議会報告

2017年12月14日

認可保育所や特養ホームの整備こそ最優先課題〜井口議員が代表討論


井口2017年第4回川崎市議会定例会の12月14日、日本共産党を代表して井口真美議員(多摩区)が討論を行いました。
井口議員は、川崎市総合計画について、市の差し迫った課題である人口増に伴う認可保育所や特養ホームの整備の遅れへの対処を最優先課題にすべきであり、中小企業を中心にした産業政策や正規雇用拡大をきちんと位置付けること、少人数学級拡充、教員の定数内欠員の解消、防災対策の主体・責任はあくまで行政であることの明記などを求めました。また行財政改革の根拠は成り立たたず、高齢者や障がい者の施策の削減はやめるよう求めました。
小学校給食費の値上げはやめるべきであり、申請して12ヶ月以内に入居できるよう特養ホームの整備計画を見直し、小規模企業者の事業の持続的発展を促す取り組みを早急に具体化することを求めました。
議案136号川崎市港湾施設条例の一部を改正する条例は指定管理制度そのものに反対であることから、議案150号公有水面埋め立てについては事業の根拠がなく市民生活に不要不急のリニア新幹線の残土処理のための埋め立てであることなどから、反対を表明しました。

井口議員の討論原稿は次の通りです。

代表討論

私は日本共産党を代表して、今議会に市長が発表した市政への考え方及び行政報告並びに提案された諸議案について討論を行います。

最初に市長の「市政への考え方」及び行政報告についてです。

川崎市総合計画についてです。
第2期実施計画素案について、代表質問で、計画が市民の実態を把握し、現実の課題を取り上げ、市民の切実な要求に応えたものになっているか、という3つの観点から質問しました。質疑を通して、3つの問題点が明らかになりました。
 第1の問題点は、人口減少、少子高齢化など将来不安をあおり、現実の課題をなおざりにしていることです。市の第1の課題として人口減少の問題をあげていますが、川崎市の実態とかけ離れていると指摘しました。市長は「人口減少に転換することを想定」と答弁しましたが、今の人口より減少するのは33年後です。市の差し迫った課題は、人口減少などではなく、人口増による需要増にどう対処していくかです。
 少子高齢化といいながら、それらの施策は遅れているという指摘に対して、市長は「中長期かつ分野横断的な視点」で対応するという答弁でした。しかし、認可保育所の整備や特養ホームの整備の遅れなどは、市民にとって喫緊の課題であり、早急に解決すべき課題です。しかし、計画では、拡充するどころか、高齢者施策は行革の対象にさえなっています。小杉再開発の問題や認可保育所、特養ホームなどの問題の解決は最優先課題にすべきです。
 第2の問題点は、深刻な実態、切実な要求があるのに、その課題を正面から取り上げた施策、指標になっていないということです。
産業政策では、計画には、中小企業において「従業員数は減少し倒産、廃業をくいとめる具体的施策」がほとんどないことを指摘しましたが、それに対する答弁はありませんでした。しかも、計画には中小企業の最大の悩みである後継者不足の問題は、ほとんど書かれていませんし、最も要望が強い「人材確保」「市内優先発注促進」などの支援策がありません。事業所数で9割以上を占め、「中小企業活性化条例」にも位置付けられ、大きな役割を占めている中小企業については、臨海部の先端産業や成長産業と比べて、その施策はあまりにも貧弱です。産業政策は、中小企業を中心に位置づけるべきですし、中小企業が直面している切実な課題を取り上げ、その対応策を計画に追加すべきです。雇用の問題では、「正規雇用」対策について具体的な施策がないことを指摘しましたが、明確な答弁がありませんでした。計画に、正規雇用拡大をきちんと位置づけ、具体策を書き入れるべきです。
教育の問題では、計画には「少人数学級」拡充の具体的な施策はないこと、政令市の中でも川崎市は遅れていることを指摘しましたが、「拡充する」という答弁はありませんでした。計画には、定数内欠員の解消や教職員の増員についての記述はなく、教員の長時間労働についても、具体的な施策がありません。計画に少人数学級の拡充、定数内欠員の解消、教員の長時間労働解消のための具体的な施策を書き入れることを要望します。
第3の問題点は、市民に自助・共助・互助を強調して、本来の公助の役割を後景に追いやっていることです。防災について、代表質問では、消防職員や救急車、避難所の不足、住宅耐震化など、川崎市の防災対策の遅れを指摘。「防災対策の主体が市民にあるかのように」書かれており、公的責任をあいまいにしていることを指摘しましたが、市長は「自助・共助・互助のバランスの取れた取組を進める」という答弁でした。市長は「市政への考え方」で「自助・互助・共助とともに必要な場面では、公助の責任をしっかり果たす」と述べています。計画では自助・共助・互助をことさら強調すべきではなく、防災対策の主体・責任はあくまで行政にあることを明記し、公的支援の遅れ、特に消防職員、救急車、避難所の不足、住宅耐震化の遅れなどを最優先課題とすべきです。

行財政改革についてです。
代表質問で、「人口減少」「少子高齢化」という行革の根拠は、成り立たないこと。財政難という根拠については、今回のプログラムからはなくなり、これまでわが党が質疑してきたように「財政が厳しい」という根拠は、1つもないことを明らかにしました。最後に出されたのが「これまでに経験したことのない社会状況の変化」という理由です。「これまでに経験したことのない」などという想定が困難な理由まで持ち出して行革を迫るというのは、あまりにも道理のないやり方です。
行革の根拠が、どれも成り立たないのに、この間、高齢者や障がい者などの施策が次々と削られ、今回のプログラムでも「市民サービス等の再構築」で、見直しの対象になっています。これらの施策は、どれも市民にとってはなくてはならない制度であり、行革から外すべきです。強く要望します。

小児医療費助成制度についてです。
 入院医療費の助成について所得制限を廃止することは前進ですが、市長は、通院医療費については今後も所得制限を設けていくと述べました。しかし、大きな病気やケガを治癒するまでには入院と通院は切り離せません。子どもが入院するほどの病気やケガをする時は、その前後の外来通院の回数も多くなります。
20政令市の中でも、所得制限の有り・無しについて、通院・入院で異なる対応をしているところは一つもありません。この間の神戸市や熊本市、横浜市などの拡充の動きを紹介しましたが、市長は「限られた財源」などを理由にさらなる拡充については答弁がありませんでした。政令市トップの豊かな財政力がある本市が、小児医療費助成では政令市「最低水準」にある状況は、子育て世帯、多くの市民が納得できません。所得制限については、一刻も早く通院・入院とも撤廃し、さらに横浜市に遅れず、本市も通院助成を中学卒業までの拡大にふみだすことを強く求めます。

保育所待機児童解消についてです。
 10月1日現在の認可保育所の利用申請はこの4年半で9363人も増加、就学前児童の約4割弱が認可保育園に申請する等保育ニーズは急増しました。待機児童374人は昨年度同時期より274人増えましたが、増加のほとんどが新定義による育児休業中の266人です。待機児童ではないとされた、現在育児休業中の方は905人もいますが、来年4月には多数の方が復職の意向を示されると思われ、4月1日時点で入所出来なければ待機児童になります。新定義で増えると思われる待機児童数と更なる利用申請の増加に対応するには、認可保育所の整備を抜本的に増やす事がどうしても必要です。しかし、民間事業者活用型の整備は補完的だとしながら、今年度中の新設による定員増は、その逆で、民間事業者活用型が969名、公有地、民有地への整備は635人でした。来年3月目途に示す、第2期実施計画期間中の年次計画は1万人程度の定員増及び、公有地、民有地への整備を抜本的に増やす事を強く求めておきます。

小学校給食費の改定についてです。
今回の値上げにあたって教育委員会が実施した保護者アンケートに対する回答から、給食費改定については「一定の理解を得た」との答弁でした。しかし、アンケートの取り方をみると、保護者が値上げに賛成しているという回答を導く誘導的な質問だったのではないかとの疑念を禁じえません。
答弁では、給食費改定は「学校教育法等の趣旨を踏まえて」設定したとのことですが、学校給食法施行時の事務次官通達では「自治体が食材費を負担することを禁止しない旨」明記しています。これは、憲法26条で規定する「義務教育は無償とする」との原則に則ったものです。こうした趣旨に照らすなら、食材価格の高騰を保護者負担に転嫁すべきではありません。食材費への公費負担導入に踏み出し、40円の値上げはすべきではないことを強く求めておきます。

障がい者施策についてです。
 代表質問で「パラムーブメントというなら、障がい者スポーツ振興のために施設整備は当然必要だ」とただしたのに対し、市長は「既存のスポーツ施設を有効活用し、快適に利用できる環境整備を行うことが基本」と答弁されました。
 視覚障がい者の皆さんが親しんでいるサウンドテーブルテニスは、ボールの中の鈴の音を聞いて打つため、静かなところでなければ競技ができません。横浜市や大阪市の障がい者スポーツセンターには専用の防音室がありますが、多摩区のスポーツセンターでは体育室ではなく、研修室と隣の物置を使って練習していました。市長の「市政への考え方」で「オリンピック・パラリンピックを社会変革を起こしていく最大の好機ととらえてかわさきパラムーブメントを提起した」といわれましたが、社会変革を起こすほどのムーブメントが、既存の施設の有効利用でいいのでしょうか。「パラムーブメント」を言葉だけにしないで、障がい者の皆さんの願いにそった障がい者専用のスポーツセンターを整備することを求めておきます。

特別養護老人ホーム増設についてです。
「第7期かわさきいきいき長寿プラン(案)」で示された590床の増床では、今年10月の待機者数3,582人、「なるべく早く入居したい」と訴えている2,676人の深刻な実態と大きくかけ離れていることを指摘し、整備目標の大幅な引き上げを求めました。市長は答弁で公有地を活用した医療依存度の高い方の受け入れ施設の整備について「地域密着型サービス」等の拡充と併せ推進するとのことでしたが、整備目標の引き上げについては言及がありませんでした。隣の横浜市は毎年300床の計画を倍増の600床に見直し、1年以内に入居できる整備を進めるとしています。市長は選挙公報で「特別養護老人ホームの整備」公約に掲げました。本市も横浜市に見習い、せめて、申請して12ヵ月以内に入居できるように整備計画を抜本的に見直しすることを求めます。

中小企業支援策についてです。
「総合計画素案」では「中小製造業の操業環境整備への支援の推進」と掲げています。そこで、オープンファクトリーなど操業環境改善への支援の拡充を求めましたが、従来どおりの答弁に止まりました。
住宅リフォーム助成を子育て支援として実施することについても、他都市の事例を示しているにもかかわらず、「補助金額の適正な算定や補助目的に合致しているかどうかの評価が困難」と取り組む姿勢すら示しませんでした。現在ある住宅改造の支援策を市内事業者につなげる対策についても、「事業者自らが受注を継続的に確保できるように取り組んでいる」と従来の見解を繰り返すのみでした。「中小企業活性化のための成長戦略に関する条例」において明記された「小規模企業者の事業の持続的発展を促す」取り組みを早急に具体化するよう求めておきます。

雇用対策についてです。
 市立高校定時制5校の就職率が全日制に比べて低い実態を示し、支援と対策を求めたのに対し、中途退学や卒業後の就労支援の窓口を周知するとの答弁に止まりました。改めて、就職を希望するすべての定時制生徒に対して就職が決定できるよう実効的な支援の検討を求めておきます。
雇用と地域経済を壊す大企業のリストラに対し雇用対策本部の設置を求めました。東芝デジタルソリューションズは今年度末までと期限を定め、対象部門を指定して、300人を対象にリストラを行うと明確にしているにも拘らず、市長は詳細が明らかでないといい、雇用対策本部設置の対応はしないとの答弁を繰り返しました。今後、対象職場では個別面談が行なわれ、リストラ計画を達成するまで個人に対して繰り返し退職勧奨などが強力に行われます。弱い立場の社員を職場から追い出す人権無視は許されません。働く者の生活、人権を守らせるための雇用対策本部は市長の権限で設置できることを再度指摘し、対応を求めておきます。

臨海部ビジョンについてです。
代表質問のやり取りで明らかになったことは、どんな理由をつけても臨海部企業にとって直面している課題については先送りできないと具体的に積み上げて積極的に取り組む姿勢でした。しかも、こうした問題は、それぞれの企業が高度な経営判断のもとに対処すべき問題との指摘についても、課題解決に向けて協働して取り組むことが重要と、まともに答えませんでした。そのうえ、圧倒的に民間の土地であるのに、協働という形で、臨海部ビジョンにおける課題解決の主体は、ほとんど川崎市が主導して行う内容です。
市民の切実な福祉施策については、将来の少子高齢化などを持ち出して行革の対象にしながら、企業が社宅を見直しているのに、生活環境の整備のために住宅を確保するとか、遊休地のためのファイナンス機能や交通機能の整備と徹頭徹尾、川崎市が積極的に臨海部大企業支援に終始しています。
事業費総額も最後まで示せないようなビジョンのために莫大な市民の税金を投入することはあってはなりません。そのことを強く指摘しておきます。

議案第136号川崎市港湾施設条例の一部を改正する条例の制定についてです。
コンテナターミナルの運営に利用料金制を導入するものですが、これまで指定管理制度の導入そのものに反対してきた立場から、この議案には反対するものです。

議案第150号公有地水面埋立てについてです。
 この埋め立て土地造成事業については、まず、必要性として示した「コンテナ貨物保管用地の拡張」、「輸出自動車保管スペースの確保」、「倉庫の建て替え用地の確保」という3つの理由は、まったく根拠がないことが明らかになりました。また、当初、総事業費240億円については、全て受け入れ料金で総費用を転嫁し、「一般財源には負担をかけない」と言っていましたが、結局、資金計画が破たんし、少なくとも40億円以上の市費負担が発生することになりました。しかも、市民生活には不要不急のリニア新幹線の残土処理のための埋め立て事業です。以上のことから、本議案には賛成できません。
以上の立場から、議案第136号、議案第150号については反対、その他の議案については賛成することを表明して討論を終わります。