議会報告

2009年3月25日

2009年3月予算市議会 日本共産党代表討論


2009,03,25, Wednesday

2009,03,25, Wednesday1 

3月19日に市古映美議員がおこなった代表討論は次のとおりです。
私は、日本共産党を代表して、今議会に提案された市長の施政方針ならびに予算案を含めた諸議案について討論をおこないます。
予算案の特徴と評価についてです。
市長は新年度予算について、行財政改革を断行してきた結果、その効果を市民に還元できるようになったなど「かわさき安定フライト予算」と特徴づけました。しかし、市長がすすめてきた7年間の行財政改革の実態を改めて検証しなければなりません。
市長は8年前に「国の改革は小泉で、川崎市の改革は阿部で」と訴えましたが、国は構造改革として国の財政赤字のツケを自治体に押しつけるために、地方分権を標ぼうしながら、「三位一体の改革」を強行しました。2004年度から2006年度までの3年間の三位一体の改革による本市への影響額は、およそ119億7千万円にものぼります。国庫補助負担金の恒久的一般財源化によって、その目的だけにしか使えない特定財源から、どこにでも使える一般財源にされたからといって、これまでのサービスを打ち切る口実にしたことは許せないことであります。
特に04年度の公立保育所運営費負担金が一般財源化したことを受け、公立保育園の民営化に拍車をかけました。また翌05年度には、就学援助費補助金が一般財源化されると、義務教育の9年間のなかで、1回だけメガネをつくれた制度を廃止してしまいました。このように国の悪政から市民を守る防波堤としての役割を果たすことが求められているなかで、逆にそのまま冷たく市民に押し付けてきました。こうした市民サービスの切り捨てを行財政改革だと言い、行革効果の還元として私立幼稚園児保育料補助の増額を強調しましたが、多くの政令指定都市でも行っている水準に追い付いてもいないことは、本当に恥ずかしいことです。
雇用対策についてです。
私たちが今取り組んでいる「雇用と労働のアンケート」には、雇用破壊、生活破壊の被害が増え、景気と暮らしの底が抜けたという声が目立ち、「このままでは自殺しかない」ということまで書かれています。
厚生労働省も「派遣切り」が1ヵ月前の調査より約3万3千人増加し、15万7千人を上回り、年度末の3月に契約期限を迎え、職を失う非正規労働者がさらに増えるとみて危機感を募らせています。今、行われている「派遣切り」は、現行の労働者派遣法にてらしても、その大部分が違法行為であるということです。たとえ契約満了の「雇い止め」であっても、その多くは違法行為で働かせたあげく解雇となっています。
このことが確認できれば現行法のもとでも「派遣切り」「雇い止め」を食い止める条件があることに着目して、わが党は、市長に、大企業の横暴を抑えるために、大企業に雇用の社会的責任を果たし「派遣切り」「雇い止め」をやめさせるように申し入れるべきと繰り返し求めてきました。しかし、市長は、「各企業」は、「高度な」また「自主的な」「経営判断等にもとづき、様々な経営努力をしている」と、大企業をかばい続ける答弁に終始しました。深刻な実態が目の前に広がろうとしているのに「権限と責任を有する機関が適切な措置を講ずるもの」と、傍観しているだけというのは、あまりにも情けないことです。大都市・政令指定都市市長として、大企業に雇用を守らせ、「社会的責任を果たし、違法な派遣切り・雇い止めは止めよ」と申し入れをおこない、最善を尽くすことを強く求めておきます。
次は、中小・零細企業者への緊急経済対策についてです。
中小・零細企業者にとって最も使いやすい制度が「小口融資」で、金利の引き下げと保証料をゼロにすることを求めました。答弁では、新年度から更に利用しやすい制度になるよう、「振興資金」や「小規模事業資金」などの融資利率の引き下げの幅、融資期間や貸付据え置き期間の延長などについて金融機関と精力的に調整を行っているとのことでした。東京都世田谷区では、「小口零細資金緊急特別融資」を実施し、5年間利子はゼロにするなど、実態にかみ合った支援を行っています。「小口融資」の改善とともに、「不況対策資金」のさらなる充実を行い、経済不況で深刻な打撃を受けている中小・零細企業への支援策を強化するよう求めておきます。
貧困から子どもを守る施策についてです。
いくつかの具体例を示し、子どもたちを貧困から救い出すために、総力をあげての努力を求めてきました。
就学援助は子どもたちの学ぶ権利を支える命綱です。ところが、小泉政権による「三位一体改革」は就学援助まで一般財源化しました。その結果、川崎でも卒業アルバムなどの支給対象の削減、対象者が増えたとして宿泊を伴わない社会見学費支給額の削減もおこなわれました。子どもの貧困が広がっているにもかかわらず、まさに逆行するやり方です。国が国庫負担補助をもとにもどすよう要求すること、川崎市としてメガネ代含めて就学援助項目と支給額を元に戻すことを要求します。
国民健康保険証は中学生以下は無条件で交付されることになります。しかし、お金がなくて3割負担が払えない、これでは結局必要な医療が受けられません。そういうことからも、小児医療費助成の対象年齢の拡大は急務です。
親の責任だからと子どもが貧困であっていいはずはありません。どうしたら子どもを貧困から救い出すことができるか、すでに猶予できない事態です。できるところから取り組むことを求めておきます。
さらに、次世代育成支援行動計画の前期総括を行い、子どもの貧困削減のために川崎でも専門家会議を設置して、実態調査をおこない、削減のための目標値を明確にするそのためにも後期計画に盛り込んでいく努力こそ必要なことを指摘しておきます。
幼稚園の保育料補助の増額についてです。
08年度の川崎市の私立幼稚園の入園料・保育料の合計の市内平均額は46万6240円と、政令市の中で最も高いものでしたが、2009年度は、さらに入園料・保育料の合計額が47万4,872円と、8,632円も上がります。
新年度、国の補助対象外のEランクの拡充をはかったと言いますが、Eランクの対象者12,129人の65%を占める「兄弟同時就園の第1子」の補助は、わずか4,000円の増額にすぎず、幼稚園保護者全体の76%が前年比で負担増になることが明らかになりました。すべての対象者の負担を軽減するために、Eランクでは「兄弟同時就園の第1子」から大幅に増額すること、横浜市や千葉市、さいたま市のように、A~Dランクで市の上乗せ補助を創設することを、あらためて求めておきます。
保育事業についてです。
09年度の保育所入所の新規申請児童数は昨年同時期より658人増えて5,953人になりました。そのうち内定数は388人増えて3,629人ですが、不承諾数は270人増えて2,324人にものぼり、入所申請したのに約4割が不承諾でした。
保育緊急5ヵ年計画の中で最大の入所枠を増やしたにもかかわらず、人口急増のうえに、未曾有の経済危機により「働かないと食べていけない」「すぐにでも預けて働きたい」という生活実態から保育を必要とする人たちが急増しているからと思います。
最も入所要件が高いとされているAランクでも、「同ランク内での選考指数」によって加点,減点で選考せざるを得ない状況の中、ましてやパートや自営などのB,Cランクや、就労先が確定しているDランクは保育を必要としている状況は同じなのに、現状では入所の可能性は殆どないに等しい状況です。
特に今年は、乳児を持つ不承諾の人たちの多くが、おなかま保育室に殺到しました。14か所、定員345人に対し583人の申請があり、すべてで受け入れ予定数を超えた申請で、認可保育所と同様の選考状況でした。ゼロ歳からのニーズとともに、保育料が、認可保育所に準じ、前年の所得によって設定されていることからも、厳しい生活実態の方々の砦としても、待機児解消策のためにも存続すべきことを求めておきます。
保育緊急5カ年計画の見直しについて、新年度入所状況が確定し、詳細の分析を行った後、その状況をふまえて可能な限り早期におこなうとのことですが、保育を必要とする人数に、B、C、Dランク、そして、仕事を探す求職中のEランクも含めた推計をたてなければ、待機児解消は出来ないことを指摘しました。そのための基本は認可保育所の緊急増設で受け入れの拡大を図ることです。公有地の活用や合築も視野にいれた増設計画をたて、今回の見直しで真に待機児が解消できる計画になることを強く求めておきます。あわせて4月時点の待機児童に対する緊急対策も求めておきます。
教職員の配置についてです。
教職員の配置は教員定数に対して小学校77名、中学校86名、特別支援学校16名で、合計179名が欠員のまま4月を迎えることが明らかになりました。
産休代替教員の確保も特に年度途中の確保は、厳しい状況が続いているという答弁でした。職場に気兼ねして、安心して産休にも入れない、定数内欠員を臨時的任用教員で埋めていくため、結局産休代替教員も確保できない悪循環が続くことになります。
大量欠員状況はここ数年同じように続いています。正規教員の配置は推計がむずかしいでは納得できません。何のために定数があるのか、必要な正規教員数の確保のため、全力をつくすことをつよく要望します。
少人数学級についてです。
少人数学級の現場の評価は「基礎学力の充実に大いに役立った。個別対応に十分な時間が確保できる。どの教科にも有効である。1人1人の生活面での適正指導に効果があった。中学1年生ではいわゆる中1ギャップの解消に有効であった」ということはゆるぎない事実です。
スイス生まれの思想家ルソーは教育学の古典「エミールー教育のために」で「植物は栽培によって成長し、ヒトは教育によって人間になる」とのべ、草木の芽のように子どもの自然成長力を信じ、まわりの人々や自然を生かしながら、教師と子どもの1対1の交流を描いたもので、教育の原点が示されています。今日でも世界共通の教育効果の尺度は「教師対子どもの比率」であり、1人の教師が何人の子どもを教えるかが基準とされています。さらに、人間は長い人類の進化の過程で刻まれたヒトの本性として、一定の空間や密度、その中での共同生活を必要とし、人間が育つ空間、パーソナルスペース―すなわち個人空間は、一人平均5程度は必要とされています。
40人学級は過密状態なのです。少人数学級は児童生徒、教師、保護者、みんな元気になります。学校運営の基本は学級です。あれこれではなく、少人数学級の拡充を柱にすえての教育環境の充実を強く要望しておきます。
障害者施策についてです。
国も応益負担を見直す動きが始まったことを受け、まず川崎市が障害者福祉の原点に立ち返り、応益負担をやめ、低所得1・2の方の利用料や医療費、食費などを無料にするよう求めましたが、相変わらず「国の動向を注視する」という答弁にとどまっています。組み替え動議でも低所得1・2の方の利用料を無料にするには4,680万円あればできることも指摘しました。国はこの4月にも自立支援法改正案を提出します。また、報酬も改定され、利用料や報酬のあり方が大きく変わろうとしています。そのなかで、川崎市においては障害者福祉を一層前進させ、負担の軽減や施設運営の改善を図るよう強く求めるものです。
「心身障害者手当」は、県や横浜市のように削減、廃止されるのではないかという不安が広がっています。専門部会で検討しているとのことですが、精神障害者を含むことは当然ですが、金額や対象者を減らすことがないよう強く求めておきます。
防災対策についてです。
切迫した首都圏直下を含む大規模地震への備えとして、建物の耐震化をはじめとする対策の強化が喫緊の課題になっています。
新年度は、被害想定調査に基づいて地震防災戦略を検討するとのことですが、並行して取り組まれるべき具体的な耐震対策など防災予算は、昨年度並みにとどまり、位置付けが後退しています。特に、防災対策の要として位置づけられている住宅の耐震化、とりわけ、急がれている旧耐震基準の木造住宅の耐震改修については、制度利用者が倍増し続けているにもかかわらず、6,600万円余と昨年度並みの予算にとどまっています。現行制度の抜本的予算の増額と、命を守る耐震対策という視点を含めた制度への見直しを含めて、抜本的な対策強化を図り、災害発生時に、市民の命と安全を守る自治体の使命を果たすにふさわしい、防災対策の強化を強く求めておきます。
コミュニティ交通についてです。
コミュニティ交通への住民の期待は非常に高く、すでに市内8か所で協議会が立ち上げられて取り組まれています。しかし、麻生区高石地区では、2007年度に試行運行の結果、採算性が大きな障害となって協議が進んでいません。
今後、各地で協議会が立ち上がる可能性はありますが、現状のままでは、協議が生かされません。コミュニティ交通導入に向け、技術的な助言や、資料作成などの支援、初期投資に限るのではなく、運営費への支援を強く求めておきます。
多摩川連絡道路計画についてです。
代表質問で、大田区議会での松原区長の答弁を紹介し、川崎市の計画を理解してもらえないことがはっきりしている事を指摘し、この計画の見直しを求めましたが、大田区側がどう考えていようと、今後も引き続き進める姿勢を示しました。
新年度予算を入れれば1億3千万円の調査費になります。今後の見通しもないまま引き続き調査費をかけることは税金の無駄遣いそのものです。きっぱりとやめるべきことを指摘しておきます。
議案第1号 川崎市職員定数条例等の一部を改定する条例の制定についてです。
この6年間で、2,100人を超す職員を削減し、新年度も全会計で186人削減するということです。このなかには公立保育園の民営化、保育園、学校給食の民間委託化による人員削減が含まれています。私たちはこれらの民営化、民間委託には反対してきました。メンタルヘルス不調増と職員削減は因果関係はないとの答弁がありましたが、はたしてそうでしょうか。
産業医との面談を義務付けられる長時間残業をしている職員が倍増しています。長期療養者も増え続け、その中のメンタルヘルス不調者は54,9%にまで広がっています。貧困と格差が広がり、市民要望も多様化するなど、職員にはますます高度な対応能力が求められています。必要なところへは必要な人員を正規職員を増員し配置すべきこと、これ以上の行き過ぎた職員削減方針は見直すことを要求します。
議案第2号 川崎市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例の制定について、及び、議案第3号 川崎市職員の特殊勤務手当に関する条例及び川崎市立高等学校及び幼稚園の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
本議案は教員特別手当の限度額を引き下げるため、及び市立高等学校に学校教育法の規定に基づく主幹教諭を置くことに伴う整備を行うため、条例改正を行うものです。
わが党は、「学校教育法の一部を改正する法律」については、管理的教員(主幹教員)を新たに拡大し、教職員の階層化を進め、上位下達の学校づくりや教員の管理強化、あるいは差別選別の教育を推し進めることにつながるとして、反対を表明しました。校長、教頭がいて、あとは同じ職務の教諭がいて、学校運営をそれぞれが助け合って行われていれば、主幹教諭は必要ありません。等級を新たに設けて、同じ職員を、わずかなお金で差をつけること自体、教育の場にふさわしくありません。
議案第5号 アメリカ合衆国軍隊の構成員等の所有に係る軽自動車等に対する軽自動車税の特例に関する条例の制定についてです。
これは、日米安保条約の付属協定である日米地位協定の実施に伴う地方税法等の規定に基づき、日本人の所有する軽自動車等の税率より安く、5分の1から2分の1に設定した税率により、アメリカ軍隊の構成員の所有する軽自動車等に課税するというものです。しかし、日米安保条約は、我が国が独立国とはいえないような国家主権を侵害し、国民の人権を踏みにじる内容の条約です。その付属協定である日米地位協定も、不平等かつ米軍と米兵への多岐にわたる特権・優遇措置を定めており、今回の税率優遇もその一環です。私たちは、我が国の主権と国民の平和的生存権を守る立場から、日米安保条約・日米地位協定には反対であり、したがって、今回の条例制定には賛成できません。
議案第7号 川崎市心身障害者総合リハビリテーションセンター条例の一部を改正する条例の制定についてです。
これは、中部地域療育センターの管理を指定管理者に行わせることとすること、利用料金制を導入すること等のため、条例を制定するものです。
これまで、常勤医師を確保することができなかったことについて、小児神経科、児童精神科などの専門医が少ないうえに、さまざまな領域で研究や治療などに関わることを志向する医師が多かったことなどから、なかなか来ていただけなかったとのことでした。しかし、近隣の井田病院などとの連携を図ることができれば、常勤の医師を確保する可能性はあったとのことです。
また、指定管理制度となった場合でも、現在いる職員が希望すれば残れることについて、職員がそのまま残るのは難しいとのことでした。しかし、公益上の必要性があると市長が判断すれば可能とのことでした。発作かどうかの見極めや生命の維持に関わるような健康状態なのかというような医療的な見守りは、人間関係が継続することによって可能になります。これこそ、公益上の必要性に合致すると考えます。しかし、新たな指定管理者による管理によって、いままで築きあげられた人間関係によって可能となっていた支援が断ち切られることから、本議案には反対であります。
議案第8号 川崎市介護保険の一部を改正する条例の制定についてです。
この議案は、第4期期間内の第1号被保険者の介護保険料段階を8段階から10段階に、第5段階を基準額に変更するというものです。保険料金額は、介護給付費準備基金36億円から、25億5200万円、68%を取り崩して、一部を除いて据え置かれることになりました。
介護給付費準備基金36億円は、第3期計画期間内に計画で見込んだサービス量よりもサービス実績が下回るために、第1号被保険者の保険料の剰余分を介護給付費準備基金に積み立てられたものです。したがって厚労省の見解でも示されているように、本来は基金が造成された期間における被保険者に、還元されるべきものです。
「平成19年度高齢者実態調査報告書」では、8割の人が保険料が高いと答えています。準備基金を全額取り崩せば、120円の引き下げが可能です。高齢者の深刻な生活実態からすれば、介護保険料の引き下げをすべきでした。
今回の改正で、基本的には据え置きですが、値上げになるのは、激変緩和で基準額0,91だった人が0,95になる人と1,0になる方々はあわせて2,400人です。もうひとランク設定して据え置きにするには、年間740万円あれば可能でした。全額取り崩しが困難だとしても、年額わずか740万円で基準額以下の方々への配慮ができたわけです。他都市のなかには、所得が1千万円以上の段階を設定するところがありますが、本市でも収入に応じたこうした対応も可能だと考えます。
議案第41号水道事業会計予算、議案第42号工業用水道事業会計予算については、ともに高速川崎縦貫道路共同溝建設事業に関連する予算が含まれておりますので、賛成しかねます。
以上の立場と予算組み換えとの関係から、日本共産党は、議案第1号、議案第2号、議案第3号、議案第5号、議案第7号、議案第8号、議案第24号、議案第25号、議案第32号、議案第33号、議案第37号、議案第40号、議案第41号、議案第42号に反対し、その他の議案、請願、報告には賛成及び承認することを表明して討論を終わります。