議会報告

2016年12月19日

規制緩和された小杉1・2丁目の地区計画の変更に反対を表明~代表討論


DSC002202016年第4回川崎市議会定例会の12月15日、片柳進議員(川崎区)が日本共産党を代表して、今議会の諸議案について代表討論を行いました。

マイナンバー関連の議案や、県費負担教職員の給与負担等の移譲に伴う関係条例の整備に関する条例の制定、規制緩和された小杉1・2丁目の地区計画の変更などに、反対を表明しました。

片柳議員の討論予定原稿は次の通りです。

代表討論

私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。

議案第167号川崎市情報公開条例等の一部を改正する条例の制定についてです。

本条例案は、いわゆるマイナンバー制度の運用で「自治体が行う独自利用事務の特定個人情報の提供に係る規定が追加された」ことによるものですが、日本年金機構の情報漏えいの事件もあり、導入後もマイナンバーを利用した詐欺事件が起こるなど、国民、地方自治体、中小企業など幅広い層から、不安や疑問の声が出ています。
わが党は、マイナンバー制度の導入に反対し、マイナンバーの適用範囲の拡大の危険性を指摘してきました。今回の条例案は、まさに自治体が行う独自利用事務の追加に関するものです。総務委員会でも市の独自事務は、市営住宅、小児医療費助成、重度障害者医療費助成など5分野119事務にも及ぶこと、利用範囲をコンビニでの利用にも拡大することが明らかになりました。さらに個人番号カードの空き領域を使った利用範囲の拡大が予想されます。マイナンバー制度が従来の住基ネットと違うのは、情報の量や適用範囲が格段に広く、膨大であることです。情報範囲が広がれば広がるほど漏洩した際の被害も甚大になり、狙われる危険性も高まります。
マイナンバー制度は、実施を中止しても住民生活にはなんら支障はない制度です。
昨年の総務委員会の答弁では、「個人番号カードの取得は任意」で、マイナンバーの提示がなかったとしても行政手続き上は問題がなく、「個人番号自体がなくても、本人確認があれば今までどおり行政手続きはできる」ということでした。これらの点については市民に周知徹底することを要望します。
以上の問題点があることから、本条例案には賛成できません。

議案第188号二要素認証システムの導入に伴うサーバ機器等の取得についてです。

本議案は、マイナンバー制度導入に伴い、地方自治体の情報セキュリティ強化の中で、生体認証とID・パスワード認証を用いたシステムを導入するためのものです。
 総務委員会では、このサーバは、マイナポータルにつなげるために地方自治体が設置する中間サーバで、情報の分散化を目的とするものということですが、他機関から個人情報をコピー、集約化されて保存しているということでした。確かに個人情報は符号化されているものの、ここがサイバー攻撃を受けた時には大量の情報が一挙に洩れる危険性があります。
 わが党は、マイナンバー制度の問題点として、情報漏えいの危険性を指摘してきました。IT先進国のアメリカ、韓国でも毎年、数千万件単位で個人情報が漏えいする事件が相次ぐなど、不正と防止策はイタチごっこで、情報漏えいを100%防ぐシステムの構築は不可能です。年金機構の流出事件は、ネットワークを分離していたにもかかわらず、職員の人為的ミスで情報が漏えいしました。情報漏えいは、システムのセキュリティだけの問題ではなく、人的なミスや犯罪で起こっています。
一番のセキュリティは、マイナンバーのマイナポータルにつなげないことで、マイナポータルのための中間サーバは必要ありません。しかも、このサーバの費用5249万円を含め川崎市は、マイナンバーの導入のために約8億円もの負担をしています。
 以上の問題点があることから、本議案には賛成できません。

議案第169号県費負担教職員の給与負担等の移譲に伴う関係条例の整備に関する条例の制定についてです。

主な改正は、勤務時間の割り振りや週休日の振替等を、県費から市費へ年度をまたいで取得する際の手続きをわざわざやり直さなくても、川崎市の条例の規定で行なったものとみなす規定です。このみなし規定は必要と考えます。
教育公務員については、教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、教育公務員の任免、給与、研修などについて規定した「教育公務員特例法」に基づき、条例等で別途措置されていることから、先の議会では、制度設計の方針に、「本市の教職員固有の職務や勤務形態の特殊性を考慮し整備する」ことを表記するよう求めました。今回、市が示した制度設計に「本市の教職員固有の職務や勤務形態の特殊性などを踏まえ,県制度の導入や経過措置の設定など、県費移管に伴い学校現場に混乱のないよう調整します」と「教育公務員特例法」に基づく文言が入りました。
しかし、具体的なところでは、「平成29年4月1日以降、…教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、政令指定都市の条例が適用されることになった」と、市の条例に統合することを前提としました。
現在、教職員は、その職務の特性、例えば半休をとると授業に穴をあけてしまうなどの特殊性を考慮し、現在も神奈川県条例では他の職員と異なる勤務条件が規定されています。ところが、今回の市条例案では、こうした手当・規定がなされていません。
政令市に移管という理由だけで、現在の教職員の給与、勤務条件等の改変、切り下げはすべきではありません。以上から、この条例案には賛成できません。

議案第173号川崎市職員退職手当支給条例の一部を改正する条例の制定についてです。

この議案は、県費負担教職員の政令市移譲に伴い、給料表の切り替えを受けた者が2017年4月1日以後に退職する場合に、退職時の市の制度による退職手当の額と、同年3月31日に同一の理由で退職したと仮定した場合の現行制度での退職手当の額と比較し、高い額を支給する経過措置を設けるものです。
退職金の算定基準となる給料月額は、市費移管で2%程度減額になります。経過措置となる比較の対象は、本来の県費職員として受給できる退職手当額との比較ではなく、移管時、すなわち2017年3月31日の退職手当の額としています。退職手当額の基準となる給料月額が、マイナス改定される以上、数年後の退職手当額は県費教職員で退職する時と比べてかなりの減額になります。このような経過措置の複雑な調整をするよりも、一番の「現給保障」は、給料月額を切り下げないことです。
よって本議案には賛成できません。

議案第202号川崎市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。この議案は、県費負担教職員の政令市移管に伴い、県の給料表の2%程度の減額や各種手当て等を改定する議案です。

教諭等の給料月額は退職手当額や将来にわたる年金等の算定の基準にもなり、その切り下げによる影響は大変大きいものです。一部、地域手当等の増額はありますが、住居手当は2万8500円から1万6500円へ減額、経過措置で2万2500円になりますが、経過措置は1年限りであり、減額は賃貸住宅に住む人にとっては痛手です。川崎市に定着する優秀な教職員の確保対策としても住居手当も減額すべきではないと考えるものです。よって本議案には反対です。

議案第176号川崎市国際交流センター条例の一部を改正する条例の制定についてです。

この議案は、これまで無料だった駐車場利用料金の上限額を設定するためのものです。国際交流センターは鉄道駅からの交通の便が悪いうえに、施設の性質上全市から利用者が集まる施設です。一定時間は駐車料を無料とする措置が取られ、これまでと同様に障がい者が施設を利用する際には無料とされますが、有料化は市民の負担増となることからこの議案には賛成できません。

議案第177号川崎市農業委員会の委員及び農地利用最適化推進委員に関する条例の制定についてです。

国の制度改正に伴う条例改正ですが、そもそも、この制度改正の第一の問題点は、「農地の番人」と位置付けられてきた農業委員会制度を骨抜きにする問題です。
農地の管理についてはこれまで、農業委員会に許認可権が与えられ、農業委員会のもとに、地域の農業者による自治的な仕組みにより農地が守られてきました。ところが、法改悪により農業委員会制度の根幹である公選制を廃止し、市町村長の任命制とされるものです。農業委員会の目的規定から「農民の地位の向上に寄与する」を削除し、業務から「農業、農民に関する意見の公表、建議」を削除しました。このことは、農業委員会の農民の代表機関としての権限を奪い、農地の最適化、流動化のみを行う行政の下請け機関に変質させるものです。
第二の問題点は、今回の制度変更による規制緩和で、企業の参入が大幅に拡大し、日本の家族農業が壊され、これまで守り続けた農地制度の根幹が壊されることです。
 農業委員会を構成する「認定農業者」には、株式会社でもなれることから、「農家」だけでなく、大手企業が農業委員会へ参入することも充分可能となっています。しかも、認定農業者が、農業委員の過半数を超えなければならないとしています。
「農家の代表」、「農地の番人」と言われてきた農業委員会が、企業の参入へと、役割が大きく変わることも考えられます。
新しく設けられた「農地利用最適化推進委員会」とは、「農地の集積、集約化」が必須の役割と位置付けられています。そして、農地の「最適化」の名のもとに、農地は、「農地中間管理機構」、神奈川県では、公益社団法人神奈川県農業公社に集められ、公社を通じて、代々守り続けてきた農地が、「地域を知らない」企業等に預けることになります。借手企業等にとっては、優良農地が初期投資も安く借り受けられ、大きな利益を上げられます。一方、川崎市内でも、黒川上、東、早野、岡上の農業振興地域の農家は、休耕地のままにしておくと、現在の固定資産税の1.8倍に課税される可能性があることも明らかになりました。課税強化を避けるには、いやがうえにも貸し出すように強いられることになります。家族経営を基本にした多様な農家や生産組織などが、展望をもって生産できる環境をつくるべきで、そのために役立つ農業委員会にすべきです。以上の理由から同議案には賛成できません。

議案第181号川崎市地区計画の区域内における建築物等の形態意匠の制限に関する条例の一部を改正する条例の制定について、および議案第182号川崎市地区計画の区域内における建築物に係る制限に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。 

いずれの議案も、小杉1・2丁目地区の日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画に係わる地区計画の変更を行なうものです。もともと、第1種住居地域で容積率200%、高さ制限20mの建物しか建てられない地域でした。それを商業地域にすることを前提に容積率が400%となり、「低炭素都市づくり・都市の成長への誘導ガイドライン」でさらに600%まで引き上げられ、その結果、地域に深刻な影響を与える180mの超高層ビルが建てられるようになりました。
質疑では「ガイドライン」の容積緩和を認める評価基準について、具体的な根拠を質しましたが、「建築物全体の省エネルギー性能が高水準の計画」というだけで,削減効果を数値で示せなかったどころか、委員会の質疑では、容積緩和することによる影響が検討されていないことも明らかになり、この「ガイドライン」が規制緩和のための口実に過ぎないことがはっきりしました。「ガイドライン」は、マイナス面での評価項目がないこと、総合評価のもとで曖昧な評価となること、その評価が開発事業毎になされ複合的な視点がないこと、地域活動など住民の地域貢献まで、企業貢献として評価されていること、そして何よりも評価の席に住民が参加していないことなど多くの問題があります。議案第181号、議案第182号は、「ガイドライン」により規制緩和された小杉1・2丁目の地区計画の変更であることから、反対するものです。

議案第187号川崎市高等学校奨学金支給条例の一部を改正する条例の制定についてです。

奨学金の支給対象に高等専門学校と専修学校高等課程の生徒を加え、また入学支度金を入学前に支給するためのものとのことで、この議案そのものについては賛成するものです。
代表質問では「平均評定3.5以上」という成績の申請基準を上回る生徒でも学年資金で202人、入学支度金で49人が奨学金を受けられなかった問題を指摘し、改善を求めたのに対し「申請基準と採用基準との乖離をなくすようにする」との答弁がありました。京都市のように補正予算も含めてあらゆる手段を講じて申請基準を満たす全ての希望する生徒に奨学金を支給する対応をとるよう要望いたします。
また、代表質問と委員会での質疑で、中学3年生の平均評定3.38を超える「3.5」という成績要件を課していることが奨学金制度としてふさわしいのか、問題提起を行ないました。政府統計などでも家庭の経済力と学力の相関関係は明らかにされており、成績要件のあり方の見直しを行なうよう要望しておきます。

議案第199号平成28年度川崎市一般会計補正予算についてです。

10款5項3目13節委託料で、民間手法を活用した公営住宅整備運用についての調査委託料ということですが、本来、公営住宅の建て替え、設備更新については、国が財政的な責任を負うのが当然です。予算をかけずに民間活力でというやり方は改めるべきです。その上で、借り上げ住宅などあらゆる手法を駆使するための調査に資するものにすべきです。
公営住宅法は「国及び地方公共団体が協力して健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」ことを目的としています。この趣旨に沿って、使用料高騰につながらないこと、使用料徴収業務など、管理運営業務は、公的責任で行うことを求めておきます。
この補正予算には高齢者や障害者などの福祉施設に防犯カメラを設置する経費が含まれています。私たちは、防犯カメラの設置については、事件など起きた際、事件概要の解明など、役割を担っていることを否定するものではありません。しかし、防犯カメラの設置は、根本的な問題解決には結びつかないともいわれています。プライバシー侵害や個人情報の流用などの心配の声も寄せられていることから、未然防止対策の強化を要望するものです。

以上の立場から、議案第167号、議案第169号、議案第173号、議案第176号、議案第177号、議案第181号、議案第182号、議案第188号、議案第202号については反対、その他の議案、請願については賛成することを表明して討論を終わります。