議会報告

2020年5月15日

臨時交付金を休業協力金や家賃補助に〜討論で後藤議員が指摘


5月15日の第3回川崎市議会臨時会で採決に先立ち、日本共産党を代表して後藤まさみ議員が討論を行ました。

後藤議員は、川崎市もPCR集合検査場の設置箇所数を抜本的に増やし早急に検査数の引き上げを行うこと、医療機関には、本市が予算を上乗せし特殊勤務手当を引上げ、民間医療機関の減収分補填や患者数が減少した病院や開業医への財政支援を求めました。特別定額給付金を一刻も早く市民に届けるためにも、郵送の発送準備ができたところから順次発送を開始することなどを求めました。

川崎じもと応援券推進事業費であるプレミアム商品券について、「地方創生臨時交付金の使い方について、休業協力金などに使える財源なのに、そのほとんどを商品券に使うことにしたという判断は、完全に間違い」と述べ、臨時交付金を商店や中小企業、個人事業主が強く要望している休業協力金や家賃など固定費補助に使うべきと指摘しました。

共産党は、様々な施策、拡充を求めながらも特別定額給付金など、一刻も早い支給を切望している市民の皆さんの思いに寄り添い、議案には賛成しました。

後藤議員の討論原稿は次のとおりです(議事録ではありません)。

代表討論

私は日本共産党を代表して、提案された議案第75号令和2年度川崎市一般会計補正予算について討論を行ないます。

PCR検査についてです。

質疑では、川崎市の感染状況について、人口10万人当たりの感染者数は、政令市の中で上から4番目に多いにもかかわらず、PCR検査数は下から5番目と低く、感染者が多いのに検査は進んでいないこと。国際的な比較でも人口10万人当たりの検査数は、イタリア、ドイツの3000件、韓国の1200件と比べても、川崎市の152件というのは、10分の一以下であり、日本の190件よりも低い状況です。専門家も「実際の感染者数は、10倍以上いる」とのべているように、今の検査数を10倍以上に上げないと実際の感染者数はつかめないことを明らかにしました。「今回、3か所のPCR集合検査場を設置して、どのくらいの検査数を見込めるのか」と質問しましたが、答弁では、1日当たりの検査数は、現在の94件から「130件程度」になるということで、検査場ができても1.4倍にしかならないことも明らかになりました。これでは、あまりに少なく、実際の感染者数を把握できず、対策の打ちようがありません。他の自治体では、ウオークスルーやドライブスルー方式なども取り入れて、検査場を拡充しています。川崎市もPCR集合検査場の設置箇所数を抜本的に増やし、開設時間を拡大するなどして、早急に検査数の引き上げを行うよう強く求めておきます。

医療機関支援についてです。

神奈川モデルの医療機関支援では、6億3100万円余の予算の範囲内で、協力医療機関には積極的な支援を行うとの答弁でした。しかし、協力病院の確保は難航しており、感染防止のための医療環境の整備、医療資器材の供給、医療スタッフへの特別手当など、コロナ患者受け入れに見合った十分な支援にはなっていません。協力病院は、感染患者受け入れでも、疑似症者受け入れでも、感染リスクと向き合いながら大変な覚悟であたっています。医療従事者への特殊勤務手当は、本市では医師、看護師1人当たり日額3,000円とのことですが、福井県では職務内容によって日額最高4,000円、練馬区でも東京都の日額3,000円に区の予算で上乗せするなど、危険な業務に見合った額への引上げを行っています。本市が予算を上乗せし、特殊勤務手当を引上げるよう求めます。

また、マスクや防護服などの安定供給を求めたところ、「代替品の活用も含めて」との答弁でした。穴のあきやすい雨合羽などでは防護服の機能は果たせません。医療従事者のいのちを本気で守る気持ちがあるのか、市の姿勢が問われます。安全性がきちんと担保される資器材を早急に確保することを強く求めておきます。

医療機関への財政支援についてです。

全日本病院協会の猪口会長の「患者の減少で、6月には資金ショートの病院が相次ぐ」との訴えを紹介し、医療機関への財政投入を行い、経営継続のための支援を求めました。いま、神奈川モデルの医療機関をはじめ受診抑制でコロナ患者に対応していない病院や開業医を含め、患者数が激減し、病院が次々と倒産しかねない状況です。杉並区では新型コロナウイルス感染症患者受け入れによる診療・入院の縮小や増床などによる影響の減収に対して、過去3年間の平時における収入の平均との差額分を助成するとしています。本市でも杉並区のように神奈川モデルに認定された市内民間医療機関の減収分補填を求めておきます。

また、神奈川モデル以外でも発熱外来を設置している地域医療機関を含め、財政支援を求めましたが、今回の補正予算では「神奈川モデルの協力病院に対して想定している。協力病院以外は国の持続化給付金を活用して欲しい」との答弁で本市独自の施策はありません。地域に根ざし住民の命、健康を守る病院や開業医の役割をあまりにも軽視している対応と言わざるを得ません。患者数が減少した病院や開業医への財政支援も求めておきます。

医療従事者の宿泊施設の借り上げ提供についてです。

医師、看護師などの感染リスクの高い医療従事者の家庭内感染の不安と感染防止から宿泊施設の借り上げ提供を求めましたが、「国から示された交付要領で県への交付対象事業となっていることから、県に要望していく」との答弁に止まっています。県への要望だけでなく、先ずは本市が早急に対応することを求めておきます。

福祉施設への支援についてです。

マスクや消毒液等の配布を求めたところ、「流通量の不足状況等に応じ、適切かつ迅速に対応する」とのことです。代表質疑で指摘した通り、現場ではいま、入手してもつぎつぎに不足しているのであり、急ぎ実態を把握し配布するよう求めます。福祉施設の利用者が減少し、運営費が減少する問題についても、市が実施したアンケートで収入減と回答した施設が一定数あることがわかっているのですから、ただちに追加支援策を講じるよう求めておきます。

特別定額給付金給付事業費についてです。

郵送申請について「一刻も早く、5月中に給付をすべき」との質問に対して、発送時期については「5月末から」、給付は「6月中旬から」という答弁でした。市長は「6月中に支給できない可能性もある」と述べたように、このままでは、給付は、7月にかかる可能性もあります。他の政令市では、5月中旬から申請を開始して、5月下旬には給付を開始します。市は遅れる理由について「郵送件数が75万件もある」という答弁ですが、同じような規模の神戸市は15日から郵送申請を開始しているように、これらの政令市に比べ、半月も遅れる理由にはなりません。他の政令市と比較しても、市の対応は、あまりにも危機感がなく、不誠実です。

オンライン申請は8日から始まっていますが、現在、暗証番号の間違えや申請内容の不備などにより、窓口に長蛇の列ができるなど、全国で混乱が広がっています。行政側は「郵送申請のほうが早くて確実」と説明するなど、ますます郵送申請の重要度は増しています。川崎市は、一刻も早く市民に届けるためにも、郵送の発送準備ができたところから順次発送を開始することを要望します。

プレミアム商品券の広報を申請書と同封するということについてです。商品券は、いまだ発送時期もいつかわからず、購入・販売・換金方法も決まっておらず、「これがまとまるのは5月末」という答弁でした。これを待っての発送ではとても間に合いません。郵送申請の発送は、商品券とは別にして、5月中に発送と給付を開始することを要望します。

また、仙台市や新潟市で行っているように、一刻も早く必要とする世帯に給付できるように、申請書をダウンロードしたり、窓口で渡して申請するなどの方法も実施することを要望します。

子育て世帯臨時特別給付金とひとり親家庭等臨時特別給付金についてです。

子育て世帯臨時特別給付金は、全額が国庫負担です。国の給付金に対して上乗せや所得制限をなくして児童手当を受給する世帯にも給付することを求めましたが、答弁はありませんでした。お金のかかる子育て世帯に対して支援を独自に強めるべきです。拡充を求めておきます。

ひとり親家庭等臨時特別給付金については、現時点で予算執行の減が見込まれることから導入し、新たに予算を計上したものではありません。他都市が国の給付金に上乗せや独自に給付金などを創設して支援している事例をあげ、拡充すべきと求めましたが、これについても答弁はありませんでした。子育て世代の厳しい生活の実態をふまえ、本市としてひとり親家庭等臨時特別給付金のさらなる上乗せ、拡充を要望しておきます。

認可外保育施設の保育料減免についてです。

契約等に定められるものとして財政的支援は行わないという答弁でしたが、認可外保育施設を利用するある保護者の方からは、「子ども二人で保育料は月約10万円。感染予防の為と自粛要請に協力したが、なぜ認可、認可外で補助に差が生じるのか、認可外の利用者は市から見捨てられているようだ」と切実な声が寄せられています。5月12日に市が公表した「待機児童数について」によると、利用申請しても認可保育所に入所できなかった保留児童数は2447名。そのため多くの方が認可外保育施設を利用せざるをえなくなっているのです。

また、市は認可外保育施設について「多様な手法を用いて保育受入枠を拡大した」「入所が保留となった方に案内を行うなど積極的に保育受入枠として活用を図った」と述べてきましたが、認可保育所に入園できなかった方に認可外保育施設の利用を促しておきながら、いざ支援となると「契約の問題」と切り捨てることは許されません。認可外保育施設も保育料減免が行えるよう、財政的支援を行うことを強く要望しておきます。

就学援助世帯に対する昼食支援についてです。

昼食支援については、「国の考え方や他都市の状況を注視していく」とのことですが、国ではすでに「コロナ対策による臨時休業期間中においては、学校給食が実施されたこととみなして、学校給食費相当額を支給しても差し支えない」との通達を出しているのです。それを受けて、各自治体で、様々な支援を行っている例を挙げたのに、冷たい答弁が繰り返されました。

新型コロナウイルスの影響が長引く中、子どもの食費負担を軽減する自治体は、さらに増えています。千葉県南房総市では、休校中の小中学生に、昼食を提供する「おうち給食」を4月下旬に始めました。市の担当者は「食費負担が重くなったとの声が増えており、児童の健康を維持しつつ、少しでも家計負担を軽くしたい」と話し、5月中も継続する予定とのことです。藤沢市でも、小中学生に学校で調理したおにぎりやパンなどの軽食を一食100円で提供する取り組みを始めます。

他都市の状況を様子見しているのでなく、本市でも家計の負担を軽減する昼食支援をすぐにでも行うことを、強く要望しておきます。

給食調理員の勤務と給与補償についてです。

PFI事業者と委託業者ごとに給与や休業補償の水準は異なり、3月については6割から10割が補償されているとのことであり、4月と5月の給与等についてはまだ明らかではないとのことでした。

給食の調理に携わっている方からは「勤務日数が大きく減らされている」「勤務のない日は無給にされるのではないかと心配だ」などの声が寄せられています。事業者に給与を補償するように指導することを求めておきます。

学校が再開した際の給食の速やかな提供のためには、継続的で安定的な調理員などの雇用が必要です。市民の生活を守るために、PFI事業者や委託業者任せにせず市が安定した雇用を確保する公的責任を果たすことを強く求めておきます。

ホームレス自立支援センターでの対応についてです。

教育文化会館での対応が終了してホームレス自立支援センターへの入所を促しており、市内3カ所のセンターは定員ギリギリの状態です。しかも厚労省の事務連絡では個室による対応を原則として求めているにもかかわらず、3人から6人の相部屋での対応が続けられているとのことでした。

ホームレス状態から脱して生活を再構築しようと頑張る皆さんを支える市の事業で「クラスター」を発生させることがあってはなりません。速やかに宿泊施設を確保し、スタッフを増員して個室での対応を行うよう求めます。

住居確保給付金についてです。

だいJOBセンターの問い合わせが増加しているため、各区でも申請手続きができるようにすることを求めたところ、だいJOBセンターと5月から開始した郵送で申請手続きを行っているという答弁でした。今、住居確保給付金の申請をされる方は住居を失いつつある方で、インターネット環境もままならず申請書のダウンロードができない状況にいる方も少なくありません。不安な思いに寄り添った丁寧な対応をするためにも、各区役所の窓口で申請手続きができるようにすることを求めます。

学生への支給については、厚生労働省のマニュアル等に基づいて行っているという答弁でした。5月8日に出された厚労省のQ&Aには、昼間の学生であってもアルバイトがなくなった学生は対象になることを明確にしました。マニュアル等での対応を行うとともに、学生のみなさんへもあらゆる手立てを使い制度の周知をすることを要望します。

川崎じもと応援券推進事業費、プレミアム商品券についてです。

商品券の発行時期、換金の時期について質問しましたが、発行時期については「新型コロナ感染症の状況を見定めながら」という答弁でした。換金の時期については、「店舗から使用済みの応援券を送った後に入金となるので、一定程度の時間を要する」という答弁でした。結局、店舗が収入を得ることができるのは、新型コロナ感染が収束した後、さらに4,5か月後だということです。いったい何のための新型コロナ対策支援なのでしょうか。多くの商店は、休業自粛での収入減、家賃などの支払いで、今すぐにでも現金が欲しいわけです。この支援策は、そういう商店の要望とはかけ離れたものです。

委員会では、「すぐにでもお金が必要な事業者に協力金を出すことと、5か月後にお金が入る商品券とどちらが優先順位が高いと考えるのか」という質問に対し、財政局長は「商品券は希望を持ってもらうために必要」と答弁しました。しかし、明日のお金がないとつぶれてしまう事業者に対して、5か月後にお金が入るから「希望を持て」と言って、本当に希望が持てるのでしょうか。地元の飲食店では「今月の家賃が払えない」「明日のお金が必要」「なぜ、外出自粛の時に商品券なのか」という声が多数出ていたのに、市はそういう地元の声を聴いたり、調査してこなかったことも明らかになりました。市の独断だったということです。地方創生臨時交付金の使い方についても、休業協力金などに使える財源なのに、そのほとんどを商品券に使うことにしたという判断は、完全に間違いです。臨時交付金は、商品券にではなく、商店や中小企業、個人事業主が強く要望している休業協力金や家賃など固定費補助に使うべきことを指摘しておきます。

中小企業支援についてです。

他の政令市でも実施している「市独自の休業協力金を支給すべき」という質問に対して、「持続化給付金や県の協力金を活用してもらう」「融資の活用を」という答弁でした。しかし、多くの事業者は、「持続化給付金は使えない」「県の協力金では足りない」と言っているのです。だからこそ、10もの政令市で独自に休業協力金を実施しているのです。本市でも、市独自の予算で休業協力金を創設することを要望します。

「家賃など固定費補助を行うべき」という質問に対しても、同じ答弁ですが、とても、1回限りの給付金や10万円程度の県の協力金では足りないのです。本市でも、市独自の予算で固定費補助を創設することを要望します。

融資制度についてです。

事業者の命綱ともいえる融資制度について、市独自で利子補給を行い、事業者がより借りやすくするよう求めたのに対し、市長は「3年間は実質的な負担はなく資金確保ができる」との答弁でした。これでは、4年目以降は無利子とはなりません。コロナ対策の特別融資については、市も独自の予算を組み、融資期間を通して無利子にすべきことを求めておきます。

税の滞納のある事業者に対しても、「滞納解消に向けた取り組みを十分に斟酌するよう要請している」とのことでした。納税義務を果たそうとしている事業者が融資対象から外されることのないよう、引き続き金融機関に働きかけるよう求めておきます。

文化芸術活動支援事業費についてです。

照明や音響、イベント運営を担う方々も重要な文化の担い手であり、コロナ感染防止のための休業で、これらの方々が廃業せざるを得なくなれば、文化や芸術が継続できなくなってしまいます。答弁では作品の制作にかかわるスタッフも支援事業の対象となるとのことでしたが、予算規模から見てもフォローされるのはごく限られた範囲にとどまります。北海道のようなエンターテイメント業界全体を支援する事業や、市独自の個人事業主・フリーランスへの支援策を行うよう要望しておきます。

補正予算全体についてです。

今回の一般会計補正の予算額は、1781億円ですが、国や県の支出金、融資を除いた市単独の支出は、ゼロということです。川崎市は、政令市の中で人口当たりの感染者数は4番目に多いのに、PCR検査数は下から5番目ということで、政令市の中では、最も感染症対策や支援策が求められる都市のひとつです。それにもかかわらず、市の独自支出はゼロで、他都市がやっている休業協力金や固定費補助もありません。市民からは「やっていないのは川崎だけだ」という声が多くなってきています。他の都市がこれだけ必死に独自の補助を実施している中で、この市の姿勢は異常です。

人口95万人の北九州市は、国の給付事業や融資を除いた独自予算90億円を組んでいます。休業要請に応じた店舗等には上限40万円の協力金を支給。医療機関へは備品購入支援として上限1000万円、感染患者受け入れた病院には1人当たり30万円。その他に医療機関、高齢者・障がい者施設に最大600万円、保育所、幼稚園、放課後児童クラブに最大60万円を支給します。川崎市とは雲泥の差です。川崎市でも、北九州市のように早急に2次補正予算を組んで、市独自の施策として、医療機関、中小企業、個人事業主、高齢者・障がい者施設、保育所、幼稚園などに対して市独自の支援策を創設することを強く求めておきます。財源については、不要不急の事業の見直しとともに、今こそ、減債基金を活用するなど、豊かな財政力を使って財源確保をすることを要望します。

様々な施策、拡充を求めてきましたが、特別定額給付金など、一刻も早い支給を切望している市民の皆さんの思いに寄り添い、議案第75号「令和2年度川崎市一般会計補正予算」には賛成することを表明して、討論を終わります。