の一部を改正する条例の制定について、及び議案第135号川崎市地区計画の区域内における建築物に係る制限に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
新丸子東3丁目地区における大規模工場跡地の土地利用転換に伴い、超高層住宅、大型商業施設等の整備に関する地区計画等を決定しようとするものです。
当該地区計画の用途地域が商業地域へ変更されることにより、日影規制が撤廃されることになりました。住民の反対意見に関係なく変更手続きが行われたことについて、都市計画審議会の中でも問題が指摘されています。その後、建築協定を結ぶことになりましたが、本来の都市計画のあり方として問題です。今後の計画でも同様の手法が検討されているようですが、このようなやり方は見直すべきです。
個別の計画に対する環境影響調査が行われていますが、開発地域全体としての複合的な影響予測はなされておらず、超過密都市計画の進捗に伴い、教育、福祉等基盤施設の不足、鉄道駅のラッシュ、日影、眺望、風害等、看過できない事態が顕著になっています。現時点において顕著になった問題を検証し、全体の計画を見直すべきです。
また、当該地は、新たな商業施設の整備によって交通量の増加が発生することが予測されますが、都市計画道路等整備が追い付かず、大型商業施設の整備によってもたらされる周辺渋滞が避けられなど、良好な住環境の形成と逆行することになりかねません。
そもそも、都市の再整備計画の考え方は、90年前に欧米で広まった、公開空地を設け、高層ビル群を配置する近代都市計画の流れを受け継いでいるわけですが、すでに欧米では、1960年代後半になって、機能的で合理的とされる都市計画では、コミュニティーが育たない等、非人間的な側面についての反省から、これまでの流れを見直しています。
小杉駅周辺地区においても、わざわざタウンマネージメント組織を立ち上げて、地域コミュニティーをつくらなければならないなど、欧米で指摘された非人間的な側面が明らかになっています。これまでの経過から、超高層マンション群をさらに整備し続けていく計画については、見直す時期に来ているということを強く指摘しておきます。よって、議案134号、議案135号については、賛成できません。

議案第138号国立医薬品食品衛生研究所用地の取得についてです。
殿町3丁目の土地16972.19㎡を30億4650万円余で都市再生機構から川崎市が買い上げ国に無償で貸し付けるものです。
今回の土地取得が、住民の福祉増進を図るべき自治体の役割に照らして、最優先に取得すべきものなのか大いに疑問です。
これまで川崎の産業を支えて来た市内中小零細企業には年間10億円の支援でしかないのに国立医薬品食品衛生研究所には30億4650万円、2年前に23億円で土地を購入した分と合わせると53億4650万円となり、どう見てもお金の使い方が間違っているではないかと指摘し、質問しました。これに対する理事者の答弁は、伸びる産業に投資をさせていただいてこそ、ものづくり技術も生きる。いくらいい技術を持っていても縮む市場に投資してもそこだけで終わってしまうのでは意味がない、というようなものでした。
しかも、今後も土地を購入して無償で貸し付ける方式で企業誘致するのか、との質問には、「ベンチャー企業の進出希望があれば考えなくもない」と、むしろ肯定的でした。市内中小零細業者の営業・くらしを支える政策こそ今一番力を入れなければならない分野です。
このように、自治体の「京浜臨海部ライフイノベーショ国際戦略総合特区」構想に臨海部に誘致した企業に対して特別な優遇策をとり、市の支援策を集中させる産業政策から、中小零細企業を支援し地域経済の活性化と雇用の安定を図り地域循環型の産業政策に転換することを強く求めておきます。

議案第147号 黒川地区小中学校新設事業の契約の変更についてです。契約の仕方、教育の方法について問題があり、契約の締結時から反対してきましたので反対です。

議案第144号等々力陸上競技場メインスタンド改築工事請負契約の締結について、議案第146号市道路線の認定及び廃止についての内、等々力緑地内幹線道路等についてです。
今回のメインスタンドの整備に続き、サイド・バックスタンドの整備を踏まえ、約25,000人から35,000人に1万人、観客収容人数を拡充するとのことです。
スポーツの振興ということは、大いに結構なことですが、一方で、競技場周辺の住民の安らかな生活環境も守られなければなりません。これまでも、Jリーグの試合開催時に、騒音と振動、そして、照明による光の害について、苦情が寄せられています。今後の整備の中で、照明の位置の工夫や、騒音振動対策について検討するということですので、近隣住民への最大限の配慮をお願いします。
また、生活道路を廃道にすることについてですが、半世紀以上に亘って生活道路として利用されてきた公道を廃止するにあたって、関係住民への説明が不十分であったことなど、後味の悪い結果を残すことになりました。だれもが安心して利用できる公園整備という市民共通の願いを具体化する中で、これまでのように利用できないことも起こりえますが、その際も、十分な説明と合意の上で、進めるべきでした。
今後は、住民に対して協議の場を持つとともに、情報提供を率先して行い、住民の意見に配慮して整備を行うとのことですので、議案第144号、議案第146号には賛成しますが、近隣住民の心情をくみ取って、十分配慮していただくように要望しておきます。

請願第47号旧県立川崎高等職業技術校跡地への警察官舎建設計画について、「庭」の部分7610㎡を縮小するなど計画を見直し、防災機能を備えたスポーツ広場・運動広場の整備を求める意見書を県及び県警に挙げることを求める請願についてです。
官舎計画によって、本市の地域防災計画で指定されていた「震災時、他の都県市からの応援の活動拠点がなくなり、跡地の94%を県警が独占しながら防災機能もありません。東日本大震災を経験し、首都直下地震が心配されるなかで市内最大規模の公有地の使い方として間違っていることは明白です。住民の要望に応え、建設強行をやめ、計画を抜本的に見直すべきであり、請願の採択に賛成いたします。

議案第160号川崎市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算認定については、高齢者に差別を持ち込む後期高齢者医療制度に反対の立場であること、また、私たちは、予算議会において、不要不急の大規模開発を見直し、基金の取り崩しによって、市民生活の切実な願いに答えるべきと、予算の組み替え動議を提出した経過も踏まえ、2011年度決算認定にあたっては、一般会計決算、競輪事業特別会計、港湾整備事業特別会計、生田緑地ゴルフ場事業特別会計、公共用地先行取得等事業特別会計、下水道事業会計、水道事業会計、工業用水道事業会計については認定できません。

以上の立場から、議案第127号、議案第131号、議案第134号、議案第135号、議案第138号、議案第147号、議案第155号、議案第156号、議案第160号、議案第163号、議案第166号、議案第167号、議案第170号、議案第171号、議案第172号については反対、及び認定・承認できないこと、請願第47号その他の議案、報告については、賛成及び、認定・承認することを表明して討論を終わります。