議会報告

2017年3月21日

福祉や暮らし、中小企業優先の予算に~石田議員が予算組み替え動議を提案


DSC026973月17日の2017年第1回川崎市議会定例会において、日本共産党川崎市議団は予算組替え動議を提出、石田和子議員(高津区)が代表して提案説明をおこないました。

石田議員は、川崎市においてもアベノミクスで貧困と格差が広がり市民生活はますます苦しくなっているとし、国の悪政から市民生活を守る地方自治体の役割は新年度予算案では極めて不十分である一方で、不要不急の大規模事業への予算が大幅に増えていると指摘して、予算の組み替えを提案しました。

採決で他党は反対理由を述べることなく反対多数で否決しました。

石田議員の提案説明予定原稿と動議は次の通りです。

予算組み替え動議の提案説

私は日本共産党を代表して、2017年度川崎市一般会計予算等の組み替えを求める動議について、提案理由、基本方針及びその内容について説明いたします。

安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まって4年。その行き詰まりと破たんが明らかになっています。労働者の実質賃金は4年で年額19万円も減り、家計消費は実質15ヵ月連続で対前年比マイナスとなっています。さらに重大なことは、アベノミクスが格差と貧困をいっそう拡大し、社会と経済の危機を深刻にしていることです。

国民の所得が全体として低下する中、労働者の実質平均賃金は1997年をピークに年収で55万6千円も減少。給与所得者数を所得階層別にみると、増加しているのは年収2千万円以上のごく一部の高額所得者と500万円以下の層で、500万円~1000万円の層は減少し、中間層の疲弊が深刻化しています。

日本の貧困率は1997年と2012年比較で14.6%から16.1%となり、OECD34ヵ国中ワースト6位。こどもの貧困率は13.4%から16.3%、実に6人に1人が貧困状態に置かれています。働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は就業者世帯の4.2%から9.7%と2倍にもなっています。

社会保障制度の改悪に加え、社会保障費の「自然増」削減、高齢者は年金が下げられる一方で保険料は値上げされ、毎日どう暮らせばいいのかというギリギリの生活を強いられています。

川崎市においても貧困と格差は広がっています。川崎の雇用者数は、2002年から2012年の10年間で10.4万人増えているものの、非正規労働者の増大などから、2012年で年収300万円以下は6万人増で市内労働者の44%にのぼる一方、年収1500万円以上はほとんど割合が変わらず、市民生活はますます苦しくなっています。

 こうした中、地方自治体には国の悪政から市民生活を守る防波堤の役割を果たすことが求められていますが、新年度予算案は、市民の福祉や暮らし、市内中小企業への支援、雇用対策などについては極めて不十分なものとなっています。

 その一方で、不要不急な大規模事業への予算は大幅に増えている。コンテナターミナルへ船を呼び込むための補助金を出す予算に1億7736万円、臨港道路東扇島水江町線の整備に約34億円、東扇島堀込部埋立土地整備事業に約1億8390万円など国際戦略港湾関連で約52億円に上り、多額の予算が計上されています。そのほかにも、羽田連絡道路の整備関連で約58億円を含む国際戦略拠点整備関連で約64億円などが予算計上されています。

 我が党は、市民生活を支えるための緊急課題に絞って、次の組替えの基本方針及び内容により2017年度予算案の再提出を求めるものです。

組替えの基本方針は、

第1に、子育て世代の賃金・経済状況が悪化する中で、共働きをしなければ生活できない世帯が急増しており、かつてない勢いで保育園ニーズが高まっていることから認可保育園の緊急増設を行うとともに、小児医療費助成制度の所得制限と一部負担金を撤廃し、中学生まで拡充する。一人ひとりの子どもに目がゆきとどき、学習・生活指導などあらゆる面から教育条件を改善する有効策として、少人数学級を全学年で実施する第一段階として、新年度では小学3年生と中学1年生で実現する。憲法26条2項の義務教育無償原則の趣旨から、学校給食費を当面小2年生まで無料化することなどです。

第2に、高齢者に増税・負担が集中している状況下で、安心して介護を受けられるよう、介護援助手当を復活、特別養護老人ホームを増設し、人材確保が困難な介護老人福祉施設等に職員の定着・確保を図るための支援を行う。削減した障害者支援施設等運営費の市単独定率加算を復活する。非課税世帯などの低所得の障がい者の医療費を無料にし、重度障害者等入院時食事代補助制度を復活する。敬老祝金・長寿夫妻記念品を復活することなどです。

第3に貧困と格差が拡大している状況下で被保護世帯への上下水道料金の減免及び入浴援護事業の復活により、低所得世帯への生活応援を図る。とりわけ、「子どもの貧困」が深刻化する中で、小・中学校の自然教室の食事代補助、生活保護・就学援助世帯の入学祝金・修学旅行支度金・卒業アルバム代補助、就学援助世帯への眼鏡支給・社会見学等の実費支給補助を復活するとともに、補助範囲をPTA会費、生徒会費、体育実技用具費等にも拡充する。市立定時制高校の夜食代補助を復活することなどです。

第4に中小企業活性化条例の施行にふさわしく、工場の家賃や機械リース代などの固定費補助制度創設で中小・零細企業者を直接下支えする。建設業の振興とともに経済波及効果が大きく、市民にも喜ばれる住宅リフォーム助成事業を創設する。雇用を巡る環境が厳しい中、こうした取組により雇用拡大を図る。

第5に防災対策の第1の要である旧耐震基準の木造住宅の耐震化促進を図るため、助成対象件数を増やす。

第6に国際戦略港湾計画や臨海部の基盤整備等への投資、臨港道路東扇島水江町線及び羽田連絡道路など市民生活にとって必要性が示されない2本の橋の整備、高速川崎縦貫道路など、不要不急の大規模事業を中止・延期することで、一般会計の市債発行を抑制し、後年度負担の軽減を図ることです。

組替えの内容ですが、歳入予算として、臨港道路東扇島水江町線整備、東扇島掘込部埋立土地造成事業などの国際コンテナ戦略港湾関連事業、羽田連絡道路整備などの臨海部国際戦略拠点整備関連事業、高速川崎縦貫道路関連事業などの建設中止・延期や、競輪施設等整備事業基金、競輪事業運営基金、港湾整備事業基金、土地開発基金等の当面使用する予定のない基金からの借り入れで約63億円を確保します。

歳出予算として、提案いたしましたアからテまでの事業に充当するものです。この組み替えによる総事業費は約83億円、一般財源で約63億円です。市債の発行は約45億円削減できます。

さまざまな負担増で市民のみなさんの生活が苦しさを増しているなか、こうした市民生活の実態に思いを寄せる議員各位のご賛同を心から呼びかけ、予算組み替えの提案説明とさせていただきます。