議会報告

2007年7月2日

2007年第3回定例会( 6月議会)くらしの負担軽減をはかれ 市古てるみ議員が代表質問(2007.6.21)


2007,07,02, Monday
川崎市議会6月定例会が6月5日から7月3日までの日程で開催。21日、日本共産党から市古てるみ副団長が代表質問に立ち、格差と貧困の広がりの中で重税に苦しむ市民のくらしの負担増を軽減する為の施策を展開するよう市長に迫りました。また、平和を求める市民のつどいの後援をとりやめた問題などを追及しました。

「消えた年金、残った増税」に市民は不安と怒り

自民・公明の政権与党が強行した定率減税の廃止により、住民税額が最高10倍にも跳ね上がる人が出るほど市民に大幅な負担増が押し寄せ悲鳴があがっています。そうした矢先に「100年安心」どころか、6450万件もの年金記録が宙に浮いていることが明らかになるなど、長期にわたる年金のずさんな管理が明らかとなり、国民の不安と怒りがますます大きく拡げています。
市古てるみ議員は、代表質問の冒頭で、こうした状況の中で、日本共産党は一貫して庶民増税に反対し、大企業に応分の負担を求め、「消えた年金」問題では政府と歴代の厚生労働大臣の責任を明らかにし、すべての加入者に対して納付記録を通知するなど、国の責任で解決を図るよう提案しており、引き続きこの立場で取り組んでいくことを表明しました。
市民がこうした生活実態の中にあって、一日も早く子供を保育園に預けて働きたいという子育て世代の願いが認可保育園の不足により阻まれている実態や、私立幼稚園への保育料補助の約束が守られておらず、守ったのは「廃園」だけではないかと追及。多大な出費を負担しながら子どもを預けている実態を指摘し、改善を求めました。
さらに、障害者施策についても、生活介護を受けている人の利用料を就労移行支援と同様に無料化を求めました。

格差・平和で市長の政治姿勢を厳しく追及

市古議員は、給与所得者の平均給与が8年連続で減少し、非正規雇用の労働者が増えている現実は、利潤を最優先する大企業などの雇用戦略に原因があることは明確だと指摘し、社会的要因による「格差」の存在をなかなか認めない阿部市長の認識を改めて問いただしました。
「核兵器廃絶平和都市宣言の具現化」を目的に市民団体が24年間実施してきた「平和のつどい」への後援を川崎市が不承諾とした問題で、「憲法9条守れ」という趣旨のアピール文を特別の立場と決めつけ、中立性を損なうとの理由で打ち切るのは極めて歪んだ判断であり、一方で、市民に対して監視活動を展開して社会的問題になっている自衛隊が中心の音楽祭には後援を許可するのでは市民理解を得られないと、阿部市長自身の姿勢を厳しく追及しました。

プライバシーに踏み込む全国学力調査を批判

そのほか、教育問題では、川崎市が今年4月、全国学力調査・学習状況調査に参加したことについて、児童のプライバシーにかかわることまで調査し、集計を受験産業にゆだねるなどの個人情報保護の問題点を指摘しました。また、教職員の時間外勤務などの長時間労働問題についても改善を求めました。

「平和のつどい」後援とりやめを批判 阿部市政で平和の後退が鮮明に

川崎市は「平和をきづく而民のつどい」を23年間後援してきましたが、今年は不承諾としました。昨年のアピール文にある「憲法9条の改悪には反対です」などの文言が「市の政治的中立性を損なうおそれがある」などというのがその理田です。
市古議員は「現憲法を守ろう」と主張する市民活動を後援することがなぜ「政治的中立性を損なうおそれがある」のか。一方で世論が2分し、市民への監視活動まで行っている自衛隊が中心になって開催された「音楽まつり」は、現場で自衛隊の広報活動まで行われていたのに市が後援したが、これこそ政治的中立を損なうものだと厳しく追及しました。
阿部市長は、政治的な主張は様々であり、国民の間で議論されていくことは重要だが、「平和のつどい」は「国民投票法案」を「憲法改悪手続き法案」と捉え、「教育基本法の政府案を改悪案などとアピール文にまとめており、これに市がお墨付きを与えることになりかねない」などとのべ、「川崎音楽まつり2007」を後援したのは、音楽文化の振興という趣旨からの申請だったからなどと開き直りました。
市古議員は、「平和のつどい」は川崎市の「核兵器廃絶平和都市宣言の一層の具現化」を目的に掲げて24年間実施してきたものであり、これを後援しないというのは川崎市自らが掲げる「核兵器廃絶平和都市宣言」の趣旨すら投げ捨てようとするものである、2つの対照的な出来事を見たとき、そこに市の中立性どころか、市長の憲法に対する改憲の姿勢を感じる市民は少なくないはず、市長のそういう姿勢こそ市民の信頼を損ねるものだと強く指摘しました。

学力テスト問題点多く 来年の参加は再検討を

市古議員は、全国学力調査・学習状況調査について、調査の目的からみても、児童・生徒の氏名まで記載された個人情報を集めることは目的の範囲を超えていると指摘。「子どもの権利条例」を有する川崎市がプライバシーに踏み込んだ、しかも説明不十分で有無を言わせず調査することに教育委員会として何の疑問も感じなかったのかと批判。
川崎市で実施されている学習診断テストや学習状況調査で十分に目的は果たせるはず。子どもに負担をかけ、77億円もかけて受験産業に採点を依頼してまで、全国学力テストに参加する必要があるのかと迫り、今やるべきは少人数学級の拡大や教育環境を整えることだと、来年の参加の再検討を求めました。
教育長は、来年度の実施については、今後、国の調査結果の公表のあり方や個人情報保護の問題を踏まえて検討する考えを示し、調査については学校の序列化や過度の競争意識をあおることにならないよう配慮したい、受験産業には個人情報保護の遵守を明示し目的外の使用を禁止おり個人情報の保護は守られるなどと、受験産業が採点することについて何の疑問も挟まない答弁を繰り返しました。

進学を希望するすべての子どもたちの進路保障を

市古議員…市立川崎高校に中高一貫制を導入し、市立高津高校に定時制の昼夜2部制を導入する再編計画について、公教育としてセーフティネットの役割を果たしている定時制高校を3校に減らすべきではない。さらに県立高校の普通科削減のなかで、希望が多い普通科高校を維持発展させることが最優先課題であり、いま中高一貫校を導入すべきではない。
教育長…公立高校の募集定員の確保については県教育委員会に要望したい。

教職員の長時間過密労働の改善を

市古議員…教職員の異常で違法な長時間勤務が常態化しており、キチンとした時間外勤務の割り振りの変更が必要ではないか。
教育長…近年の教育をめぐる環境の変化の中で教員の勤務が長時間に及ぶ傾向がある。縮減の必要があり、勤務時間の割り振りの変更についても他都市事例を参考に検討したい。

格差と貧困直視した施策を 市民に幻想を振りまくべきではない

市古議員は、格差と貧困の問題について、5年ごとに実施される「川崎市就業構造調査」を示し、就業人口では有業者が8,000人減少する一方、無業者が63,000人増加。「所得階級別雇用者数」では、所得「300万円未満」の男性が2万人も増えている一方で「500万円以上」が21,000人減少しており、こうした収入減少傾向の要因は、正規雇用から非正規雇用へと、この間の雇用形態の変化(異動)にあることは明白だと指摘。
さらに、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与が98年から05年まで8年連続で減少しており(国税庁調べ)、これでは庶民が「景気回復」など実感できるはずがなく、そこに定率減税の全廃の追いうちでは市長のいう「好循環を生み出す仕組み」などどこにあるのかとただし、市財政問題研究会中間報告でも見過すことのできない提起がされていると批判。

阿部市長は、日本経済は景気回復を続け、法人市民税が増え、06年には雇用者数も81万人増加した。国でも「改正パー卜労働法」が成立してパートの勇働条件の改善が図られると期待しているなどと答弁、本市の製造業や情報産業については正規雇用が7割を超えていると胸を張りました。
市古議員は、川崎市の正規雇用は前回調査に比べて11.7%も減少しており、06年度に雇用者が増加しているのは非正規雇用が増えているのであって、川崎市だけが例外であるかのような印象を振りまくべきではないと述べ、さらに「改正パート労働法」についても、均等待遇になるのはパー卜労働者の1%程度に過ぎないというザル法であり、幻想を振りまくのではなく事実をしっかり見るべきだと厳しく指摘しました。

ネットカフェ難民など若者の実態調査

市古議員は、非正規労働が広がる中、「ネットカフェ難民」に象徴される異常な実態について、賃金が6割近くカットされるこうした若者たちの雇用対策につなげるためにも、ネットカフェなどで暮らす若者から直接話を聞いて実態をつかむよう提案しました。
市民局長は、把握しているネットカフェ等は市内30店舗あるが、若年者の実態を把握することは重要であり、本市としては6月から「キャリアサポートかわさき」を開設しており、国がおこなう実態調査結果と共に本市の取り組みを通じて現状を把握し、効果的な支援に取り組みたいと答弁。

子育て世代の声に耳傾け多面的な支援策を

小児医療費助成制度の所得制限撤廃を

市古議員は、市民の要望に答えて今年から就学前まで拡充されたが、所得制限のために16,000人、約21%がなお制度を受けることができないが、8億8千万円あれば所得制限をなくせるのであるからせめて段階的に所得制限撤廃の年齢を引き上げるべきだと述べました。
同時に対象年齢の拡充の取り組みや、神奈川県が行おうとしている小児医療費助成、ひとり親医療費助成に一部負担金などの導入の中止を申し入れるよう求めました。
健康福祉局長は、所得制限の撤廃や助成年齢の拡大については今後の運営状況などを見ながら総合的に判断したい。医療費助成制度については県の動向を注視しながら制度本来の趣旨を踏まえて対応したいと述べました。

地域子育て支援センター増やして

市古議員は、昨年の利用者延数で大人と子ども合わせて34万7640人と要望の高い地域子育て支援センターについて、特に乳児の子育て支援に果たす役割が大変大きいことから、ベビーカーや徒歩でも行ける身近な場所に設置すべきだと要望。子ども文化センターを活用すれば、より身近な場所に子育て支援センター設置が可能になると提案しました。
健康福祉局長は、国において、地域子育て支援センターの再編を行い新たに児童館の活用を加えた「地域子育て支援拠点事業」を創設したので、今後制度の活用について関係局と協議したいと答弁。
市古議員は、そうであるなら、保育基本計画改定版の「5カ所」の支援センター整備計画についても子供文化センターの活用でさらに計画数を増やすよう求めました。

私立幼稚園の人的保障に公的補助を

川崎市は、「民間で幼稚園教育の実践に対応できる受け皿が整っている」として、存続要望の高い公立幼稚園を09年度末で廃園とする基本方針案を固めています。
市古議員は、私立幼稚園の定員超過率119.7%は県内ダントツであり、大型マンション建設による今後の人口急増が差し迫る中で、さらに私立幼稚園に過密化を強いることがあってはならないと指摘。
さらに、障がい児を受け入れる私立幼稚園への人的保障に対する公的補助を求めました。
教育長は、幼稚園児の受け皿が不足しているということではなく、現状の幼稚園状況が認められたものなどと答弁。また、障害児受け入れに伴う人的支援について、幼児教育センターでは今年度から要請に応じて、園訪問を行ない指導助言を実施していると答えました。

私立幼稚園保育料補助拡充の約束を守れ

市古議員は、私立幼稚園保育料補助が横浜市や東京と比べても少なすぎると指摘。格差と貧困が広がる中、私立幼稚園に通わせる家庭の負担は大変なものであり、98年に市教委が公立幼稚園を順次廃園することに伴い、自ら「経済的に困難な世帯への補助を拡充する」との計画を策定し、その後も毎年同様の答弁をしてきている、昨年も前教育長がこの方向を尊重すると答えているが、尊重されたのは廃園だけであり、約束違反だと追及しました。
教育長は、今年度から国で、優遇措置条件の緩和をはじめ国庫補助事業が1%引き上げられたところであり、本市としては関係局と検討していくなどと従来から後退した答弁を繰り返しました。

保育園待機児の実効ある解消をはかれ

川崎市は、07年4月に待機児童を解消するとの約束を果たせず、依然、待機児童数は465人にものぼり、市長が謝罪する事態となりました。
市古議員は、待機児童を解消するためには、現在の実態と今後の予測をしっかり把握した計画が必要であり、特に認可保育所の抜本的な緊急整備が必要だとして、08年以降の整備計画のテンポを速めるよう求めました。
健康福祉局長は、中原区、高津区など大型マンション建設による人口増が続き、保育所入所申請数が予測を大きく上回ったことが原因であると見通しの甘さを認め、保育所を整備する地域や保育受入れの拡大に向けた数値目標及びスケジュールを7月中に取りまとめて公表したいと答えました。

障害者 低所得1・2の利用料は無料に 区別のない移動支援を

市古議員は、障害程度区分が軽く就労移行支援事業でサービスを受ける人は利用料が無料なのに、障害が重く生活介護としてサービスを受ける人は同じ施設で同じ作業をしていても利用料がかかることは、自分の能力を生かして精一杯生きようとしている人の中に利用料を払う人と払わない人をつくってはならず、少なくとも低所得1・2の人たちの利用料は、横浜市のようにすべて無料にするよう求めました。
また、移動支援を2つに分けている政令市は川崎以外にはなく、生活上必要不可欠か否かの区別はやめ、障害者の移動する権利を保障するよう求めました。また、移動先の証拠を集める挙証資料も、やめるよう求めました。
健康福祉局長は、利用者負担について、4月から非課税世帯への国の軽減策が図られたので、この推移を見守りたいと述べ、移動支援について利用範囲を広くするために区分したもので、他都市との比較でも利用条件は緩和されていると述べました。挙証資料については使用した交通機関の領収書になど軽減を図ったと答えました。

わくわくプラザの障がい児童への環境整備

障がい児童の登録が10名以上の「わくわく」は212カ所。静かに休める場所の確保や巡回指導員の増員と専門職の配置を要望。

地域経済活性化条例の制定を

市古議員…商店街振興の努力に応えるためにも、市として大型店・チェーン店の商店街への加入を促進する条例作りへの支援を求める。県のセミナーで、川崎の臨時議会で審議した「まちづくり条例」が紹介されたが、神奈川県と歩調を合わせて川崎市としても条例を制定してはどうか。
経済局長…「商店街活動指針づくり」への専門家の派遣等での支援をしていく。本年は「川崎再生フロンティアプラン」に基づく3年間の実行計画を見直し次期実行計画を策定する年度であるので、その中で中小企業振興施策の充実を目指したい。

多摩川なしの保存の新たな位置づけを

多摩川なしは需要に生産が追いつかない状態だが、栽培面積は毎年減り続けている。多摩川なしの生産

伝統文化を守るために保存の新たな位置づけを。

黒川地区の共同直売所開設ついて、生産者から、生産調整に対する不安が出されており、意見・要望などを受けとめ関係団体と連携を図りながら事業に生かすよう求める。

マンション建設問題とまちづくり

高津区末長で、工場跡地に計画されているマンションは、7階建て5棟をすべて廊下でつなぎ1棟として申請されているが、廊下がなければ絶対に建設できないものであり、数の偽装ではないか。

向ヶ丘遊園跡地に巨大マンション

市古議員…小田急電鉄から府中街道沿いに、幅100m、戸数850戸、人口2775人の巨大マンション計画が発表されているが、04年11月の基本合意に反するものであり、小田急電鉄に対して見直しを求めるべきだ。

不安広がる多摩市のプラスチック中間処理施設

市古議員…麻生区・はるひ野地区に隣接する多摩市の廃プラスチック中間処理施設計画について、圧縮の際に様々な化学物質が発生し、健康を害する可能性がある。川崎市はあらためて多摩市に対し、市民の不安を解消できるようなデータの明示と再説明会を要請し、市民が納得できるまで着工しないよう求めるべきだ。

市のビジネスホテル建設・コムスン問題

市古議員…ホテルの客室稼働率について、専門誌による全国55都市ホテル客室稼働率調査では、いずれも低下傾向にある。1般より1,200円も高い料金設定でも、30年間にわたって稼働率を80%と見込んだ根拠はなにか。
市古議員…コムスンのサービスを受けている人の不安を取り除きサービスの確保をしっかり。さらに介護の公的責任を。