政策・提案 • 資料室

2014年10月10日

「大規模センター方式、先にありき」の進め方・実施手法を見直し、安全・安心・食育が充実でき、出来立てのおいしい給食が実施できる自校調理校を抜本的に増やすことを求める緊急申し入れ、及び「緊急提案」(全文)のご提出


川崎市長(中学校給食推進会議委員長)福田紀彦  様 
 
    
2014年10月10日

日本共産党川崎市議会議員団

市古映美  宮原春夫  石田和子  佐野仁昭  竹間幸一
大庭裕子  石川建二  斉藤隆司  井口真美  勝又光江

 
市長を委員長とする中学校給食推進会議及び教育委員会を中心に、中学校完全給食の実施に向けた準備が進められ、すでに実施方針素案が発表され、11 月にも方針を決定するスケジュールになっています。

8月 19 日の第6回推進会議で市長(委員長)は、「実施手法については、いろいろなところから自校方式や親子方式を求められているが、教育環境への影響が非常に大きいことをしっかり説明して、誰が見てもこの方式しかないと納得感がある中で進めていくということをしっかり説明していかないと。…だから誰がどのように見てもこの方式しかないということを丁寧に説明していかないといけないと思うので、議会含め各種団体・市民にしっかり説明してもらいたい」と述べました。

しかし残念ながら「素案」は、1つの工場で1万5千食も作るなどの大規模センター方針を基本にしていることなど、「誰がどのように見ても、この方式しかない」と納得できる内容ではありません。

市長に対し、この間のわが党の調査、議会審議、市当局の準備過程を通して明らかになった問題点を指摘し、安全・安心・食育が充実でき、出来立てのおいしい給食を実現するための緊急提案と緊急申し入れを提出します。真摯に検討・実行していただくよう強く求めるものです。(「緊急提案」全文は別冊

この間の調査、議会審議、準備過程で明らかになった問題

(1) わが党と市教委による中学校全校調査で、新たに 11 校で運動場に影響なく自校調理場の整備が可能であることが明らかになりました(緊急提案(2)より)

5月発表の「中間とりまとめ」で、自校方式について「現時点では困難な状況」としつつ「個別の学校における可能性は引き続き検討」するとされました。今年6月から8月にかけて、わが党が中学校給食推進室(室長、担当課長等)と共同で実施した「自校調理可能性についての中学校全校調査」(小中連携校を除く 49 校)の結果、すでに可能とされていた3校以外にも、運動場に影響なく、既存校舎の大規模改修をしなくても、給食調理場整備が可能な学校が市内で 10 数校あることが確認されました。9月議会では、それらについて教育長答弁でも否定できませんでした。
 
(2) 文部科学省の聞き取り調査から、「基準面積」以下でも自校調理場整備が可能であることが明らかになりました(緊急提案(3)より)

先の全校調査の中で市教委担当課長らは、文科省の調理場整備の「基準面積」について、その広さがないと整備できない最低基準面積であるかのような説明をくり返しました。これに対して、わが党は8月 26 日、国会で文科省から聞き取りを行ない(田村智子参議院議員が同席)、その結果、文科省の「基準面積」とは生徒数規模別に補助金算定上の対象となる面積上限を定めたもので、地域・学校の実情も考慮して、その面積以下で整備されても構わない、それに合わせて補助金が出ることがわかりました。
 
(3) 市教委が自校調理方式の事業費試算を過大に見積もっていたことが発覚しました。財政問題でセンター方式へと誘導したことは重大です(緊急提案(7)より)

これまで推進室が、推進会議(市長)や市議会、全保護者向けの素案概要版その他あらゆる媒体で報告・宣伝してきた事業費試算で、自校調理方式が実際の生徒数や必要面積より過大に見積もられた試算が公表されていたことが明らかになりました。事業全体の制度設計にかかわる重大問題です。(例えば5月 27 日の推進会議・会議録より。市長挨拶「本日は事業費用の試算が示されている。しっかりと検討をお願いしたい」)9月議会でわが党がこのことを追及し、教育長は「(試算は)一定の条件のもとでシミュレーションをした試算値であり、実際に要する費用とは異なるものでございます」と答弁されました。このようなやり方で 100 億円規模の予算がかかる一大事業の実施手法の政策判断が根本から歪められ、決められるようなことは決して許されることではありません。
 
(4) 大規模センター方式は様々な問題点が多く、栄養士の配置も少なすぎることが明らかになりました(緊急提案(4)(5)より)

この間、わが党が他都市での大規模センター方式の実態を調査した結果、個別のアレルギー対応は出来ない、学校での食育活動には関われない、献立は大量の冷凍食品が多くなる、野菜は前日に大型機械で切って水に漬けておき、翌日には味も栄養価も香りも落ちる、配送に時間がかかるので「大量に作るが、調理時間は短い」のがセンター方式の特徴である等々、あまりに問題点・デメリットが多いことが明らかになりました。小学校で自校調理の給食を食べ、中学生になってからセンター給食を食べた児童からも不満の声が出され、残菜が多量に出ることも問題になっています。こうしたなか、大規模センター方式から自校調理方式に切り替えている自治体が増えていることに注目すべきです。

また、栄養士の数について、文科省の配置基準を基に試算すると、現在の小学校全校7万7千食に栄養士は約 80 人配置されているのに対し、大規模センター中心の中学校給食は3万3千食に栄養士がわずか約 10 人しか配置されないことも重大問題です。
 
(5) わが党の最新の市民アンケートで、実施手法として、自校調理方式を望む市民世論が強いことが明らかになりました(緊急提案(1)より)

  わが党議員団が現在実施中の市民アンケート(10 月9日時点の回答数 4900 通余)では、「中学校給食で、やってほしいことは」との設問で、実施手法について「大規模センター方式を」との回答は最低の3%だったのに対し、「自校調理方式」は 16%です。自校調理方式を望む世論の強さが示されています。

市民が希望する給食の方法と、いま市がやろうとしている給食の方法が、かなり違う方向に向かっていることを自覚し、この世論を受けとめるべきです。
 
(6) 中学校給食推進会議・会議録から、「実施時期、先にありき」の進め方が浮き彫りになりました(緊急提案(8)より)

中学校給食推進会議の議論(会議録)では、どうすれば子どもにとってよりよい給食が実施できるのか、そのための実施方法をどうすべきかを慎重に検討した様子がありません。また、推進会議の会議録によれば、先に指摘したような大規模センター方式の様々な問題点を調査検証した議論も見当たらず、大規模センター方式を基本にした方針案が出されたことは重大です。
 
(7) 保護者説明会は参加者が圧倒的に少なく終わり、行政側に市民の意見・要望をくみ上げ、生かす姿勢がないことは問題です(緊急提案(9)より)

市教委中学校給食推進室は9月 15 日から 26 日にかけて各区内1ヵ所、市民館など大ホールで保護者説明会を開催しましたが、わが党が「小学生やそれより小さい幼児などを抱えた保護者が夜7時に市民館大ホールまで行くのは困難です」と緊急申し入れをした通り、どの会場も 20 人~40 人程度で、7会場の総定員 7152 人に対して延べ参加者数はわずか 250 人(定員に対する参加率 3.5%)にとどまりました。形式的に保護者説明会をやったという既成事実をつくっただけと言われても仕方ない状況です。ここにも「実施時期と大規模センター方式、先にありき」の無理な進め方の弊害が現れています。保護者・市民の意見をくみつくし、よりよい給食を実現しようとする姿勢が欠如していることは問題です。
 
以上、この間に明らかになった問題点をふまえて、子どもたちにとってよりよい中学校給食を実現する立場から、市長並びに中学校給食推進会議に対し、次の要望項目を検討・実行するよう求めます。

よりよい中学校給食を実現するための5つの要望項目

(1)  大規模センター方式から自校調理方式に切り替えている自治体(さいたま市、高崎市、世田谷区等)の取り組みを現地視察調査し、大規模センター方式の問題点・心配事をあらゆる面から慎重に調査研究し、推進会議・部会で検証作業を行なうこと。弊害・問題点が大きい大規模センター方式を基本にした現在の実施方針は再検討すること。
 
(2)  子どもにとってよりよい給食として優位性が明らかな自校調理方式を基本に位置づけ、当面、今回の全校調査や現在の増築計画等で実現できる可能性が明らかになった 10 数校は自校調理方式で実施するよう実施手法を再検討すること。同時に数年後の既存施設の改修、改築時に自校調理場を整備する学校を増やしていく年次計画を立てること。あらゆる可能性・知恵と工夫を尽くしても、なお、自校調理方式の導入が現状では不可能な学校については比較的弊害が小さくなる中小規模のセンター方式により実施することを否定はしない。その場合も長期計画で順次自校調理方式に切り替えていく。
 
(3)  自校調理方式の事業費試算の過大見積もりについて、国の基準面積と実際の生徒数規模で正確に試算をやり直し、自校調理方式で実施した場合の事業費見込額を大幅に圧縮し、推進会議として実施手法について全体の制度設計を改める検討作業を行なうこと。上記(2)の通り、自校調理方式を最大限に増やしたうえで、自校調理方式と中小規模センター方式の併用制で実施する場合の事業費見込額も正確に試算すること。
 
(4)  中学校給食を享受することになる子どもたちと大多数の保護者にきちんと説明が行き届き、意見をくみ尽くすために、せめて中学校区単位(その学区の小学校も対象)あるいは小学校区単位で学校体育館も活用して、土日も含めて保護者が歩いて行ける範囲で説明会を開催すること。同時に、「自校方式か、大規模センター方式か」について一度も聞いていない実施手法に関して保護者の意向・希望を聞く保護者アンケートを小中学校で行ない、その結果を実施手法の再検討に生かすこと。(アンケート項目では、自校調理方式の場合は当初の実施予定より遅れる可能性もあることも率直に伝える)
 
(5)  以上の調査検討・検証作業を緊急に実施するため、「実施時期、先にありき」「大規模センター方式、先にありき」の現在の進め方そのものを今一度、立ち止まって見直すこと。そのため、11 月中の実施方針の決定にはこだわらないこと。

以上