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2011年9月8日

大震災後の港湾物流の動向〜国際コンテナ戦略港湾の未来〜学習会開く


20110831小出修三講演 8月31日、シンクタンク海事再生委員会の小出修三委員を講師に、京浜港の戦略港湾政策の学習会が開かれました。日本共産党川崎市議団がこの問題で学習会を開くのは3回目です。

小出さんは、港湾利用料など港湾関係費用の内外格差やコンテナの海外港での積み替えコストなどにより日本の貿易活動の障害になっているかのように言われていることについて、90年以降リーマンショックの09年を除き右肩上がりでのびている日本の輸出入額のデータを示して「港が障害になって日本の貿易が阻害されているという事実はない」と指摘し「日本の港はがんばっている」と今の日本の港湾についての認識を示しました。

戦後、国からの補助金を受けて自治体が港湾管理(整備・管理・運営)者として港湾を整備するルールがつくられましたが、「コンテナ埠頭」の「公共性」が問題となり公団・公社方式(港湾管理者以外が整備する方式)で特定の海運会社が利用するコンテナターミナルが整備されてきました。しかし大規模かつ革新的なコンテナターミナルの整備を前にこれが破綻、岸壁・泊地(下物)を国または自治体が、荷役施設等(上物)を公社が整備する「新方式」が導入され、ランク付けされた港湾整備補助金と合わせて日本全国各地に多数のコンテナ受入港が出現する結果となりました。

しかし海運会社が船舶の大型化をすすめるとともに運航効率を追及して寄港地を選別、結果的に釜山港の「ハブ」港化が促進され、日韓間をはじめとするアジアネットワークが形成されました。東アジアの主要港では国レベルの貿易・通商政策、成長戦略に基づくコンテナターミナルが整備され、メガターミナルオペレーター(複数のハブ港を運営し、コンテナ輸送・物流戦略と連動した世界規模でのネットワークを構成・運営する事業体)が生まれてきたのです。

日本は4100億円の予算(04〜10年度)と埠頭公社の民営化など「スーパー中枢港湾政策」を進めましたが、港湾の「競争力の強化」には至りませんでした。

新たな「国際コンテナ戦略港湾政策」は、アジアの「後追い」的な政策で、単に港湾におけるコンテナ取扱量増大を目指すとしか思えない政策であって、通商・貿易政策、国際物流システム・サプライチェーンシステムの変化への視点が欠如した内容だと批判しました。

質問に答えて小出さんは、「日本の企業は全世界への部品のサプライヤーになっている。全世界規模の最終需要に基づき組み立てから部品供給までITで結合し、最小の在庫で品物が、部品メーカー、組み立てメーカー、配送センター、顧客へと、順調に流れていく事で合理化している。船、自動車、飛行機とつないでいく、その結節点としての港や空港が重要になっている。それがスムーズに流れるシステムをどう作っていくかという事でつくられてきたのが今の港湾の合理化である。だから、港をつくって船がくればいいという程度の話ではない時代のなかで生産活動がおこなわれていて、どこに生産拠点を置くのかという話になってきている」とサプライチェーンと港湾の関連を話しました。