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2012年11月8日

再生可能エネルギー活用で循環型の地域経済づくりを―北海道足寄町・帯広市を視察


日本共産党川崎市議団は11月5~6日、北海道足寄(あしょろ)町、帯広市、豊頃(とよころ)町を訪れて、再生可能エネルギーを活かし循環型の地域経済活性化をはかる取り組みの視察を行いました。

視察の様子をムービーでご覧ください。

20121105足寄町・帯広市、再生可能エネルギー視察

足寄町・「バイオマスタウン」構想

足寄町役場で田中副町長からご挨拶をいただき、職員の方から説明を受けました。その後、庁舎内のペレットボイラー、家畜糞尿を活用したバイオガス利用施設、木質ペレット製造工場を案内していただきました。

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(写真左から、家畜糞尿利用のバイオガス施設、足寄町庁舎のペレットボイラー、木質ペレット工場

▼地域資源で町に仕事を、と取り組み開始

足寄町は全国の市町村で5番目という広大な面積を持ち、そのうち実に80%を森林が占めてています。

農業と林業が町の産業の中心であり、「足寄町の施設は地元産材をいかした木造で建設する」という趣旨の町議会報告、2001年のNEDOの助成制度による新エネルギービジョンの策定などから、この取り組みが開始されました。

当初からこの取り組みを引っ張ったのは地域住民でした。「仕事がない」と若者が町を出てしまうことや寒冷地域のため通年の仕事が少ないことから、毎年約150人ほど人口が減り続けていることに危機感を持った地域住民有志が、「地域の資源を活用して町に仕事をつくりたい」と、2002年『木質ペレット研究会』を立ち上げ、再生可能エネルギーを活用して地域循環型の経済をつくる取り組みにふみ出しました。

▼目的意識的に135人の雇用を実現

img-Y09111739-0001中学校跡地に「とかちペレット協同組合」の木質ペレット製造工場が建設されましたが、「ペレットをつくっても使うところがないと意味がない」と、並行して「出口対策」にも取り組みました。まず、町庁舎・町こどもセンターに暖房用ペレットボイラーを導入。また約40万円のストーブ購入の際に20万円を補助することを決め、一般住宅へのペレットストーブ普及をはかりました。さらに家庭で安心してペレットストーブを購入してもらえるよう、ストーブの整備ができる人を町が育成する取り組みも行いました。

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さらに、ペレットの原料に「林地残材」(上写真)を使うことにより、木材を山から降ろす運搬の仕事、ヤードで木材を小分けにする仕事、運送の仕事などを新たにつくることができました。こうした取り組みで延べ135人の雇用を創出したとのことです。

当初は太陽光発電も構想されたそうですが、地域への経済波及効果が小さいことから断念、「地域産業を振興できるものを選択しよう」と、木質バイオマス・バイオガス利用の方向に進んだとのことでした。

img-Y09111855-0003担当者の方は「大企業から『メガソーラーをつくりませんか』『大型の木質バイオマス発電施設はどうですか』などの提案があるが、生産性のある農地をつぶし、将来まで残せる森林を破壊してまで大規模発電施設をつくるという選択はしない」「バラつきの大きい足寄町の森林の樹齢を標準化する(左写真)など木質バイオマスを安定させるための“山づくり”には50年の展望が必要、固定価格買い取り制度のある20年のうちに、なんとか“山づくり”を軌道に乗せたい」と意欲を燃やしていました。

帯広市・「環境モデル都市」の取り組みと「帯広の森」

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(写真:帯広の森の視察の様子)

▼2050年までにCO2の51.2%削減めざす

6日は帯広市役所を訪問、「環境モデル都市」の取り組みについてうかがいました。

帯広市では、(1)「帯広の森」の育成と活用など『住・緑・まちづくり』(2) 基幹産業の農業を活かした地産地消の学校給食など『おびひろ発 農・食』(3)各スーパーの協力のもと廃天ぷら油を回収してBDF(バイオディーゼル燃料)精製するなど『創資源・創エネ』(4)商店街の振興や市営住宅の建設など市中心部を活性化・持続可能性のあるものにする『快適・賑わうまち』(5)木質ペレットストーブ設置や、太陽光パネル付きの自動販売機を設置するなど『エコなくらし』―の5つの柱で、CO2の排出量を2000年を基準に、2030年までに33.3%、2050年までに51.2%削減することをめざしているとのことでした。

ここでも、「なんとしても地域経済を循環させて帯広市を維持・発展させたい」と担当者が話されていたこと、大手資本によるメガソーラーについて「北海道の資源だけ使われて、利益は地元には落ちないのでは」と懐疑的だったことが印象的でした。

▼100年後を見すえる「帯広の森」

「帯広の森」に移動してさらに詳しく説明を受け、実際に森を案内していただきました。

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「帯広十勝の資源活用と経済発展により市民所得を向上させ、生活の安定と福祉の増進を図り、明るく豊かで住みよい帯広を創る」として、帯広の市街地将来人口を20万人と設定し、その都市部の外苑を森(開拓で失われた原始の姿を取り戻した森)で囲む構想が持たれました。都市公害がクローズアップされるなか、1971年に決定されたそうです。宅地の郊外部への無秩序な拡大を防ぐ役割なども期待されています。syokuju

「帯広の森」は市民参加を重視して取り組まれています。「市民植樹祭」にはのべ148500人の市民が参加し約23万本を植樹(1975年開始、植樹が進んだため2004年度で終了)。さらに森が育ち間伐や下枝払いが必要となったことから「市民育樹祭」も開催してきました(1991年開始、樹木の成長により作業時の安全確保が困難になったため2005年で終了)。現在も様々な市民団体が森づくりにかかわっています。

森の現段階を「育林期」と位置づけて、20年後の「森林形成期」、60年後の「成熟期」など、100年のスパンで森づくりに取り組んでいることが印象的でした。morinostage

豊頃町・株式会社エコERC(エルク)・BDF(バイオディーゼル燃料)精製工場

視察の最後に、株式会社エコERCのバイオディーゼル燃料(BDF)精製・豊頃工場を視察しました。

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▼地域の共同で、京都市の10倍規模の廃食油を回収

BDFとは、使用済み天ぷら油などの廃食油や菜種油などの植物性油脂を原料として製造されるディーゼルエンジン用の代替燃料です(参考リンク:NPO法人「十勝エネルギーネットワーク」)。

はじめに為広社長に説明をしていただきました。

BDFの取り組みは、環境配慮とともに資源循環や産業連鎖による経済が循環する地域づくりをめざしてはじめられ、地域の共同でNPO法人『十勝エネルギーネットワーク』も立ち上げて取り組んでいるそうです。豊頃工場で精製するBDFの原料となる廃食油は、札幌生協の配送サービス「トドック」をはじめ、十勝バスの路線バス全車両に回収ボックスをつける、など地域にあった回収方法を確立したことが重要だったと話します。同様にBDFの利用に取り組んでいる京都市の年間回収量約20万リットルに対し、8万世帯(京都市の約20分の1ほど)の帯広市は実に10万リットルもの廃食油を回収しています。

こうして回収した廃食油をBDFに精製し、“B5”(BDF5%利用で軽油と同様に使用できる燃料)にして幅広く使えるようにしています。前述の「トドック」の宅配車や十勝バスの路線バスなどはこの“B5”を使用しています。

この取り組みをいかした環境教育も広がり、現在では十勝管内の全小学校で行われており、今では高校生が「自家用車ではなく環境に優しい路線バスで通学したい」というほど環境意識が高まってきたとのことです。

▼地域経済活性化への熱意

石油業界のしがらみの中で再生可能エネルギーを普及することの困難さ、-20度以下になる北海道の寒さに耐えられる品質の確保の苦労など、大変な思いも語られました。

その中で十勝地域のなかで循環する経済のしくみをつくりたい、BDFを広めたい、という熱い思いで努力されていることが印象的でした。経営陣は無償で頑張りながら、現在この工場で8人を雇用(豊頃町の人口は6000人)していること、BDFを広げるために工場のシステムづくりのノウハウなども九州や他の業者に無償で広めていることなどを熱く語られていました。

最後に

この視察では、足寄町・帯広市といった行政の方々も、民間企業である(株)エコERCの為広社長も、「地域経済をどう循環させるか」ということを異口同音に語られました。また、それぞれの地域で雇用を生み出し、なんとかしてこのまちを持続させて発展させたいという思い、そのために「自分が動いて突破口を開く」という熱い思いがみなさんの言葉の端々から感じられました。

また、地域経済の循環のためには大企業中心の経済の仕組みから抜け出さないといけない、ということもこの視察で感じました。「大手主導のメガソーラーなど大規模発電施設をつくっても地域の資源だけ活用されて利益は東京に行ってしまい、地元の経済に役立たない」「石油大手などのしがらみや反発の中でBDFを普及するのは大変」と実感のこもったお話がそれぞれありました。

『「即時原発ゼロ」の実現を――日本共産党の提言』では、即時原発ゼロの政治決断を行い、再生可能エネルギーを最大限普及することなどを提唱しています。同提言は、「再生可能エネルギーによる発電は、地域密着型の新産業であり、地域経済への波及効果も大きくなります。エネルギーの『地産地消』、地域や自然環境の実情にあった小型の発電装置の開発、製造、維持・管理などは、中小企業への仕事を増やすことになります。雇用も、原発よりはるかに大きな可能性をもっています。ドイツでは、原発関連の雇用は3万人にたいして、再生可能エネルギー関係の雇用は38万人となっています」として、原発から再生可能エネルギーへの大転換を行ってこそ、日本経済の成長が実現できることを強調しています。

この視察で、数十年先を見通して再生可能エネルギーを活かした地域経済の持続可能な発展を展望している自治体・民間企業の努力に触れることができました。日本共産党川崎市議団は、この視察を活かして、再生可能エネルギーの活用を通して住民と中小企業が主役になる地域経済発展の道を川崎でも切り開いていくために、よりいっそう政策提案、論戦に取り組んでまいります。