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2015年11月26日

一部の川崎市立中学校で行われている「自衛隊の体験入隊、職場体験学習」の自粛を求める申し入れを、渡邊教育長に提出


PB25105511月25日、日本共産党川崎市議団は11名全員で教育委員会を訪れ、「安保法制(戦争法)によって「殺し殺される」軍隊へ危険性が格段に高まった自衛隊を他の職業と同列視せず、川崎市立中学校の一部で行なわれている「自衛隊の体験入隊、職場体験学習」を実施しないことを求める申し入れ」を渡邊直美教育長に手渡しました。懇談の冒頭、市古映美議員は、「総合的な学習の時間」の内容については教育課程の一部であり、その編成権は学校にあることから、学校が自主的に判断するものという基本を踏まえたうえで、あまりに重大な問題を多く含んでいるために、教育委員会に申し入れることにしました」と述べ、申し入れの要点を説明しました。

PB251071市教委の調査ではこの5年間に、川崎市立の中学2年生が宿泊を含む自衛隊の体験入隊、職場体験学習に延べ169人も参加。そのほとんどが親の承諾もなく参加させられていることが明らかになっています。申し入れでは、特に3つの問題を指摘し、命を何よりも大切にし、平和な社会をつくる人間を育てるという教育上の立場から容認することはできないと述べ、教育委員会として、これらの重大問題があることを川崎市立中学校の校長及び教職員にしっかり伝え、各学校が自粛するよう促すよう求めました。

申し入れの本文は以下の通りです。

安保法制(戦争法)によって「殺し殺される」軍隊へ危険性が格段に高まった自衛隊を他の職業と同列視せず、川崎市立中学校の一部で行なわれている「自衛隊の体験入隊、職場体験学習」を実施しないことを求める申し入れ

自衛隊神奈川地方協力本部の広報紙によれば、この間、川崎市立中学校の一部が「総合的な学習の時間」で、自衛隊の「体験入隊、職場体験学習」に多くの中学生を参加させていたことが明らかになりました。その後の市教委の調査で、この5年間では9校の中学校で、分かっているだけで延べ169 名もの中学2年生が、県内外の自衛隊基地・駐屯地・工科学校等で、施設・設備の概要説明、施設内の見学・生活体験、職業体験などを受けていたことがわかりました。
実施に至った経過については、「自衛隊(溝の口募集案内所・川崎出張所等)からの働きかけ」が3校、「生徒の希望(アンケート等)をもとに体験場所として取り上げた」が5校、「当時の担当者が異動しており詳細が不明」が1校とのことです。
自衛隊広報紙では、そのうち長沢中学校(今年1月15・16日の2 日間、生徒20名)は東部方面混成団(陸自)で居住区の見学や基本教練を体験し、第1高射群第2高射隊で軽装甲機動車(小銃による攻撃にも一定程度耐えられ、5.56ミリ機銃弾や対戦車誘導弾も装備可能)などの装備品を見学。大師中学校(今年7月23日、生徒15名)は海上自衛隊第2術科学校でガスタービンエンジン及びディーゼルエンジンの操縦体験を行なったと報じています。

こうした体験入隊は全国的にも問題になっており、自衛隊岩手地方協力本部による「体験学習」では、「戦車の写真も撮れます」と戦車を間近で見せるだけでなく、「装備品見学とあわせて戦車・車両の体験搭乗」も行なわれています。新日本婦人の会の全国調査では、「子どもの興味で安易な体験はとても心配」(北海道旭川市)、「まだ社会のことを十分理解していない青少年を兵隊というところに慣れさせていくのは、戦争を悪と感じる心を麻痺させているみたいだ」(茨城県古河市)など、保護者の声を紹介しています。自衛隊の武器・装備品の本来の目的と機能は、戦場や戦闘行為で使用する「戦争の道具」であり、それらを子どもたちに触れさせることが「学習」「職場体験」の名で行なわれていることは許せません。

中学校における自衛隊の「体験入隊、職場体験学習」には、いくつもの重大問題があります。
第一に、国民の中では自衛隊の存在に対して「違憲」「合憲」の意見の相違が存在し、小中学生の保護者の中でも様々な考えがあります。仮に「生徒の希望」があっても、子どもの「自衛隊の体験」に反対や懸念を持つ保護者も多数いることに配慮が欠けているということです。

第二に、いま重大なことは、昨年7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定と今年9月に強行採決された「安保関連法制」によって、自衛隊が実際に戦闘地域・戦場に向かい、戦死者が出る可能性が現実化し、殺し殺される軍隊へと危険性が格段に高まったということです。
集団的自衛権の閣議決定について内閣官房が作成したQ&Aでも、「今回の閣議決定で、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ血を流すリスクがこれまで以上に高まるのではないか?」との設問に対して、「自衛隊は『事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえること』を宣誓して任務にあたっています」と答え、同Q&Aは、「殺し殺されること」も「世界中のどこにでも行って戦う」ことも否定していません。
すでに北海道の陸上自衛隊北部方面隊は2010年から、隊員(約3万8千人)に対して「家族への手紙」という名の遺書を書かせ、同年夏、北部方面総監は、遺書を書くことは「命を賭す職務に就く軍人としての矜持である」と訓示しています。これらの遺書は15歳(中卒)や18歳(高卒)で入隊する未成年者にも強いられており、そのことを保護者も、送り出した教員も知らされていません。過去の戦争の反省から「教え子を再び戦場に送らない」という戦後の教育者の原点が根底から踏みにじられる重大事態であることを認識すべきです。

第三に、自衛隊は他の一般の職業とはまったく異なる存在ということです。自殺率も高く、隊内のいじめ問題なども相次いで報じられ、労働権も保障されず、家族への遺書まで書かされ、安保法制(戦争法)によって世界中の戦闘地域で殺し殺される任務を強いられる危険性が高まった自衛隊は、他の一般の企業や職業と同列に扱うことはできません。それを「職業選択の一つ」と言って中学生に体験させることは、教育者としての見識が厳しく問われます。なお、東日本大震災や北関東の豪雨災害での災害救助活動などで活躍する自衛隊の姿がメディアで報じられましたが、自衛隊の第一の任務は国防、戦場での戦闘行為であり、災害救助活動は二次的な任務です。

防衛省・自衛隊の側は、単なる「学習」や「職場体験」のために協力しているのではありません。それは自衛隊の広報紙が、長沢中学校の体験入隊では「参加した生徒からは『自衛隊に対し一層深く興味を持った』などの声が聞かれた」「溝の口募集案内所は、今後も積極的に『総合的な学習の時間』を支援し、募集環境が厳しさを増す中、募集基盤の拡充に努めていく」と報じ、大師中学校の職場体験学習では「これからもっと勉強を頑張って絶対自衛官になりたい」との参加者の感想を紹介し、「川崎出張所は今後も担当区内の学校に『総合的な学習の時間』への参加を働きかけ、自衛隊に関心を持つ生徒の支援を積極的に行なっていく」と報じているように、総合的な学習の時間」を自衛官募集業務の一環として最大限に利用していることは明らかです。
東京新聞2015年10月24日付は、自衛隊各部隊の将来の現場を支える一般曹候補生の2015年度の応募者が前年度比約2割減で、過去9年間で最少となった、募集期間は8月1日から9月8日で、安全保障関連法の国会審議時期と重なると報じ、記事の中で軍事ジャーナリストの前田哲男氏は「応募者が2割も減るのは安保法の影響と考えるのが自然」「人道復興支援や救助活動から普通の軍隊に近づく。本人や家族、友人の不安を反映したのだろう」と指摘しています。こうした状況下で今後益々、自衛官募集業務の一環として「総合的な学習の時間」を利用した川崎市内の中学校・生徒への働きかけがいっそう強まることが心配されます。

これまでのように安易に自衛隊の「体験入隊、職場体験」を実施することは、命を何よりも大切にし、平和な社会をつくる人間を育てるという教育上の立場から容認できるものではありません。全国に先駆けて「核兵器廃絶平和都市宣言」を発信した川崎市の教育者として、恒久平和と川崎の子どもたちの命を守る、教え子を戦場に送らないという毅然とした立場に立つべきです。
以上のことから、川崎市教育委員会として、これらの重大問題があることを川崎市立中学校の校長及び教職員にしっかり伝え、今後、自衛隊への「体験入隊、職場体験学習」を各学校が自粛するよう促すことを強く求めます。