議会報告

2019年10月7日

決算審査特別委員会で総括質疑~石川議員


IMG_81242019年第4回川崎市議会定例会で10月4日、石川建二議員が決算特別委員会で総括質疑をおこない、2018年度決算の財政状況と減債基金、川崎市障害者優先調達、市民救急救命士等養成の応急手当講習などについて質問しました。

石川議員は、「『財政が厳しい』という根拠について、『消費税率の引き上げの延期』『法人市民税の国税化』『ふるさと納税』などの減収を(市は)理由にあげましたが、それらの影響があっても、市税収入、財政力指数、財政健全化指標、減債基金の残高など、どこから見ても『財政は厳しい』とは言えないことは、この間、何度も述べてきたとおりです。さらに、このことを理由に(減債基金から)『借入』を行ったからと言って『財政が厳しい』とはならないことも述べてきたとおりです。結局、『財政が厳しい』という根拠は、最後まで明らかにされませんでした。小児医療費助成制度、認可保育園の不足など『遅れている』という認識は(市には)ないのか、との質問に対して、これまでの実績を答弁されましたが、それでも政令市で最も遅れた状況にあることに変わりはありません。『遅れている』という認識に立ち、抜本的な予算規模の引き上げが必要です」と総括質疑の最後に意見を述べました。

石川議員が行なった総括質疑の初回質問は次の通りです(議事録ではありません)。
 

決算審査特別委員会での総括質疑

私は、日本共産党を代表して、決算審査特別委員会の総括質疑を行います。

最初に、2018年度決算の財政状況と減債基金についてです。

 川崎市の決算について、市税収入は5年連続過去最高であり、財政力指数は10年以上政令市トップを続け、市債償還のための減債基金は100億円積み増しして2300億円を超え、財政健全化指標は、極めて優良であることを示し、川崎市は政令市で最も豊かな財政を持つことを明らかにしました。

 また、私たちは「財政が厳しい」という根拠について一つ一つただしてきました。質疑では「収支不足が出ている」ことを「財政が厳しい」理由にしていましたが、他都市も行っているように、収支の足りない分は、減債基金の積立額を減らして対応すれば収支不足も出ず、借入れる必要もありません。「扶助費の増大」も厳しい理由に挙げていましたが、一人当たりの扶助費の額は政令市平均を下回っており、「福祉の増進」という地方自治体の役割から言っても財政が厳しい根拠にするべきではありません。「減債基金からの借入」を厳しい理由に挙げていましたが、減債基金残高は、政令市平均の2倍、市債償還額の7年分にもなります。8年後には3000億円を超えることからみて、現時点でも将来的にも「減債基金からの借入」を「財政が厳しい」根拠にすることはできないことは明らかです。

「将来の市債償還財源の確保を困難にする」という答弁もありました。しかし、減債基金からの借入をこのまま続行した場合、10年後の決算時の残高は、3052億円、実質公債費比率9.1%です。収支不足分を「借入」せずに積立額を減らして対応しても10年後の残高は2807億円、実質公債費比率9.1%です。実質公債費比率の早期健全化基準25%と比べてもはるかに低く、全く問題はありません。残高にしても、その間の償還額の9年分にもなりますので、全く問題はありません。いったいどういう事態があると「市債償還が困難になる」というのですか、市長に伺います。

 減債基金からの「借入」という手法についてですが、まず、「借入」という手法をとっている政令市は川崎市だけです。なぜ、この手法をとるのかとの質問に対して「財政の透明性と規律」を維持するためという答弁でしたが、他都市が「借入」以外の手法をとっていて、財政の透明性や規律が損なわれたという話は聞きません。「市民の支出を抑えるためか」との質問に対しては「支出を抑制するためではない」という答弁でした。「借入」という手法は、「透明性」の確保のため、「支出抑制のためではない」というのであれば、「借入」という事実を示せばいいだけで、「財政が厳しい」という必要はないのではありませんか、市長に伺います。

さらに減債基金は「将来を見据えて、乗り越えなければならない課題の解決」のために使うという答弁でした。まさに少子化対策や防災対策などは、将来、乗り越えなければならない課題です。しかし、現状は子育て施策でいえば、認可保育園の保留児童数は2700人以上にのぼり、小児医療費無料化も政令市で最低レベルです。防災対策にしても、この間の台風・豪雨、震災被害を見れば、待ったなしの課題です。少子化対策や防災対策について、抜本的に予算規模を引き上げるべきです、市長に伺います。

4款1項2目、母子保健事業費における産後母子ケア推進事業費についてです。

産後母子ケア推進事業は、身体的・精神的に大きな負担がかかる出産直後において、育児に不安を抱える方などへの適切な支援につながる重要な事業です。この事業費の2018年度決算は2815万円余で、2017年度決算額2000万円余から約800万円増えています。その理由は、昨年度に比べ利用者が1.7倍になったからとのことですが、2018年度の出生数13,816人のうち、利用延べ数は635人わずか4.6%です。この事業の自己負担額は、横浜市の宿泊型6,000円、通所型2,000円と比べ、川崎市では、宿泊型18,000円、日帰り型4,000円と高いことから、利用できない方が多いということではないでしょうか。利用者アンケートの中でも、「費用を下げてほしい」との声があります。分科会では「事業の重要性からも、助成額を増やして多くの方が利用できるようにすべき」との質問に、「今後さらに支援を必要とする方が確実に利用できるようにしていく」との答弁でした。であれば、助成額を増やして、安心して利用できるようにすべきです。伺います。

5款5項2目、重度障害者入浴援護事業費についてです。

本市の入浴利用回数は月6回、夏期は月8回となっています。利用している方や川崎市肢体不自由児者父母の会連合会からは、訪問入浴回数を年間を通して月8回にしてほしいと強い要望が寄せられています。横浜市では週2回、夏期は週3回利用できます。月6回というのは5日に1回しか入浴できないことになります。夏期でも4日に1回ほどの入浴になりますが、この間の猛暑を考えるとき、これではあまりにも少なすぎます。抜本的に増やすべきですが、せめて横浜市のように年間を通し月8回利用にすべきです。伺います。

また、川崎市のサービス利用料は、市民税非課税世帯では無料ですが、課税世帯では納税額に応じて100円、200円、400円となっていますが、市民税額所得割が46万円以上の場合は全額自己負担となっており、その額は1回12,500円にもなります。大阪市は、所得税課税は一律400円の負担です。分科会の質疑では、「他都市の状況を踏まえ、本事業のあり方について検討していく」との答弁でした。早急な検討を行なうべきです。伺います。

川崎市障害者優先調達についてです。

本市は2013年から「川崎市障害者優先調達推進方針」を策定し、各局・区で障害者優先調達に取り組んできたとのことですが、直近3年間の実績を見ても、発注件数は80件、契約金額も3千万円台にとどまっています。この実績は、人口100万人以上の政令市11市のなかで最下位です。神戸市の5億8,242万円を筆頭に、1億円以上の実績を上げている政令市は7都市もあります。分科会では毎年の調達目標を「前年度を上回るよう設定している」との答弁でしたが、「かわさきパラムーブメント」を推進する本市としては、神戸市並みの調達目標を定めるべきと考えますが、見解を伺います。

5款7項7目成人保健対策費 がん検診についてです。

 本市健康増進計画「第2期かわさき健康づくり21」の取組目標に「がん検診受診率の増加」を指標に掲げています。2021年度の目標に対し、2018年度実績をみると、目標達成までには大きな隔たりがあります。大腸がん検診は目標30%に対し19.6%、乳がん検診でも目標30%に対し18.1%で、ともに昨年度より受診率は後退しています。受診率向上に向けた施策について質しましたが、電話や郵便によるこれまでの延長線上の受診勧奨を拡大して行うとのことでした。受診勧奨のみでは受診率が上がらないことは実績が示しています。

がんの早期発見、早期治療のために受診率を上げる、抜本的な改善が必要です。「がん検診受診率を政令市トップレベルに引上げる」というのであれば、現行のがん検診費用を引き下げ、受診率の向上を図るべきです、市長に伺います。

関連して、胃がんリスク健診は胃がん罹患予防に大きな効果があるとされています。胃がんリスク健診への検査費用の助成を行い、検査料の軽減化を図っている自治体もあります。本市でも助成を行い、予防にも力を入れるべきです、伺います。

5款4項1目老人福祉費紙おむつ介護用品についてです。

 在宅の要介護高齢者を介護する家族の負担軽減を目的に紙おむつが支給されています。しかし、要介護高齢者が入院した場合は支給が打ち切られます。分科会で入院後も継続支給するよう求めましたが「本事業の給付条件を拡大することには、慎重な検討が必要である」との答弁でした。しかし、入院期間は在宅生活より経済的負担が増します。2018年度の入院により給付を停止、廃止した件数は107件。停止額は推計で約127万円です。本事業は要介護高齢者の家族の経済的負担軽減を図る事業です。入院中も継続支給するよう改めるべきです、伺います。

12款1項1目市民救命士等の養成の応急手当講習についてです。

 本事業で行われる市民救命士養成講座は「行財政改革プログラム」に位置づけられ、2017年度から川崎市消防防災指導公社に100%外部委託されました。受講者を受益者として受講料を有料化しました。その結果、有料化前の2016年度と比較し、2017年度の受講者数は半減し、2018年度は61%と受講者数は大幅に減少したままです。

特に学校関係の減少は著しく2016年度3,436人から2017年度は984人に減少し、2018年度はさらに減少して749人になりました。中学生の受講者数は1,077人から141人、13%に激減しました。生徒が、講習を通して命の大切さや救命の重要さを学ぶ機会を有料化したことの見解を質したことに対し、「中学生についても、職種年齢を問わず負担していただく」との答弁でした。生徒からも受講料を徴収していることについて、市長の見解を伺います。

 応急手当講習は、心肺蘇生やAEDの使用法、止血法などを市民が身に付け、一般市民の救命に貢献するものです。2018年に救急隊が到着前に市民が心肺停止者への救命処置を行った件数は1,287件中530件、41%に市民が救命処置に当たっており、応急手当ができる市民救命士を増やすことが、市民の命を守ることに大きな貢献をしています。救命に貢献する市民救命士を「受益者」と考えているのか、市長に伺います。受講者の自己負担はやめるべきです。市長に伺います。

10款4項2目木造住宅等耐震対策推進事業についてです。

 耐震性の不足する木造戸建て住宅は2015年度末で3万5000戸あり、2020年度の目標である95%を達成するためには、8900戸の耐震化が必要です。しかし、2018年度の木造住宅耐震改修助成事業の実績は40戸、決算額は前年度より43%少ない2980万円と目標達成には程遠い実績でした。川崎市の木造住宅耐震改修に対する助成制度の内容は、課税世帯では、耐震診断で15万円を限度に、また、工事費用は85万円を限度に、それぞれ、事業費の3分の2の補助を行い、非課税世帯では、耐震診断15万円、工事費135万円を限度に4分の3の補助を行っています。本市で最も耐震改修工事が進んだのは、2011年の東日本大震災直後、市も補助金の限度額を、課税世帯200万円、非課税世帯300万円まで引き上げたときでした。限度額が増額された5年間の推移をみると、2011年度71件、12年度125件、13年度142件、14年度78件、15年度86件と増加しました。現行の補助内容に下がってからは、16年度57件、翌年度も60件、そして2018年度が40件と低迷しています。市民の防災意識の高まりとそれを改修工事に結び付ける市の補助の増額が、木造戸建て住宅の耐震化を促進したことは明らかです。現在、地震災害だけでなく、自然災害への市民の関心は高まっています。耐震改修事業は、市民の命に直結した事業であることから、さらなる事業の推進が必要です。東日本大震災後の対応のように、補助額を引き上げるべきです。市長に伺います。また、補助率を設定し、自己負担を求めるやり方は改め、横浜市が実施しているように、補助率を用いずに、限度額まで補助ができるようにすべきですが、市長に伺います。

公契約制度についてです。

 2011年に公契約条例を施行して8年ですが、2018年度の特定工事請負のうち公契約が占める割合は金額ベースで23.7%、2017年の56.5%から約6割減となっています。理由は大規模工事がなかったからとのことですが、大規模工事があるなしで、これほど左右されてしまうというのが実態です。

この一番の原因は、6億円以上という公契約の適用範囲額にあります。分科会の質疑でその根拠について「適用範囲額を議会承認契約額としているため」との答弁でした。しかし、神奈川県内でも本市の後に公契約条例を制定した相模原市や厚木市など、少なくない自治体で適用範囲額を議会承認契約額よりも低く設定しています。

分科会では、2018年度、適用範囲額を相模原市と同額の1億円以上とした場合、公契約の割合は23.7%から68.7%まで広がることが明らかになりました。分科会の答弁で、実効性確保のために「多くの労働者を対象にする」というのであれば、適用範囲額を引き下げるべきではないですか、市長に伺います。

7款5項1目雇用労働福祉費の就業マッチング事業費について伺います。

キャリアサポートかわさきの2018年度の就業実績は、登録者966名中490名です。そのうち正規雇用が145名、契約、派遣、パートの非正規雇用は345名。非正規の方は全体の71%となります。17年度の本市の就業構造基本調査結果では、非正規雇用の割合は32.6%ですから、分科会の中で答弁があった「正規雇用が基本」というキャリアサポートかわさきにおいて非正規雇用が71%という数字はあまりに高すぎます。そもそも正規雇用者の数値目標をもたずに、「正規雇用が基本」とはいえません。目標をもつべきです。伺います。

4か月後の離職率も20%と高い数字を示しておりますが、17年度の正規、非正規の離職率は正規11%、非正規26%と非正規の方が高いという調査結果です。本市でも、正規雇用の定着率を引き上げる施策が必要です。伺います。

11款1項1目のうち既設公園リフレッシュ事業など、公園の改修・整備についてです。

この事業などで整備された公園について、近隣の住民の皆さんから大変な喜びの声が寄せられています。同時に「うちの地域の公園もリニューアルしてほしい」との要望も強く寄せられています。審議の中で公園の整備・改修の件数があまりに少なくテンポが遅いことが明らかになりました。全市の5年間の既設公園リフレッシュ事業の実績は5年で87カ所、年平均17カ所です。全市で公園・緑地は1264カ所ありますから、公園1カ所あたり73年に1回しか改修が行われない、ということになってしまいます。市民にとって最も身近な地域社会の核となる公園が何十年も改修・再整備されない現状を改め、件数・テンポを大幅に引き上げるべきです。伺います。

以上で質問を終わります。