議会報告

2012年10月10日

植民地支配の誤り認め話し合いのテーブルをつくれ~竹島問題に関する意見書に討論


いぐち2自公民みが提出した「李明博韓国大統領の言動に抗議し、対韓国外交の見直しを求める意見書案」(意見書案第23号)に対し、日本共産党川崎市議団を代表して井口真美議員が反対討論をおこないました。

井口議員は、日本政府の竹島領有権の主張には歴史的にも国際法的にも明確な根拠があるけれども、日本が竹島を編入した時期と日本が韓国を植民地にしていった時期とが重なっているという問題があると指摘して、「竹島問題をめぐって今問題なのは、日韓両政府の冷静な話し合いのテーブルがないこと」であり、「話し合いのテーブルをつくるためには、まず日本が韓国に対する過去の植民地支配の不法性と誤りをきちんと認めることが不可欠です。その土台の上で、歴史的事実をつき合わせて問題の解決を図るべきです」と打開の方向を示して、「本意見書案のいう強硬的な対応では、いっそう緊張を高めることになり、真の解決にならないという立場から、反対する」と述べました。

井口議員の討論内容は次のとおりです。

私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、「意見書案第23号 李明博韓国大統領の言動に抗議し、対韓国外交の見直しを求める意見書」案に対し、討論を行います。
わが党は、韓国の李明博大統領の8月の竹島訪問について、日韓両国間の緊張を高めるような行動をとるべきではないと考えます。領土問題の解決は、あくまでも歴史的事実と国際法上の道理にもとづき、冷静な外交交渉によって解決をはかるべきです。また、天皇の訪韓条件として日本の植民地統治時代の独立運動家への謝罪を求めた韓国の李大統領の発言についても、いまの天皇は憲法上、政治的権能をもっておらず、その天皇に植民地支配の謝罪を求めるということ自体がそもそもおかしいと考えます。この発言は、日本の政治制度を理解していないということになり、日本政府に対して、植民地支配の清算を求めるならわかりますが、天皇にそれを求めるのはそもそもスジが違うと考えます。
そのうえで本意見書案は「竹島問題に関して韓国の行動に歯止めをかけるために…、対韓国外交の総合的見直し」をするよう求めています。しかし、領土問題の解決は、あくまでも歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決を図ることが大事です。
竹島は日本海航海者の好目標であったため古くから日本人にも知られ、「松島」の名で日本の文献にも表れ漁業にも利用されていましたが、この島の帰属は、文献的には必ずしも明確ではありませんでした。1905年、竹島でアシカ猟に従事していた隠岐島(おきのしま)の中井養三郎氏から10年間の貸し下げ願いが出されたのを受け、日本政府は同年1月の閣議決定で同島を日本領として島根県に編入しました。竹島はこれ以来、日本領とされてきました。51年のサンフランシスコ平和条約第2条a項も、竹島を、朝鮮に対して放棄する島の中に含めていません。それは条約作成の過程からも明らかです。
こうした経過からわが党は、竹島の日本の領有権の主張には歴史的にも国際法的にも明確な根拠があると考えています。現在の韓国の実効支配は、1952年に竹島を囲い込む境界線を設定、1954年に常駐守備隊を配備し、占拠するようになったのが始まりです。
一方で、日本が竹島を編入した時期と、日本が韓国を植民地にしていった時期とが重なっているという問題があります。1904年には第1次日韓協約が結ばれ、韓国は事実上、外交権を奪われ、異議申し立てができない状況でした。竹島はそのなかで、その翌年に日本に編入され、1910年には韓国併合条約が結ばれています。日本による植民地支配の歴史を無視したままでは、韓国との間で歴史的事実にもとづく議論はできません。
竹島問題をめぐって今問題なのは、日韓両政府の冷静な話し合いのテーブルがないことです。
韓国では国民の大多数が、竹島の韓国名である「独島」(どくと)が韓国の領土で、日本帝国主義の侵略で奪われた最初の領土だと考えています。そのもとで話し合いのテーブルをつくるためには、まず日本が韓国に対する過去の植民地支配の不法性と誤りをきちんと認めることが不可欠です。その土台の上で、歴史的事実をつき合わせて問題の解決を図るべきです。日本政府は、1965年の日韓基本条約の締結にいたる過程での竹島領有をめぐる韓国政府との往復書簡による論争でも、今日でも、1910年韓国併合すなわち植民地支配を不法なものと認めていません。野田首相の「竹島の問題は、歴史認識の文脈で論じるべき問題ではありません」という歴史的経過を無視するような態度では、解決への道は開けません。
以上の立場から、本意見書案のいう強硬的な対応では、いっそう緊張を高めることになり、真の解決にならないという立場から、反対することを表明し討論といたします。