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2015年7月31日

住民福祉の増進を明記すべき~石田議員が総合計画素案の代表質疑


SONY DSC 7月29日の川崎市議会で、「新たな総合計画素案」について全員説明会がおこなわれ、会派を代表した質疑が行われました。日本共産党からは石田和子副団長(高津区)が代表して質疑しました。

川崎市の「総合計画素案」は、今後30年程度を展望し、川崎市がめざす都市像やまちづくりの基本目標、基本政策をしめす「基本構想」、概ね10年間程度の長期計画として政策の方向性を策定する「基本計画」、2年程度の期間を対象に政策体系別の計画などをさだめた「実施計画」で構成するとしています。

「総論」部分では「計画策定にあたっての基本認識」として、少子高齢化や産業経済を取り巻く環境変化などをとりあげ、計画の推進に向けた考え方などを記載しています。そして「基本構想・基本計画・実施計画に掲げる目標および指標」では5つの基本政策と区計画を記載しています。

今回の全員説明会では質疑だけで、「基本構想」と「基本計画」の採決は12月議会でおこなわれる予定です。

石田議員は「総合計画素案」について、「住民福祉の増進」を明確に盛り込むべきであり、巨額の都市基盤投資をみなおし、住民の切実な要求を実現する市独自の施作の展開・充実を盛り込むよう求めて質問しました。基本政策について、福祉の増進の施策を柱にすべきこと、生活弱者への視点をしっかり据えること、貧困から子供を守る視点や学校での人格形成・成長発達を図る視点を要求。中小企業活性化への具体的対策をもとめ超過密な都市づくりを批判、市政運営の基本に主権者市民を据えるよう求めました。

石田議員の初回質疑原稿は次のとおりです。
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基本構想について

私は、日本共産党を代表して、川崎市総合計画素案について、質疑を行います。
最初に、まちづくりの基本目標ですが、10年前の基本構想では、「民主主義のもとでの人権の尊重と平和への貢献を構想を貫く根本的な理念としたうえで、市民本位の自治のまちづくりをすすめること」を基本方針としてはじめに位置づけていました。今回の基本構想ではこのような言葉は見当たりません。なぜこのような文面が入っていないのか、さらに憲法に基づく、自治体の基本的役割をうたった地方自治法第1条「住民福祉の増進を図ること」を明確に盛り込むべきです、市長に伺います。
 前回の基本構想の期間は10年でした。「急速な社会経済環境の変化において適切に対応し計画の実効性を確保する必要がある」ことが理由でした。情勢がめまぐるしく変化するという状況は今後も続くと思います。そのようななかでどうして30年先まで、議会に議決を求めて決められるのか、市長にうかがいます。
 今回、市民車座集会ということで市民への説明会は1回だけです。全市民に始めて知らされる総合計画素案です。全市民向けによりきめ細かく説明会を開くべきです。30年にわたる総合計画をなぜ、1回だけの市民説明会で済ませようとするのか、前回は各区で開催しました。今回も各区で実施すべきです、市長にうかがいます。
10年前の総合計画は、「低成長経済への移行や少子高齢化への急速な進行」を計画策定の趣旨にあげていました。当時の予測では、人口は2015年の138.9万人をピークとし、その後減少に転換するとしていました。しかし、人口推計そのものはこの10年間をみても実態と予測とは大きく違っていました。今回、日本全体の「少子高齢化のさらなる進展、人口減少への転換、生産年齢人口の減少」を強調しています。 
川崎では、将来人口推計をみても2030年152万人をピークに人口減少へと転換するといいますが、30年後の2045年推計で146万人、今年2015年が147万人ですから30年後は現在より1万人少ないだけです。若い世代の流入も多い川崎市をなぜ日本全体の少子高齢化と一緒の構図に当てはめなければならないのか市長に伺います。
今後の財政運営の基本的な考え方をみても、川崎市の市税収入は、人口増などによる納税者数の増加、景気回復による所得の増加などによって堅調に推移しているとしています。昨年8月に今後10年間の収支見通しで収支不足を1633億円~3941億円と試算していましたが、今年度予算の中長期的収支見通しでは、収支不足を2016年度は124億円、2017年度は187億円、2018年度以降は不交付団体に移行する予定であり、さらに、2019年度以降、収支不足は解消するとまでいっています。どこをみても財政が厳しい、という言葉はでてこなくなりました。
なのに、市民の切実な要求を実現する施策の展開はほとんどありません。
今回の総合計画に貫かれているのは、自助・共助(互助)の強調です。
いまでも市民は可能な限り、「自助・共助」で努力しています。「公助」については市民は相当覚悟をして受けている、だからこそ最後のセーフティネット・生活保護の捕捉率をみても日本が諸外国に比べて一段と低い水準になっているのではありませんか。「公助」としての自治体のナショナルミニマム保障の支えがあってこその自助・共助です。市独自の福祉施策の充実こそ求められているのではないでしょうか。
それどころか、今後の行財政改革のなかでスクラップ・スクラップアンドビルドとわずかに残された市民サービスの削減を行い、「財源確保に向けたとり組みの推進」として、受益者負担の適正化や公平性の観点からと使用料、手数料のさらなる負担を市民に強いようとしているのは納得いくものではありません。市長にうかがいます。
今回10年後の「成果指標」なるものが重点政策ごとにだされています。しかし、その内容は「地域包括ケアシステムの考え方の理解度」「わくわくプラザの登録率」「駅乗車の人員数、駅勢圏人口」「環境に配慮した取り組みが進んでいると思う市民の割合」とか、それ自体何を意味するのか、さらに感覚的な成果指標が目につきます。もっと、具体的に成果目標を示すべきではないでしょうか、市長に伺います。 
「計画策定にあたっての基本認識」で「将来を見据えて乗り越えなければならない課題」の1つとして「都市インフラの老朽化」を挙げています。そして「今後、整備費・維持管理費など中長期にわたる財政負担の増大」を強調し、「公債費がこれまでの公共施設の整備などに活用した市債の償還のため、毎年700億円を超える規模で推移している」ため、「財政の硬直化が一層進んでいる状況」と結論付けています。
それなのに、現在計画されている臨港道路東扇島水江町線、羽田連絡道路をはじめ、新等々力大橋、国道357号線と駅前拠点開発など含めれば数千億円単位に上る都市基盤整備は、投資的経費の見直しや市債発行の抑制という視点から何も見直さないというのは、論理が矛盾しているのではないでしょうか、市長に見解を伺います。
そもそも、総合計画の策定は、財政収支推計を元に行うべきものではないでしょうか。今回は、新たな総合計画などを踏まえて財政収支推計を作成するとしていますが、財政収支推計がないのに、どうして30年間の行政運営の計画が策定できるのか。本末転倒ではないでしょうか。市長に伺います。

次に基本政策について伺います。

基本政策1について

基本政策1、生命を守り生き生きと暮らすことができるまちづくりの-4「誰もが安心してくらせる地域のつながり・しくみをつくる」についてです。
新たな総合計画策定に向けた市民アンケート結果では、「高齢者や障がい者が生き生きと生活できる環境が整っていると思うか」に対し、本市は20政令市中14位、「社会保障制度に基づく市の取り組みが市民の経済的な不安の解消に役立っていると思うか」16位、「安心して医療が受けられると感じるか」は18位で,いずれも低い評価です。この実態を直視し、福祉の増進の施策を柱にすべきですが市長に伺います。
基本政策を立てる方向性が地域の支え合いの仕組みづくりに特化しています。高齢者が安心して暮らしすみ続けられる川崎にするには介護が安心して受けられる基盤整備の拡充が必要であり、経済的に苦しい生活、介護度が進んだ独居くらしの高齢者等への福祉など弱者への視点をしっかり盛り込むべきですが市長に伺います。すべての障害者の人権を全面的に保障するために、障害者権利条約の全面実施の立場に立ち、社会的な条件を整備する公的な責任を果たすことを柱に盛り込むべきですが、市長に伺います。

基本政策2について

基本政策2「子どもを安心して育てることのできるふるさとづくり」では、先に述べたアンケートの調査は、「子育て環境が整ったまちだと思うか」の回答は20政令市中19位,ワースト2位です。政策の方向性として「子育て家庭を地域社会全体で支え・・・地域で安心してすこやかに成長できる仕組みづくりを進める」としていますが、このような取組で少子化を克服できると考えるのか伺います。子どもの貧困が子どもの成長発達を阻んでいます。2013年子どもの貧困対策法が成立しましたが、自治体においても子どもの成長に応じた様々な段階で『貧困』から子どもを守り、救い出す施策が求められています。この視点をしっかり盛り込むべきですが伺います。
政策2-1「安心して子育てできる環境を作る」についてです。安心して子育てができるためには、子育て世代の実態を直視し、ニーズ調査で最も高い要望である子育ての経済的負担の軽減・小児医療費助成制度、隠れ待機児童といわれる「入所保留児ゼロの保育事業」「私立幼稚園保育料補助」の拡充を掲げるべきですが伺います。
政策2-2「未来を担う人材を育成する」についての政策に、学校での豊かな学びをとおして人格の形成と成長発達を図る視点がありません。
全国最悪水準で推移している本市の不登校児童の発生を減らしていく方策として、根底になる教育環境の改善に傾注すべきです。教育委員会が神奈川県に提出した「平成26年度少人数学級設置者研究報告書」は、「各学校から少人数学級の実施により、担任の指導や配慮が行き届きやすく、学習指導及び児童生徒指導の場において、多面的にきめ細かく児童生徒が関わることができたとする報告が多くあげられた」としています。ひとりひとりに行届いた教育を行なうことの出来る教育環境をしっかり整備するために少人数学級の全学年への取組を基本構想の政策の柱に掲げるべきですが市長に伺います。全学校トイレの快適化,老朽化対策、特別教室のエアコン設置,循環プールの設置要望など教育環境の改善は早急に図るべきです。
本市は、学校施設の老朽化対策、教育環境の質的向上、環境対策を行なう再生整備と予防保全を基本とし、長寿命化の推進による財政支出の縮減と平準化を図る為に長期保全計画を策定し、目標耐用年数を80年に設定し、2014年度から概ね10年間で計画策定時築21年以上の学校施設の長寿命化の工事を行おうとしています。しかし、現状でも早急な改善が必要な学校が多数存在します。子どもの教育環境の改善を早期に進めるべきです。10年計画の前倒しを基本計画の柱に据えるべきと考えますが伺います。

基本政策4について

基本政策4「活力と魅力溢れる力強い都市づくり」についてです。
基本施策4-1-3「中小企業の競争力強化と活力ある産業集積の形成について」ですが、計画の総論の中で、事業所数と従業員数の減少を指摘していながら、その対策が従来の枠の範囲である「知的戦略」「マッチング」「商談会」などの支援にとどまっており、実際、中小企業の減少をとどめることができていません。それなのに、減少し続ける中小企業への更なる対策が必要という視点がありません。しかも、「新たな産業の創出」「成長分野への支援」が強調されながら、臨海部の活性化については、オープンイノベーションの拠点形成を目指すとしながら、どれだけの中小企業が活性化、高度化したかという指標がないということは、これらの施策では、市内中小企業の活性化と高度化につながらないということを暗に認めているのではないでしょうか、市長の見解を伺います。雇用の7割を占め、市内経済の主役である中小企業の振興を基本とする条例を検討している本市として、中小企業の減少に歯止めをかけ、中小企業を活性化させるためにも、中小企業の現状の課題に対する具体的な対策を盛り込むべきです。市長の見解を伺います。
「魅力ある都市拠点を整備する」という政策についてですが、これまでの駅前周辺の人口過密型の都市基盤整備について、「地域の活力や賑わい、さらには大きな経済効果を生み出している」という評価し、しかも、成果指標として「駅乗車の人員数」掲げていますが、建物の高度化による風害の問題、急速な都市化による人口の過密化が、子育て、教育施設や医療、福祉施設の需要の急激な増大をもたらしていることについては、まったく取り上げていません。なぜ、こうした課題を考慮しないのか市長に伺います。
しかも、30年後の未来を考えたときに、これまでも都市型集合住宅において、高齢化が著しい事態を生んでいることを考慮すれば、急激な都市化と人口過密化の弊害は、極めて深刻な将来への課題をもたらすことが予想されているこのような都市計画は、「広域調和型まちづくり」などと評価せず見直すべきと思いますが、市長に見解を伺います。また、「駅勢圏人口」を指標としているということは、駅郊外の過疎化と高齢化に対して、必要な交通バリアフリーの強化など、住み慣れたところでいつまでも住み続けるということは検討せず、先祖代々生まれ育った町、住み慣れた街を捨てて駅前拠点に住み替えるということを前提にしているのか、市長の見解を伺います。

基本政策5について

基本政策5、誰もが生きがいを持てる市民自治の地域づくりについてです。
 前回の基本構想は、人権の尊重と平和への貢献を、構想を貫く根本的な理念としたうえで、市民本位の自治のまちづくりを進めることを基本方針としていました。
 こうした考えのもと、「自治と協働のしくみづくり」では、「市民がまちの主役として自ら決め、実践する」「自ら治める」ことが自治であるとし、行政運営のあり方について「市民の信託に基づいた行政の運営」「市民主権の尊重」「市民自治の理念の実現」「市民権利保障」などの視点が貫かれていました。
 今回の基本政策5-1「参加と協働により市民自治を推進する」では、直接の目標が「市民の支え合いを中心としたコミュニティ形成を支援する」とされ、市民自治の内容が著しくゆがめられてしまっています。「市民の支え合いを中心としたコミュニティ」をどのように形成していくかは市民が自主的に決めることであって、市民自治の問題とは関係がないものです。まして、その成果指標にあるように、「町内会・自治会加入率」が行政運営の指標とされるなどは論外です。
 本来、住民自治、市民自治とは、国における主権者が国民であるのと同様、地方自治体の主権者は住民・市民であり、市政運営の基本は主権者である住民・市民から付託された権限を行使するものだということを意味します。
市政運営の基本に主権者市民を位置づけるべきですが、市長に伺います。また、「参加と協働により」「市民自治を推進する」というなら、市の施策に対する市民の声を真摯に反映する仕組みの充実が求められるのではないでしょうか。市長に伺います。

以上で質問を終わります。