議会報告

2011年3月17日

国際コンテナ戦略港湾など批判〜市古議員が代表討論


DSC08041 3月16日、日本共産党川崎市議団を代表して市古てるみ副団長が討論を行ないました。
市古議員は、予算案について、雇用情勢の悪化により保護世帯が顕著に増加しているのに長期雇用につながったのはたった65名にすぎず、これでどうして重視したと言えるかと批判。「イノベート川崎」では2社に2億6500億円の予算をつけているのに対し、中小零細企業の支援費が2億6500万にとどまっており、切実な中小企業の要望にこたえていないと指摘しました。
国際コンテナ戦略港湾の整備について、市は3港の共同事業であっても他港整備の負担はないといいながら、将来の3港は港湾の経営と管理が一体となる計画であるがその場合でも川崎市の負担は生じないのかとの質問には答えることができなかったと批判。そして、新たに5社が進出してきてもコンテナ取扱量は処理能力の41%にしかならないと指摘して、将来大きな市民負担になる4バースに増やす計画はやめるべきとあらためて主張しました。

市古議員の代表討論全文はつぎのとおりです。

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私は、日本共産党を代表して、今議会に提案された市長の施政方針ならびに予算案を含めた諸議案について討論をおこないます。

予算案の特徴と評価についてです。
市長は新年度予算で重点配分した施策に経済・雇用対策をあげています。しかし、重点事業にあげている41事業550人の雇用創出事業は、ほとんどが国の事業の交付金だのみであることがわかりました。また、新卒未就職者への就職支援事業は、他都市を上回るとの答弁でしたが、100%就職できたとしてもたった65名です。
川崎市内の有効求人数は、昨年9月時点で約9600人に対して、有効求職者数は、約3倍の2万7600人です。1万8000人に及ぶ市民が常に職を求めています。深刻な雇用の実態は市民税収にも現れています。さらに、生活保護世帯のうち、雇用情勢の悪化による失業及び収入減を理由として保護を開始した世帯の伸びが顕著となっている事態に、たった65名の雇用の確保でどうして重視したと言えるのでしょうか。
深刻な事態を直視して、雇用対策に抜本的に取り組むことを求めておきます。
また、雇用対策と同様に力を入れたとする中小企業支援についても、融資を除く中小零細企業の支援費は2億6500万円にとどまる一方で、イノベート川崎は2社で2億9700万円を計上しています。
優れた技術力を持ちながら不況で苦しむ多くの中小企業への支援策として、家賃補助など、ものづくりを支える補助制度を求めたのに対し、市長の答弁は、現状で実施している制度をあげるにとどまり、さらに支援の重点を「環境やライフサイエンス等の成長分野の振興」に置くというものでした。これでは、川崎市の優れた商業集積を守ることはできません。
改めて、固定費補助など、きめ細かい支援で、幅広い分野の中小零細企業への支援を行なうよう、強く求めておきます。

小児医療費助成制度の拡充についてです。
お隣の東京では62自治体すべてで中学校卒業まで助成がされ、千代田区や日の出町などは、高校卒業まで視野に入れて新年度から無料化を実施する段階まで進んでいます。県内では、この4月から海老名市と清川村、7月から厚木市、10月から松田町と所得制限をなくして中学校卒業まで無料化し、他にも川崎市よりも年齢を拡大する自治体が次々と生まれています。公約した市長がなぜ実施できないのでしょうか。一刻も早く、所得制限をなくして、中学校卒業まで拡充すべきことを強く求めておきます。

私立幼稚園保育料補助の拡充についてです
文部科学省は2011年度私立幼稚園保育料補助単価を3000円及び4000円増額しました。しかし、市はDランクについて、増額分を上乗せするのでなく、逆に市の上乗せ額を減額し、結果的に09年度、10年度と同額にとどめました。本市の私立幼稚園の保育料と入園料平均額は、新年度も合計で4063円値上げされるなど、国の補助単価が増額されてもその分保育料、入園料があげられ、保護者の負担軽減にはならないことから、全ランクに市が上乗せすべきことを求めました。市長は、総合的な子育て支援という視点から引き続き保護者負担の軽減が図られるよう努めていきたいとのことですから、全ランクの増額、せめてDランクに増額を強く求めておきます。

次は保育所待機児童の解消についてです
4月に向けた認可保育所新規申し込みに対し、2月10日現在の入所不承諾数は2526人、不承諾率は38.4%にのぼりました。雇用や経済状況が厳しい中、保育所はくらしを支えるセーフティーネットの役割がますます強くなっています。待機児解消のための認可保育所整備は、就労を支え、雇用が増え、市税収入が増大するなど、経済波及効果が増大します。
わが党が提案した土地所有者と保育事業者のマッチング事業は新年度4か所を目標に取り組むことになりました。公有地の活用、特に県に対し、「県有財産の貸付制度」を早期に作る取り組みを強めると同時に、用地確保に全力を尽くし、認可保育所の緊急増設を強く求めておきます。

特別養護老人ホーム増設についてです
改定整備促進プランは、議論の中で大変大きな問題があることが明らかになりました。必要整備数を介護保険法にもない要介護3からに限定し、要介護1,2の方や、有料老人ホーム、老健施設入所者の方も排除したうえで出した整備目標を、350床増床などとしていることについては到底納得できるものではないことを厳しく指摘し、希望するすべての対象者が入所できるような目標にすることを求めておきます。

国際コンテナ戦略港湾についてです
京浜3港の共同事業の負担について市長は、他の港湾整備に対して川崎市が費用を負担することはないと答えましたが、将来の京浜3港が港湾の経営と管理が一体となった場合にも川崎市の負担が生じないのかとの質問にはまともに答えることができませんでした。
現在の川崎港はコンテナ取扱能力13万5千TEUに対して3万1千TEUであり、東扇島に日本郵便(株)など5社が進出しても年間2万5千TEUしかコンテナが増加せず、現在の取扱量を加えても5万6千TEUにしかならず、コンテナ処理能力の41%にしかなりません。これから10年間で1000億円もつぎ込み、4バースに増やす国際コンテナ戦略港湾計画をやめるべきだとの質問に、市長は「戦略港湾の実現には国内貨物の京浜港への集中が必要あり、その為には内航フィーダー網や、鉄道、トラックなどの輸送ネットワークの強化が必要」と答え積極的に推進する立場を明らかにしました。
90年代に港の開発に莫大な税金を投入しましたが、船の来ない港、巨大な釣り堀と言われ川崎港コンテナターミナル(株)が倒産し、川崎市としても損失補償をしたことを市長は忘れたのでしょうか。
予測不能ななかで設備投資だけが先行することに市民は納得しないとの指摘を再度強調し、将来大きな市民の負担となる国際コンテナ戦略港湾計画を中止することを強く求めておきます。

議案第1号川崎市職員定数条例の一部を改正する条例の制定についてです。
今回の条例制定は、市の職員を228名削減したことによる条例の改正です。その内訳は、保育園民営化、公立保育園の指定管理化、粗大ごみ処理業務委託化などです。川崎市は人口が増え続けているのですから、本来なら、増加する市民サービスへの対応から考えても職員を増やすべきです。
本来行政で行うべきことを民間に任せることで、「利用者の存在を忘れた、仕事のための仕事は、自治体としての福祉の理念を喪失している」との指摘もあります。事業を進めるにあたって、関係住民への丁寧な説明や、協議の必要性を訴えると「今の人員ではとても手が回らない」という職員の声もあります。必要なところには、必要な人員を配置すべきです。
これまでも、行財政改革による職員削減で、個々の職員の仕事量や負担が増え、日々追われるなか、メンタルヘルス不調による長期療養者が増えつづけ、職員の健康を破壊しています。また、貧困と格差が広がり、市民要望も多様化するなど、職員もますます高度な対応能力が求められているときに、削減先にありきでは、市民サービスの低下や、技術技能の継承も断たれてしまうことを指摘しておきます。

議案第9号川崎市屋外広告物条例の一部を改正する条例の制定についてです。
今回の改訂は市内の屋外広告業者を届け出制から登録制にするものです。
この条例は、原則的にあらゆる屋外広告物が規制対象となっているもので、政治活動や国民の基本的人権を脅かす恐れがあることから、もともと反対してきました。
私たちは、景観を害するような広告物が野放しにされることを認めるものではありません。しかし、罰則も定められている現行条例で十分対応が可能です。また、届け出制から登録制にすることによって、登録料負担も増え、手続きも煩雑になるものです。改定前の本条例に反対した経緯と、制度強化につながることからも、本議案には賛成できません。

議案第44号川崎市後期高齢者医療事業特別会計予算については、高齢者に差別医療を持ち込む後期高齢者医療制度に反対であることから、賛成することはできません。

請願第124号「中学校教科書採択に関する請願」についてです。
教育は、大きく言って「教育内容」と「教育条件」によって成り立っていますが、請願第124号は「教育内容」に大きくかかわっているものです。
地方自治体の運営は地方自治法に基づき、教育委員会は地方教育行政の組織と運営に関する法律に基づくという、独自性を持っています。
このことは、戦前の教育があまりにも国家統制が強かったとの反省のうえに、戦後の日本国憲法の制定、その実現のためには、教育の力に待つべきものである、との1947年に制定された教育基本法の精神によって、地方教育行政の組織と運営に関する法律が制定されたのでした。
今回の教育基本法の改訂に際しても「教育は不当な支配に屈することなく」との文言は残ったのです。
教育長は「教育委員会会議では同趣旨の請願には、従来から採択も不採択もしてきていない。それは教育行政を特別な考え方で縛ることになるからとの考え方からでした」と答えていました。今回の請願第124号を市議会で採択することはまさに「不当な支配」に踏み込むものです。
請願の理由の記述も、事実と違っているものでした。
請願の理由のなかで「教育基本法の改正は、戦後の教育が個人主義に偏りすぎたことの反省に立ち」としていますが、教育基本法の改訂時でも、文科省が正式に述べた改正理由にはそのようなことはいっさい書かれておりません。
同趣旨の請願・陳情は県内の他自治体にも提出され、6つの自治体で審議が行われていますが、5つの自治体で、「議会に請願することではない」または不採択の扱いがなされています。
川崎市議会が、請願の理由の書かれている文言も事実と異なり、さらに教科書の採択に介入するという教育への不当な支配に踏み込む請願第124号を採択すべきではありません。

以上の立場と予算組替えとの関係から、日本共産党は、議案第1号、議案第9号、議案第39号、議案第40号、議案第44号、議案第47号、議案第50号、議案第51号、議案第54号、議案第55号、議案第56号、請願第124号に反対し、その他の議案、報告には賛成及び同意することを表明して討論を終わります。