議会報告

2020年4月24日

台風に関する検証最終報告書案について代表質疑~臨時会で石川議員


IMG_4164川崎市議会第2回臨時会で4月23日、日本共産党の石川建二議員が、昨年の東日本台風に関する最終検証報告書にかかる行政報告について、質疑を行いました。

石川議員の質問原稿(初回分)はつぎのとおりです(議事録ではありません)。

日本共産党代表質議

私は日本共産党を代表して、「令和元年東日本台風に関する検証最終報告書案」にかかる行政報告について、質疑を行います。

資料1、災害対応検証報告書についてです

 報告書の「はじめに」では、「これまで本市の災害対応では、地震への災害対策を基本に、風水害時にもこれを準用する対応としてきましたが、今回の災害対応の経験から、…これまでの対応を改める必要が明らかになりました」とあります。そうであるならば、風水害対策は「震災の準用」ではなく、災害対策の中にきちんと位置付けるべきと考えますが、市長に伺います

 報告書の検証、「情報の収集・分析」についてです。「雨量予測の広範囲の収集」では「多摩川上流地域の雨量状況は把握していたものの、その雨量が多摩川の水位にどれだけ影響があるかという、流域雨量の予測等が困難」だったと書かれています。しかし、2007年9月の台風の際、川崎市内の降雨量は少なかったにもかかわらず、多摩川が氾濫危険水位を超えて増水し、議会でその原因が小河内ダム周辺の降水量がたいへん多かったことによると答弁がありました。多摩川上流地域の雨量は測定されており、それによる影響抜きにした対策はあり得ません。多摩川や鶴見川にはさまれた本市にとって、それらの川が増水したときの市内に及ぼす影響を、あらゆる対策の基本に置くべきだったし、これからも置くべきと思いますが、うかがいます。

等々力排水区地域の浸水についてです。

 等々力緑地が位置する等々力排水区は、自然流下で雨水を排除する自然排水区域と等々力ポンプ場のポンプで雨水を排除するポンプ排水区域で構成される約125haの排水区です。各排水区域の雨水は、等々力ポンプ場内で等々力水処理センターの放流水と合流し、放流渠から多摩川に排水します。

 今回の浸水は、多摩川の水位の上昇に伴い、排水区内の自然排水区域の幹線の流下が滞ったため、地盤高の低いマンホールなどから溢水し内水氾濫がおき、その水がより低い位置にあるとどろきアリーナ、市民ミュージアムへと大量に流れこみ甚大な被害となりました。また、一時的な道路冠水が等々力の住宅地内にもあったとのことです。自然排水区域には住宅が密集していることから、等々力排水区全体として排水機能の向上を検討すべきです。伺います。

委員会の報告では、多摩川からの逆流はなく、多摩川の水位が上がったことから各排水区からの雨水と等々力水処理センターの放流水が合流する接合井からの水が流しきれず溢れたとのことです。今後の対策として、自然排水区内からの雨水をくみあげるポンプを整備することは検討できないか、伺います。

市民ミュージアムについてです。

検証結果では、過去の台風でもミュージアムが浸水した実績がないことなどを理由に「内水氾濫の要素を除くと、台風による風雨への対応としては事前及び接近後も必要な対策はとられていた」としています。

しかし台風により多摩川の氾濫が起こりうること、その際にはミュージアムでは5mから10mの浸水がありうることを想定して対策をとっておけば、収蔵品の被害は最小限にとどめられたのではないでしょうか。

東日本台風は「史上最大規模の台風」などと連日報道されていました。また10月12日17時50分には田園調布(上)水位観測所で「いつ氾濫してもおかしくない状態」とされる氾濫危険水位を超過する「警戒レベル4」と発表。「当分の間、氾濫危険水位を超える水位が続く見込み」と報道されていました。当然、「氾濫危険水位を超えた」との情報に接した時点で、市と指定管理者には、想定し得る最大規模の5m~10mの浸水想定を視野に入れた対応が求められていたはずです。

しかし市の対応は、その直後の18時の時点で指定管理者に対し「状況に変化があれば連絡するように指示」することにとどまりました。「氾濫危険水位」を超えたという状況を12日夜の段階でどのようにとらえていたのか、伺います。

先日の文教委員会では、厚い扉で守られ温度と湿度も管理されている地下収蔵庫から収蔵品を移動させること自体にリスクがある、と言われましたが、収蔵品の移動のリスク検討が行われた事実はなかったとのことでした。少なくとも「氾濫危険水位」を超えた時点で、多摩川の氾濫の場合に5m以上の浸水になり得ることを踏まえて、緊急に収蔵品の移動のリスク検討などを行うべきだったのではないでしょうか。伺います。

排水樋管周辺地域及び河川関係の浸水に関する検証報告書についてです

はじめに山王樋管周辺地域についてです

3月に示された中間報告で「早く閉めることができても浸水規模はほとんど変わらない」とされていた検証結果が、最終報告書案では「早く閉鎖できれば規模は小さくなる」と訂正されました。この検証結果をもとに、排水樋管の操作手順の見直しがされ、これまで「降雨やその恐れがある場合は、水門全開を維持する」としていたものが、逆流時は水門を閉鎖すると改められました。こういう見直しがされたということは、以前の操作手順は間違いだったと考えますが、見解を伺います。

宮内・諏訪・二子・宇奈根の各排水樋管周辺地域についてです

台風当日のゲート開閉の検証では、「樋管ゲートを開くことを維持することで、浸水規模は閉鎖したときより小さくなる」「ゲートを閉じた場合は、河川水の逆流はなくなるが、内陸の排水先の行き場がなくなり、雨水が滞留し浸水する」とのことです。

対策では、宮内地域は、当日の降雨、河川水位の条件で、フラップ機構付きゲート、新たな手順、排水ポンプ車1台を稼働した場合でも、床上浸水相当は約11000㎡から約52,000㎡で約5割の減少にとどまります。宇奈根地域についても同様の対策で、床上浸水相当は約75000㎡から約40,000㎡と宮内地域と同じ5割の減少です。諏訪地域は、排水ポンプ車2台を稼働させても、浸水地域は約134.000㎡から79.000㎡で約4割の減少。二子地域は排水ポンプ車1台で約1万1千平方㍍から約700平方㍍で9割減少するものの、他の浸水地域は5割以上残っています。浸水被害にあった当事者のみなさんにとって、「ゲート操作手順の見直しをした」「排水ポンプ車の配置をした」ということだけでは希望が見えず、納得のいく対策とはいえません。具体的な対策の強化が求められます。浸水地域をゼロにするために、どの様な対策をはかるのか伺います。

短期対策についてです。

フラップゲート化の整備の効果についてです。

宮内と宇奈根の2か所で整備をする理由と有効性について、整備スケジュールを伺います。地域への周知についても伺います。

ポンプ車の増強についてです。

ポンプ車を配置する場所については、事前に近隣の民間企業の敷地を借用できるように協力要請してポンプ車を増やして対応すべきです。伺います。また、近隣の自治体など協定を結んでポンプ車の派遣要請できる体制をはかるべきです。伺います。

雨水貯留施設や管きょ施設などの整備についてです。

 雨水駐留施設の雨水調整池や管きょ施設の増補管・バイパス菅・導水管、樋管ゲートなど、事業期間が5年程度とされる対策です。排水地域を見直し前倒しをして整備を推進すべきです。伺います。

宮内排水地域内にある各学校のグランドや公共施設など整備が必要と考えます。この地域でいえば、大谷戸小学校を含め小中学校が6校あります。教育委員会はこれらの学校のグランドが雨水貯留施設になっているのか把握していないとのことです。速やかに他の排水地域を含めて関係局と連携し調査をし、整備計画をたてるべきです。伺います。

宇奈根排水樋管周辺地域では、検証委員会が行った浸水シミュレーションによれば、当該排水区内の地表面に溜ったピーク湛水量約10万㎥は、53%が逆流した河川水、47%が排水できなかった雨水と算出されています。このデータに基づけば、逆流防止対策だけでなく、内水排除対策が必至です。堰排水区約120ヘクタール内には現在3本の雨水幹線があり、排水能力は合わせて毎秒6.536㍉㎥で、1時間当たり52㎜の降雨にも対応可能とのことです。しかし、当初の天気予報では1時間当たり50~80㎜の大雨が予想されていました。台風襲来の10月12日、多摩区では1時間当たりの最大降雨量は38㎜でしたが、多摩川の影響を受け浸水被害が発生しました。昨今は1時間当たり100㎜を超える豪雨が全国各地で記録されています。抜本的な雨水排水能力向上のために雨水幹線の強化・拡充はできないのか伺います。

 また、県立向の岡工業高校のグラウンドはこの地域で最も標高が低く、全体が1m以上浸水しましたが、短期対策を施しても同様に浸水します。それならば、このグラウンドを県とも協議し、雨水貯留施設として活用すべきと考えますが、伺います。さらに、今回の浸水地域以外でも、雨水流出を抑制する対策が必要と考えます。堰排水区内の指定避難所である久地小学校の校庭も雨水貯留施設として整備すべきです。伺います。

 排水地域への住民への説明などについてです。

二子地域では、地域住民から、樋管ゲートの開閉訓練の要望があり実施の予定があるということです。町内会とともに適切な時期に訓練を行い、住民と意見交換をすすめるべきです。他の地域も含め検証結果などの説明会を行うべきですが、伺います。

河港水門など川崎区港町地域の浸水についてです

 同地区にある味の素工場の取水口から敷地内に入った水があふれていたことが明らかになりました。取水施設の天端(てんば)高さは4.897mで、河港水門より55cmも低かったため、出水していた時間は19時40分頃から翌日の午前1時10分頃まで約5時間半に及びました。

河港水門と味の素工場の取水口の双方から、それぞれどれだけの量の出水があったのか伺います。シミュレーションなども含めて出水量を把握しているのか、伺います。

味の素工場の取水口は短期対策として閉塞したとのことですが、どのような方法で閉塞したのか、東日本台風なみの洪水にも耐えられるのか、伺います。

中長期的にはこの地点の計画堤防高の6.8mまで天端高さを引き上げることが必要と考えますが、市から企業にそのことを要望しているのか、伺います。

JR京浜東北線ガード部からの出水についてです。

 多摩川にかかるJR鉄橋のガード部の堤防が低くなっている部分から出水していたことが明らかになっていますが、市庁舎や商業施設などが集中する川崎駅前に直結するにもかかわらず今回の検討の対象となっていません。法例基準にてらして不足している堤防高の確保や水衝部対策を迅速に行うよう国に強く求めるべきですが、伺います。

平瀬川の多摩川合流部周辺地域についてです

大型土のう等の設置についてです。

平瀬川の多摩川合流部周辺地域の東久地橋桁下について、大型土のう等で空間をふさぐという短期的対応についてですが、主な第三者意見で「土のうの遮水効果には疑問があるが、一時的な対策としては、このような対策も致し方ない。」「土のうは、流れのある箇所では心配。」「一旦土のうとするが、それほど時間をおかずに止水版のようなものを設置するのであれば、一時的対策として考えられる。」とありました。土のうだけでは浸水を防げない可能性があるのではないでしょうか。伺います。短期対策の最後に「2021年度の台風シーズンまでには、土のうに代わる対策を実施する。」とありますが、これは具体的にはどの様な対策なのか、伺います。

JR南武線三沢川橋梁周辺についてです

 多摩川の水位の上昇により三沢川水門を閉めた時刻が、住宅街の水路が越水を起こした時刻と重なっていますが、検証では、4本の水路からの逆流の可能性について触れているだけで、三沢川水門との関係についての検証結果がみあたりません。三沢川水門の開閉と水路の越水との関係についての見解をうかがいます。三沢川水門の開閉は国の管轄ですが、周辺の住民に開閉の情報がちゃんと届かなければ、避難の機会を逸します。今回、最初に三沢川水門を閉めた時には住民に何のお知らせもありませんでした。どういう手順になっているのか、今後どうするのか伺います。

 上下水道局の浸水対策では、重点化地区に位置づけたJR稲田堤駅を中心とした約148ヘクタールについて、昨年度から国の下水道浸水被害軽減総合事業として推進していますが、今回の浸水被害があった稲田堤3丁目はこの事業の対象になっていません。「速やかに検討する」という答弁でしたが、その後の検討状況を伺います。

 以上で質問を終わります。