議会報告

2010年4月16日

2010年第2回川崎市議会臨時会で佐野仁昭議員がおこなった代表質疑


4月14日に佐野仁昭議員がおこなった代表質疑は以下の通りです。

私は、日本共産党を代表して議案第76号殿町3丁目地区中核施設用地の取得について質問を行います。

まず、今回の土地取得のあり方についてです。

今回の土地取得は、羽田空港再拡張に伴う神奈川口構想の中核施設とするためのものとして、川崎市が都市再生機構より、1.3ヘクタールの土地を約23億円で購入するものです。
第1段階整備として0.6ヘクタールを財団法人実験動物中央研究所に50年未満の定期借地権で貸し付けます。第2段階整備として0.7ヘクタールを公募で、事業者を決め、定期借地権で貸し付け、事業者が施設整備を行わせ、川崎市が環境総合研究所、(仮称)健康安全研究センターとして「(仮称)産学公民研究センター」として整備するとしています。
先日発表された記者会見の内容からみても、これが市民の福祉向上の面から最優先に取得するべきものかどうかということが、極めて疑わしいと言わざるを得ない内容です。

先の議会で、第1段階整備で、都市再生機構と民間の直接取引で可能であるにもかかわらず、川崎市が購入した上で民間に貸し出すという仕組みにしたのはなぜか、と質問したのに対して、明確な答弁がありませんでした。改めて伺います。

第2段階整備で、貸した土地に民間が建てた建物の床を市が借り受けるという複雑な仕組みにしたのはなぜか、という質問に対して、「企業や大学の誘致などについて」「民間の資金やノウハウを活用すること」「羽田空港の再拡張・国際化を捉え、早期の事業化を図る」「環境、ライフサイエンス分野の拠点形成をめざす上で、民間と連携した取組が必要である」という答弁でした。

しかし、「民間の資金やノウハウの活用」というなら、土地取得も含めて、民・民の契約で事業を進めればいいことで、市がわざわざ土地を買い取ったうえで、その土地を貸し、そこに民間に建物を建ててもらう必要はありません。
また、「早期の事業化を図る」ということについても、どこの企業や大学を誘致するのか、市が土地を買い取ってまで“誘致”する必要があるのかなど、慎重な検討もないままで事業化先にありきでは、かつての「マイコンシティー」の二の舞になりかねません。

さらに、「拠点形成を目指すうえで民間と連携して取り組みが必要である」ということについても、充分な説得力はありません。

市は、研究施設を核に物流や空港関連、商業施設を集め、活性化の拠点とするとしています。市長も記者会見で、「日本の成長戦略をけん引するような研究機関を集めたい。そうなれば、ホテルやコンベンションなどの提案も自然に出てくる」としていますが、現実には、実中研が中核施設としてようやく位置づけられただけです。

成長戦略をけん引するような研究機関の立地も、どのように位置づけられるのかは未知数で、それを前提に、ホテルだ、コンベンションだと、構想だけが膨らんでいくのは、あまりにも無責任で、杜撰ではないでしょうか。

莫大な投資をすることについても、その結果どういう展望が開かれるのか、何も担保できるものはなく、一か八か賭けてみるしかない。はっきり、決まっているのは企業誘致のために莫大な資金を投入することだけです。これでは、到底、市民の理解と納得は得られません。改めて明確な答弁を求めます。

さらに、第3段階も同じようなスキームで企業誘致を図るのではないかとの質問に対しても、「進捗状況に合わせて今後検討する」と答えるだけで否定しませんでした。これでは、企業を誘致するために、川崎市が土地を購入して進出企業に貸し付けるスキームを際限なく続けることになりませんか。伺います。

次に、衛生研究所・公害研究所の民間委託についてです。

衛生研究所では、市内で最初の新型インフルエンザの患者が発生し、ウィルス検査で「新型」と確定した直後に視察しました。

新型インフルエンザの対応については、発生後、国内でいち早くWHOから独自に情報収集を行い、迅速にウィルス特定を行うなど、優秀な人材と質の高い研究活動が、いかんなく発揮されたことが分かりました。まさに、市民の健康と命を守るかけがえのない施設であることを改めて痛感しました。

また、市が行政処分を下す上で、根拠となる正確なデータと資料を提供する重要な役割を持っていることも分かりました。

公的に欠かせない研究、調査、検査結果が行政処分の対象となることからも、民間委託すべきではありませんが、見解を伺います。

公害研究所を環境総合研究所とすることについてです。

政令指定都市移行後に、公害局設立に合わせて設置された施設ということで、公害根絶に向けた行政の取り組みの中で、重要な役割を果たしてきた施設です。

公害を監視するための調査研究、多摩川や川崎港の水質浄化、生態系の調査などが行われています。子どもたち向けに、環境学習会なども取り組まれ、環境情報の発信拠点として重要な役割を果たしています。また新たに、地球温暖化対策、PM2.5など大気汚染改善など環境対策への取り組みに役割を発揮することが求められるわけですが、先の予算議会代表質問では、環境対策に関する高度な専門性を確保しつつとしながら、「効率的・効果的な運営手法を検討していく」と答えました。公害研究所としての役割を踏まえ、公害対策の科学的基盤を支える調査・監視・研究機能については維持、向上させるべきです。直営施設として維持すべきですがうかがいます。

次に、自治体の産業政策としての課題についてです。

全国の自治体で、同様の先端医療研究事業について補助金を交付して、競い合うように研究が取り組まれています。
横浜市でも、理化学研究所を中心に、「横浜バイオ医薬品研究開発センター」事業が、09年度産業技術研究開発施設整備費補助金事業に採択されています。

慶応大学だけでも、藤沢市、長崎県、港区、京都市教育委員会、大分県中津市、山梨県及び富士吉田市、山形県及び鶴岡市と自治体連携で研究が取り組まれています。

製薬会社を先頭に民間企業も競って研究競争が激化しています。

研究活動を自治体が支援することを一般論として否定するものではありません。しかし、基礎研究分野というのは、成果が上がるまで長い年月をかけ、莫大な費用をかけても形にならないことも多々あるわけです。そういう分野については、当然国が取り組むべき分野であり、1自治体が取り組むには、極めて冷静な判断がもとめられ、慎重の上にも慎重を期すべきと考えます。

ましてや、純粋に研究活動として支援するのではなく、その研究施設を核拠点にして、殿町地区に産業集積を図るまさに産業政策として支援するということならば、他都市の事例でも、自治体が旗を振って先端産業集積でこれまで成功した事例を見たことがなく、別途の考慮が必要です。

川崎市が先端医療研究開発競争に参入する産業政策としての展望はどこにあるのか、伺います。

山形県などでは、慶応先端生命研究所に、県と鶴岡市で、45億円投資し、さらに、06年以降も毎年7億円を2010年度まで5年間で35億円を投資する計画です。

その35億円については、どのように運用されているか報告を受けていないというずさんなものです。

今後、川崎市としてインセンティブとしての財政支出を検討するのか、今回の土地取得以外の財政支出は、無いと言い切れるのか、伺います。

土地取得に関連してマスコミも、連絡道路の大田区との協議が進んでいないことを上げたことに対して、市長は、「国際化で周辺道路の混雑などが出てくれば、展開は変わるのではないか」と述べていますが、その程度の位置づけなら、連絡道路を整備する必要性はなく、連絡道路計画は、見直すべきですが、伺います。

*******再質問********

再度、市長に伺います。

市長は、市内中小企業を優れたものづくり技術を有し、日本のものづくりや川崎の産業を支える重要な存在として、総合的体系的に取り組んでいるということですが、予算議会でも指摘したように、予算規模で比べれば、融資を除けば約10億円で一般会計の約0.2%でしかありません。今回の土地取得予算の半分以下です。

これで、十分に取り組んできたと胸を張って言えるのか、市長に伺います。

ライフサイエンス分野の産業が、我が国の国際競争力を高める未来産業であり、中長期的に中小企業を支えていくものということですが、そういう触れ込みで、全国各地でライフサイエンス分野の特区や産学公民連携事業が進められています。

鶴岡市でも、慶應先端研は、「生命科学で世界をリード」しているとして「鶴岡バイオクラスター形成プロジェクト」を重要な戦略として、世界中から研究機関や研究者・技術者を集めると言って取り組まれています。どこでも、世界をリード、先導していると言い合って取り組まれています。しかし、そこでの研究成果は全て、市外国外で具体的に生かされる一方で、鶴岡市では、地域で産業化が図られたケースはないということです。

また、製薬会社が少ない負担で研究施設を利用し、その成果で大きなもうけを上げる構図になっているとの指摘もあります。そのため、「バイオ栄えて民滅ぶ」と自治体として取り組む意義、目的に、疑問が出ていると側聞しています。

ライフサイエンス分野として、研究開発は行っても、産業化を図る必然性はないわけですから、どこでもこういうことが起こっています。

市長の言うように将来の市内中小企業を支えることができる産業どころか、産業として根付くことすらままならないと考えますが、市長の見解を伺います。