議会報告

2018年10月9日

決算審査特別委員会で質疑~大庭議員


IMG_86242018年第3回川崎市議会定例会で10月5日、大庭裕子議員が決算特別委員会で総括質疑をおこない、2017年度決算の財政状況と減債基金、障害者スポーツ推進事業、保育所の実地検査などについて質問しました。
大庭議員は、市のあげる財政が厳しいとする根拠の一つひとつに反論し、「『財政が厳しい』という根拠は何一つないことは明らか」と指摘、減債基金について他都市と比べて過大であることを示し「ため込みすぎ」と批判。そして人口減少や少子化、防災対策など、将来の対策のために投資すべきと求めました。
大庭議員が行なった総括質疑の初回質問は次の通りです(議事録ではありません)。

 

決算審査特別委員会での総括質疑

私は、日本共産党を代表して、決算審査特別委員会の総括質疑を行います。

最初に、2017年度決算の財政状況と減債基金についてです

川崎市の決算について、市税収入は4年連続過去最高であり、財政力指数は 10年以上政令市トップを続け、市債償還のための減債基金は 243 億円積み増しして2200億円を超え、財政健全化指標は、極めて優良であることを示し、川崎市は政令市で最も豊かな財政を持つことを明らかにしました。

また、私たちは「財政が厳しい」という根拠についてーつーつただしてきました。

「扶助費の増大」を理由に挙げていましたが、増加した部分のほとんどは国や県からの補助で賄われ、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均以下であり、政令市で扶助費がトップの大阪市でさえ扶助費を理由に「財政が厳しい」とは言っていません。扶助費の増加を理由に「財政が厳しい」とはいえません。

「減債基金からの 130億円の借入」を厳しい理由に挙げていますが、減債基金に積み増した額243億円から収支に必要な 130億円を減らして対応すれば、収支不足も出ず、借り入れる必要はないのです。まさに「見せかけの収支不足」です。大阪市でも基金を活用して収支不足を出さないようにするなど、他都市は基金の積立額を調整して対応しているのです。この方法だと「市債償還財源の確保が困難になる」という答弁でしたが、これを 10年続けても 10年後の減債基金の残高は、 2519億円で市債償還額の8年分であり、「償還が困難になる」という状況はあり得ません。

「財政が厳しい」という根拠に、消費税率の引き上げ延期、ふるさと納税の拡大、法人市民税の国税化などを挙げていましたが、これらの影響は政令市ではどこも同じです。横浜市や大阪市を見ても、これらを理由に「財政が厳しい」とはしていません。

「普通交付税の不交付団体だから」という理由もあげていましたが、そもそも国は、川崎市は財政が豊かだと判断して不交付としているのですから、不交付だとして「財政が厳しい」という根拠になりません。このように、「財政が厳しい」という根拠は何一つないことは明らかです。結局、収支不足があるように見せかけ、「財政が厳しい」としているのは、市民の福祉・くらしの支出を抑制するためではないですか、市長に伺います。

「財政が厳しい」といっている一方で、減債基金には過大な積み立てをしています。

減債基金の残高は、政令市平均では市債償還額の4年分ですが、川崎市は17年度11年分にもなり、一人当たりの額は政令市の 1.8倍です。これを政令市並みの市債償還額 4年分にすると残高は 1000 億円前後あれば十分であり、他都市よりも川崎市は1200億円も過大となります。10年後にしても、推計では3023億円にもなり市税収入に匹敵する額となります。これは政令市平均よりも 1000億円以上も過大となる金額です。市長は「資金を留保するものではない」といいますが、明らかに「ため込みすぎ」です。

市長は、また「負担を将来世代に強いることのないように」とのべていますが、本当に、将来世代のためというのであれば、ため込まないで人口減少や少子化、防災など、将来のために投資をするべきです。少子化対策は効果が出るまでに数十年かかります。人口減少になってからでは遅いのです。いつ起こるかわからない災害に備えることは、喫緊の課題であり、早く着手することで多くの命が救われます。減債基金の他都市よりも過大となっている 1000億円は、そうしたところに使ってこそ、生きたお金の使い方であり、将来世代の負担を減らすことにつながるのではないですか、市長に伺います。

4 款1項2目保育事業に関連して保園の実地検査等について伺います

監査に係る 2017年度決算額は 1項 1 目財務状況分析等委託料 549 万円余、 2 項 2目財務分析委託料として2160万円です。

待機児童対策で認可保育所が急増してきました。量の確保とともに、健やかな育ちを支える「保育の質」の確保が求められています。開設して半年経つが保育室におもちゃが少ししかない。若い保育士ばかりで不安などの声が届くことがあります。児童福祉法の施行令は、都道府県や政令市、中核市に年1回以上、管内全ての保育所の実地検査を義務づけています。

本市の認可保育園、認可外保育園への実地検査事業の内容、方法、回数を含めた考え方について、及び実地検査体制を伺います。

認可保育園について、2017年度に行なった実地検査の回数を保育園、幼保連携型認定こども園、地域型保育事業別に伺います。検査の結果、問題がある保育園の件数と内容及び対応について伺います。認可外保育所の実地検査についても伺います。

3款1項6目障害者スポーツ推進事費に関連して、リハビリテーション福祉センターにおける体館とプールの管理運営費についてですが、5款5項2目の中の、小事業として、決算額が 1337万円余計上されています。

障害者スポーツの推進について健康福祉局長に伺います。市民文化局は、分科会において、今後の取組みについて、既存のスポーツ施設を活用し、快適に利用できる環境整備を進める。「障害者スポーツデー」の回数を増やし、多くの障害者の方が参加できる競技に絞る。障害者スポーツ用具を順次配備する。初級障害者スポーツ指導員を養成すると回答しました。

「障害者スポーツデー」は各スポーツセンターで、年1回、1コマ3時間、専用スペースを確保し、計447人が参加しました。今後回数を増やすには、コマ数をどれだけ増やせるか大きな課題であり、リハビリテーション福祉医療センターの体育館とプールの専用施設としての役割は大変重要です。

障害者スポーツは、スポーツを通してのリハビリ効果が大きく、身体の機能回復及び健康増進を図る等大切な目的があると思いますが、障害福祉と医療を所管する健康福祉局としての見解を伺います。そのためには、障害特性への配慮と安全が充分確保される必要があると思いますが伺います。

体育館の 2017年度の利用者と引率者の利用人数は8384人で施設の利用状況はほぼ 100%に近いとのことです。プールの利用者も大変多く 7,8月2007 人とのことです。利用団体登録は、桜の風等井田地域施設が7施設、あかしあ園等障害者施設が 10施設、川崎市自閉症協会等障害児施設が7施設、ショートテニス同好会等団体・サークルが 11施設の他、川崎市身体障害者協会、市民文化局スポーツ室、健康福祉局精神保健福祉センターなど、38団体にも上ります。

2017年2月に策定された「川崎市リハビリテーション福祉・医療センター再編整備・第 3 次追補版」では、「リハビリテーション福祉・医療センター」の利用者をはじめとする障害児・者の健康づくりや社会参加の場として活用されている事を考慮して、今後の施設のあり方を検討するとしています。あり方についてこうした利用者や障害者団体から意見をしっかり聞いているのか、どのような意見なのか伺います

2020パラリンピックに向けて、障害者スポーツの人口と気運が高まると思われる中、体育館及びプールの既存の機能を含めどういう方向で検討しているのか、検討のスケジュールも含め伺います。

川崎市障害者優先調達についてです

本市は障害者優先調達法に基づき、2013年障害者優先推進方針を策定しました。実績は、 2016年度が 78 件約 2400 万円、 2017年度が 70 件約 3250 万円で、金額は約 850

万円増加していますが、8件減っています。目標を達成するのであれば、年度終了時にならないと契約件数の結果がわからないというのではなく、各部局に目標をもってもらい、年度の中間時期に実施状況を調査して、促進していくべきと思いますが、伺います。

12款 1項1目市民救命士等の養成の応急手当講習につぃてです。

本事業は、行財政改革プログラムに位置づけられ、昨年度からは 100%川崎市消防防災指導公社への外部委託と同時に「受益と負担の適正化を図る」としてそれまで無料の受講料を有料化にしました。目的の「更なる市民救命士等の養成と救命効果の向上」を図るとしたものの、昨年実績は前年度から講習数は490回から262回、受講者数は11,895 人から 5,932 人と半減しました。

受講回数が大幅に減少した最大の要因は、事業所等からの依頼講習が有料となったことを上げています。最も多かったPTAからの依頼講習は3割以下に、町内会・自治会からは6割台に減少しました。こうした実態からPTA、町内会・自治会、などの関わりで応急手当講習に参加する機会を無くした方が多くいたことが判ります。

応急手当講習は、心肺蘇生法やAEDの使用法、止血法など救急患者の救命に必要な応急手当の知識や技術を、市民が身につけ一般市民の救命に貢献するものです。そもそも、このような事業に「受益と負担の適正化を図る」という理念を押し付けることは間違っています。本来は、消防署職員を増員し、職員が市民の応急手当講習の指導をすべきと思います。全面的な外部委託も見直し、受講者の自己負担は止めるべきです。市長に伺います。

7款5項1目雇用労働福祉費・就業支援について市長に伺います。

2015年度から、労働状況実態調査を専門機関に委託し、2017年度は126万円余を支出しました。調査結果をふまえ就業支援施策にどう生かしてきたのか、伺います。

7月に発表された、2017年就業構造基本調査の川崎市内の雇用状況についてです。

川崎市内の会社などの役員を除く雇用者は 77 万 9000 人と 5年前に比べて 9 万 9500人、約 10万人増えています。従業員の割合は 65.8%、非正規職員・従業員は34.2%で、2012年の調査時とほとんど割合は変わらず、正規と非正規が固定化されている状態です。派遣職員は 1.6倍にも増えています。

所得階級でみると、年収300万円末満は、前回調査より約3万人増え約34万人と全体の 42.5%を占め、50 万円から 99 万円は 10%を超えました。250万円から 499 万円は 32.6%と 2.1%減少しています。一方、 1000 万円以上は増え、特に 1500 万円以上では 170%と約1.7倍になっています。中間層の所得が減少し、所得格差が広がり、2 極化がすすんでいることがわかります。この結果からすると、低所得層の増大は、非正規雇用労働者の雇用条件に連動していることがわかります。

市長は、雇用条件が改善しているとの発言を繰り返していますが、その根拠は求人倍率が昨年より上がったということだけです。有効求人数には、正規と非正規の両方の求人が含まれます。こうした実態を踏まえると、何よりも正規労働者の雇用拡大策に力を尽くすことが、市には求められているといえます。具体策について伺います。

木造住宅耐震対策推進事業についてです

木造住宅耐震改修助成の2017年度決算額は5223万円で執行率は44%、件数にするとわずか60件でした。2015年度末での川崎市の木造戸建て住宅の耐震性不足建物は、約35000戸あると推計され、2020年までに 8900戸もの住宅を耐震化する必要があります。とてもこのペースでは達成できない状況です。2020年までにどうやって目標の8900戸の耐震化を進めるつもりなのか、伺います。

耐震化が進まない最大の原因は、経済的な理由ですが、川崎市は、木造住宅耐震改修助成の限度額を 2016年度から一般世帯では200万円から 100万円に、非課税世帯では300万円から 150万円にと半分に引き下げられてしまいました。補助率もそれぞれ2/3、3/4 と必ず自己負担を生じます。横浜市など他都市がやっているように補助率を定めず、限度額までは全額出す方式の自治体では実績を伸ばしています。北海道胆振東部地震など地震・災害が頻発している現状からみても、進まない最大の原因を解決して、一刻も早く耐震改修を進めるべきです。せめて、木造住宅耐震改修助成の補助率の制限をやめ、限度額をもとの一般世帯200万円、非課税世帯300万円に引き上げるべきと思いますが、伺います。

ナノ医療イノベーションセンターにっいて伺います

2017年度、施設運営費を施設管理費と研究支援事業費に分けました。施設管理費については、入居の賃料によって「立ち上げ期間7年間」という基本協定内にあくまでも目標入居率90%を達成し、賃料収入の確保に努めていきたい、との答弁でした。

しかし、入居率は 2017年度、基本協定に基づく目標入居率の 60%にも及ばず56.3%です。2018年度は目標 65%に対して 54.9%と入居率は下がっています。あと 3年で90%まで達成することは、かなり大変なのでは、との問いにもあくまで、「基本協定に基づく支援については、目標入居率を達成することにより賃料収入を確保し、平成33年度末をもって終了する予定」と、分科会で答弁されました。再度伺いますが、努力しても目標入居率が達成できなかった場合、施設管理費はどこから補うのでしょうか、伺います。

研究支援事業については、研究活動の一層の活発化や安定的な運営を図り、研究費の更なる獲得や、研究成果をより早く世にだすため、産業振興財団と市の連携による戦略的な対応を行うことが必要である、として強化し、その財源は市費に加え、国費や企業からの共同研究費などにより実施されるものと答弁されました。

確かに、国や企業からの共同研究費はその総額の 13分の3 は研究費以外に充てることができる規定になっていると聞きましたが、あくまでできる規定であり、あてにできるものではありません。

私たちは、先端医療の研究、基礎研究の発展そのものに反対ではありません。しかし、このようなかたちで、市費を投入していってよいのでしょうか。

今回、人類共通の課題である「がん」や「認知症」などの新たな治療法を研究する社会的インパクトが非常に大きな研究が着実に進められており、その研究絶果の実用化が近づいてきているとしています。

また、その研究成果の事業化に向けてiCONM発のべンチャー企業が2社設立されるなど、今後の実用化が期待されるところと分科会で答弁されました。しかし、本格的に実用化されるにはまだ道のりは遠いと思います。さらに研究成果を生かした市内企業、特に中小企業での実用化、市場化による経済波及効果にっいて聞きましたが、はっきりした答弁はありませんでした。研究成果を生かし事業化されたとしても、市内の中小企業と連携し、雇用を創出し、税源培養になるのでしょうか、伺います。

希望的観測が続く中、研究支援事業の強化については、その期間も金額も限定しないというものです。市民に対しては、川崎の財政は厳しい、予断ならない事態だとかいい、しかし、このような研究支援にはその期限も金額の歯止めもなく、支援強化というかたちで限りなく市費を投入していくというのは、言っていることとやることが矛盾しないのですか、市長に伺います。

以上で質問を終わります。