私たちの提案(2023)

第3章 実現めざし全力をつくします―日本共産党の重点政策

9、税金ムダづかい、不要不急の大規模開発をやめさせます

福田市長は市長就任後の新年度予算では、港湾関係だけで特別会計合わせて150億3700万円余の超大型予算を組み、前市長以上に大規模事業を推進する姿勢を打ち出し、実施してきました。

福田市長が就任後、一気に事業を本格化したのが臨海部の2つの巨大な橋の建設事業です。一つが総事業費540億円をかけて2つの埋立地.東扇島と水江町を繋ぐ臨港道路東扇島水江町線です。もう一つが概算事業費300億円をかけて殿町と羽田空港側を繋ぐ羽田連絡道路の整備です。2本の橋で840億円、こんな莫大な費用がかかる不要不急の大規模公共事業を同時に進めたことは、川崎市政の歴史上かつてありません。

東扇島堀込部埋立事業に240億円

2014年に改定された川崎港港湾計画は、川崎港コンテナターミナルの貨物取扱能力について、およそ10年後に40万TEUに増加するとの見込みを前提に、第2・第3バースの建設、コンテナ保管用地の拡張など大規模な整備計画を打ち出しました。その中に盛り込まれたのが「東扇島堀込部埋立土地造成事業」で、概算事業費は240億円、事業費すべてを建設発生土受け入れ料金で賄うとしていました。ところがその後、埋立事業を200億円、基盤整備費を40億円とし川崎市が負担すると変更。そして、埋立事業費をリニア新幹線の建設発生土で賄うと発表。しかし、200億円とした積算も不明で200億円を超えた場合の責任はどこが負うのかなど不明なまま。「コンテナ関連用地の不足」は40万TEUに増えるという予測や冷凍倉庫の代替地の確保、完成自動車のストックヤードなど埋め立てる理由は3つとも破綻しています。

市民にとって必要のない二つの橋建設に840億円

「臨港道路東扇島水江町線」は、「コンテナ輸送路」「東扇島の労働者の避難路」「津波から避難可能な高台になる」「東扇島の海底トンネルの渋滞対策」など、次々出てきた「つくる理由」について、議会質疑のなかで矛盾と破たんが明らかになりました。

「羽田連絡道路」も、福田市長は当選直後から建設推進の立場を表明。国が推進の立場を打ち出したことから、「早期実現に全力を挙げる」「菅官房長官のリーダーシップに感謝したい」「地元としてやれることは最大限に汗をかきたい」と、2020年東京オリンピック開催までに間に合わせるため補正予算や目的外流用まで行なって遮二無二推進してきました。市民生活にとっての必要性について、「災害時の住民の避難路」「緊急輸送路」「緊急交通路」「渡河ルートの多重化」等々、市長や市当局の説明がコロコロ変わり、最近では、市民生活にとっての必要性は何も説明できず、「キングスカイフロントの価値や魅力を高めるなど、本市の力強い産業都市づくりの実現に不可欠な道路」などしか言えなくなりました。こんな理由で、ばく大な税金・公費を浪費し、貴重な自然の生態系(多摩川河口干潟)を壊す橋を建設するなど、税金ムダ遣い、川崎市の歴史に汚点を残す公共事業といわねばなりません。

前市長が凍結していた高速川崎縦貫道路整備も再開

車がほとんど通らないといわれる高速川崎縦貫道路。2014年度までにかかった総事業費は距離にして70%の進捗段階で6293億円(うち市負担分644億円)に達し、当初見込み額の2・5倍以上、1メートル1億円以上もかかっています。2期区間まで含めると総延長23㎞を結ぶというもので、このまま進めたら最終的には何兆円に膨らむかわかりません。阿部前市長時代には事実上凍結されていたこの事業を、福田市長は就任直後から推進の立場を明言し、実行に移してきました。

阿部前市長が「特区を経済成長の起爆剤に」と莫大な税金を投入してきた京浜臨海部国際戦略総合特区。いすゞ跡地を23億円で購入したのを皮切りに、「ものづくりナノ医療イノベーションセンター」事業が国の補助採択されたことを受け、URから16・4億円で購入。推進の立場を継承した福田市長は、2014年に「国家戦略特区」に指定されたことを受け、川崎を「企業が一番活動しやすいまちに」すると発言。「医療等の国際的イノベーション拠点整備」として、富裕な外国人への高度な医療の提供、病床規制緩和、保険外併用療養の拡充も盛り込みました。

国際戦略総合特区の取り組みにより得られる経済効果について、川崎市の試算では、5年後の経済波及効果を約3千億円、20年後の雇用創出23万人、市場創出額14兆円としていますが、裏付けとなる根拠、資料はほとんどありませんでした。

市民に必要のない川崎アプローチ線の整備やめよ

川崎市は新たに『臨海部ビジョン』の交通機能強化プロジェクトとして鉄道整備「川崎アプローチ線」計画を発表。南武支線・川崎新町~川崎駅間の新設などを含め総延長3・3㎞、総事業費は少なくとも300億円。その整備には旧貨物線の線路跡地を活用するとしていますが、鉄道新設予定ルート周辺には民間住宅や、4年前に移設されたばかりの視覚障害者情報文化センターや日進町こども文化センター、高齢者等の福祉施設が入る「ふれあいプラザかわさき」が建っており、議会での質疑で、市はそれらの立ち退きを否定しない答弁をしました。

事業費についても、国土交通省の交通政策審議会で示された総事業費300億円は、国が「大づかみで把握するための建設費」で、「路線延長に一律単価を乗じて簡易的に算出した」もので、それより大きく膨らむ可能性があります。

交通政策審議会の陸上交通分科会鉄道部会は2016年7月15日、「川崎アプローチ線新設の課題」として、「収支採算性に課題があるため、関係地方公共団体等において採算性の確保に必要な需要の創出につながる沿線開発の取組等を進めたうえで、貨物輸送への影響等も考慮しつつ、事業計画について十分な検討が行なわれることを期待」すると指摘。まちを分断して赤字になる鉄道を整備し、その需要を創り出すために周辺開発も推進するという、際限のない大規模事業を進めることになります。

市は「アプローチ線」整備の理由として、「鉄軌道については、JR南武支線が脆弱であることから輸送力増強を含めた改善が必要」としていますが、現在でも南武支線は上下線で1日78便あり、市営バスは川崎駅への同様の路線が平日1日296便も走っており、市営・民間を合わせてバス路線で十分カバーされています。市民生活には既存の路線で十分であり、わざわざ最低でも300億円もかけて整備する必要のない鉄道です。市は「アプローチ線」整備を正当化するために周辺交通について「マイカー通勤の割合が高く、公共交通への転換を促す必要」があるとしていますが、その一方で同じ川崎区内では、もともと羽田空港へのアクセスは鉄道(公共交通機関)が充実しているのに、わざわざマイカー利用を増やすことになる「羽田連絡道路」を整備しており、マイカー通勤から「公共交通への転換を促す」というのは政策的にあまりに矛盾しています。まさに不要不急の大規模事業(アプローチ線)先にありきで、つくる理由は後付けの計画といわねばなりません。

カジノ誘致、富裕な外国人専用のための医療ツーリズム病院の許可も

さらに2018年、市長は臨海部にカジノ誘致を検討することを明らかにしました。そのうえ、富裕な外国人専用の医療ツーリズム病院まで開設許可する方向です。医療ツーリズム病院を開設する葵会は進出の理由として、「羽田空港と川崎区殿町との間に連絡橋が建設、2020年完成となり世界に一番近い位置となる」「研究機関・新産業の集積する殿町国際戦略拠点に近接している」ことを挙げています。

結局、福田市長が市民への説明ができず破綻しても、理由がコロコロ変わっても、臨海部の大規模事業にのめり込んできたのは「企業にとって一番活動しやすい川崎」を実現するためだったと言わざるを得ません。

総事業費1700億円にも

これらの大規模事業費は、臨港道路水江町線に540億円を含む川崎港湾計画で約870億円、羽田連絡道路建設に約300億円、東扇島堀込部埋立事業に約240億円、川崎アプローチ線事業に約300億円など、総額約1700億円にものぼります。

一方、必要のない「行革スクラップ&ビルド」で廃止・縮小された「福祉電話相談事業」「高齢者外出支援サービス事業」「高齢者住み替え家賃助成事業」の効果額はわずか300万円です。まさに税金の使い方が間違っているといわなければなりません。

市民生活にとって必要性がなく、市財政圧迫の要因になりかねない、不要・不急の大規模事業はやめ、税金の使い方を市民のくらし・福祉を重視する投資型に転換すべきです。

《お約束》

  • 税金ムダ使い・不要不急の大規模開発・公共事業を中止・削減し、税金を自治体本来の使命である福祉・くらしの充実を最優先に使います。
  • 川崎港コンテナターミナルの大拡張計画など川崎港の開発だけで今後870億円(臨港道路水江町線を含む)もかかる国際コンテナ戦略港湾計画から川崎市は撤退し計画を中止します。
  • 東扇島堀込部埋立土地造成事業は根拠も崩れ、また、市民にとって説明も成り立たないことから中止します。
  • 総事業費540億円の臨港道路東扇島水江町線は市民生活にとって必要性はなく、新たな自動車公害を呼び込む道路であり、建設を中止します。
  • 総事業費300億円の羽田連絡道路建設計画は中止します。
  • 高速川崎縦貫道路建設は1期残工事も2期工事も中止します。
  • 川崎アプローチ線整備を中止します。
  • カジノ誘致は行なわない。
  • 医療ツーリズム病院の開設中止を求めます。
  • リニア新幹線の中止を国とJR東海に求めていきます。