議会報告

2020年3月6日

高速大容量の校内通信整備予算を質疑~片柳議員


IMG_20673月3日、片柳すすむ議員(川崎区)が日本共産党を代表して、追加提出された補正予算議案(議案第60号 令和元年度川崎市一般会計補正予算)について伺しました。

片柳議員の質問原稿(初回分)はつぎの通りです(議事録ではありません)。

代表質疑

議案第60号 令和元年度川崎市一般会計補正予算についてです

この議案は国の補正予算を活用して、市内の全ての学校に高速大容量の校内通信ネットワークの整備を行うものとのことです。

しかしそもそも、文部科学省の審議会は2016年に、地域ごとにインターネット環境が異なることや健康への不安があることから、デジタル教科書の「全面的な導入を拙速に進めることは適当ではない」と否定的な報告をしていました。ところが昨年11月の経済財政諮問会議で安倍総理大臣が「パソコンが1人あたり1台となるのが当然だ」「国家意思として明確に示すことが重要」などと発言し、その後すぐに国の補正予算として具体化に移されたものです。

またこの「ギガスクール構想」は、2022年度までに1人1台端末を実現して全ての授業でフル活用し、全国学力テストでも端末を利用するという計画です。しかも経済産業省の研究会による提言では、そうした公教育での活動で得られたビッグデータを民間企業が利用できるようにする環境整備まで求めています。

今回の補正予算は、約46億9千万円、市の負担は約26億2千万円とされていますが、今後も「1人1台の端末」の整備が2023年度まで順次必要となるのに加え、さらに文科省が5か年計画で示しているように大型提示装置、実物投影装置、ICT支援員などの整備が求められることになります。その一方で、国が負担するのは今回のネットワーク環境の整備や1人1台の端末の本体部分の初期投資のみで、今後予想されるアプリの更新やネット環境の維持整備などのランニングコストは市が負担することになります。また数年後に必要となる端末の買い替えを国が負担するのかどうかはまだ示されていないとのことです。

市の試算によると、こうした国のロードマップに基づく、1人1台端末の整備事業費と既存の整備事業費や今後のランニングコストは、市の負担する一般財源だけを見ても2020年度に9億8千万円、21年度16億9千万円、以後24億9千万円、28億9千万円となり、その後も毎年25億円余りの一般財源の支出が見込まれています。国と市は対等の立場です。国が求めたからといって国の言いなりに市にも巨額の負担を求める補正予算を計上する必要はないと思いますが、伺います。

国はこの補正予算による1人1台端末環境は、「個別最適化された学び」や「創造性を育む学び」に寄与し、「教員の負担軽減にも資する」などといいますが、果たしてそうでしょうか。

法政大学の児美川孝一郎教授は、「集団での学びは『型』からはずれたような発想をする子がいて、そこからみんなが学ぶことで、考えが深まるということがあります。『個別最適化』で効率よく学ぶだけでは学ぶ過程が平板になり、深みがありません」と指摘しています。

児童・生徒が個別に異なる課題にそれぞれ取り組むことが中心になれば、子どもの学びが分断されたものになってしまうのではないでしょうか。そうではなく集団の中で同じ課題に取り組み、お互いの意見や考えを尊重しながら学ぶことこそ、人格の完成をめざす学校教育として重要ではないでしょうか。「集団での学び」にはどのような意義があるととらえているのか、教育長に伺います。

人格の完成をめざす豊かな学びを実現するためには、教員の指導の充実やそのための条件整備こそ必要であり、市も重要な課題として取り組んできたのではないでしょうか。

市立小学校での不登校生徒の出現率は、2014年度の272人から2018年度には529人へ、中学校では2014年度の1003人が18年度には1338人へと大幅に増えています。その主な原因は小学校では「家庭に係る状況」、中学校では「学業の不振」となっています。市の研究指定報告で「一人ひとりの子どもに目が行き届き学習のつまづきや個人の学習進度等に応じた指導が可能」「家庭環境が問題ある生徒に時間をかけて話せ、保護者にも家庭訪問などができた」と指摘されている、少人数学級を拡大することなどが切実に求められています。

川崎市で2019年度に35人以上の過大規模学級となっていたのは、小学校では3年で27校、4年35校、5年30校、6年16校で計108校です。中学校では1年34校、2年31校、3年26校で計91校に上ります。20政令市のうち独自に少人数学級を実施していないのは本市ふくめ4市のみで、少人数学級は当然の流れです。

ただでさえ教育現場には「小学校で4月からはじまるプログラミング教育もいまだ何をすればいいかわからない」「専門的な指導方法を学んでいない英語を教えさせられるのか」と国の方針に振り回されています。それに加えて、国が経済界の求めに応じて強硬に「1人1台の端末」を押し付けるようなやり方を進めるのは、あまりにも優先順位を間違えていると言わざるを得ません。

今回の補正予算では市の負担分は26億2千万円にのぼります。これは、本市が独自に小学校3年生から6年生と中学校3学年で35人以下学級を2年以上実現できる予算規模となります。また来年度の9億8千万から毎年順次整備予算が増え、2024年度以降には毎年25億円の一般財源の負担を続けざるをえなくなることが見込まれています。

この25億円は、市独自に少人数学級を小学校3年から中学校3年生まで拡大することや過大規模校を解消すること、学校図書館司書を配置することなど、切実に求められている学習環境の整備にこそ向けるべきではないでしょうか。市が裁量を発揮して、子どもが豊かに学ぶ学習環境整備に足を踏み出すべきですが伺います。